臨床のための脳と神経の解剖学

学生から卒後まで、ずっと使える
臨床に直結したテキスト

臨床とのつながりを強く意識し、豊富なイラストを用いて解説した神経解剖学テキスト。冒頭で部位の解説をした上で、大部分を「運動系」、「感覚系」、「大脳皮質と辺縁系」、「内臓系」などの機能により章分けする構成になっており、臨床で出会う症候とその病変部位に関する理解が深められる。さらにコラム『臨床との関連』を随所に挿入。“臨床に出てからも使える教科書”として学生から臨床家まで幅広く有用。

¥7,480 税込
原著タイトル
Basic Clinical Neuroscience, 3rd edition
監訳,訳: 村上 徹 群馬大学大学院医学系研究科機能形態学准教授 櫻井 武 京都大学大学院医学研究科創薬医学講座特定教授 訳:松崎利行 群馬大学大学院医学系研究科生体構造学教授
ISBN
978-4-8157-0161-1
判型/ページ数/図・写真
B5 頁456 図288
刊行年月
2019/4/19
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Part I 中枢神経系の構成・細胞・局所解剖
Part II 運動系
Part III 感覚系
Part IV 大脳皮質と辺縁系
Part V 臓性系
Part VI 網様体と脳神経
Part VII 血管系と脳室系
Part VIII 発生,老化,および損傷へのニューロンの反応
Part IX 病変部位はどこか?
付録

日本語版監訳者・訳者の序

あなたが医学生なら,神経解剖学になにか苦手意識を持っていないだろうか? あるいはすでに臨床にたずさわっているなら,自分の診断力の素地に心もとなさを感じてはいないだろうか? もしそうなら,あなたにこの本を紹介できるのはわれわれ監訳者・訳者のよろこびだ。
 神経科学は巨大で今も進化を続けている。脳の回路全体が詳しく地図化されるようになったし,それを生体のまま画像化する技術もある。脳脊髄の再生医療も臨床応用がはじまっている。神経科学の詳細で遠大なことは限りがない。だから困る。神経解剖学に限っても初学者には見晴らしが悪い。青息吐息それをやりすごせても,臨床を学ぶころになれば自分の土台の揺らいでいるのが気がかりだ。本書は,そういう医学生に神経解剖学を学ぶ動機を示してくれる。臨床家なら,診療の基盤を補強するのに役立つ。
 各章のサブタイトルをみてほしい。例えば「第6章 錐体路系」なら「痙性麻痺」。加えてそのすぐ下に,代表的な症例が呈示される。こうしてまず,読者のタックルするべき学習目標が定まる。
 読み進めば,症状から原因や部位を診断するまでの根拠がわかってくる。本書の中心には神経疾患や外傷の病態があり,それを理論づける神経系の仕組みや働きが簡潔明瞭に解説されている。学術的な詳しい話は,診療の役に立たなければ省かれる。付図も複雑すぎず,絡み合った回路を指で追うこともない。ところどころのコラムが,読者の学びを臨床に結びとどめてくれる。読み終われば,章の冒頭の症例を自分で説明できるようになるだろう。章末問題でポイントを再確認すれば自信になる。
 本書の原著は2008年に初版が出版され,現在は第3版。原著者は3名で,ベテランの解剖学者と脳神経外科医からなる。ポール・A・ヤング氏はセントルイス大学医学部の解剖学研究教育センター名誉教授・名誉センター長。ポール・H・ヤング氏は脳神経外科臨床教授として同センターに貢献した。ダニエル・L・トルバート氏は同センター名誉教授。
 翻訳にあたって,原著のわかりやすい英語の記述を日本語でも再現できるよう苦心した。記載内容に今の知見と合わないところがあれば修正または注記した。統計など日本国内の状況と差違のある場合には,日本のものを適宜付け加えた。専門用語については『神経学用語集 改訂第3版』(日本神経学会用語委員会編,文光堂,2008)と『図解解剖学事典 第3版』(山田英智監訳,医学書院,2013)を参照し,適宜「ICD10対応標準病名マスター」(医療情報システム開発センター)や実際の臨床での用例を参考にした。外国人名については,専門用語として定着しているものを除き,原音を尊重したカタカナ書きとした。本文を櫻井と松﨑,図・章末問題・用語などを村上,全体の校閲を村上と櫻井が分担した。なお,及ばなかった点は多々あると思う。お知らせいただければ幸甚だ。
 最後に,本書の読者がもし神経解剖学,神経科学,神経学をもっと学びたくなったとしたら,われわれの望外のしあわせである。読者の探求を待つリソースはたくさんある。

2019年吉日
村上 徹
監訳者・訳者を代表して



第3版への序

 Basic Clinical Neuroscience の第3 版は,初版の「神経学的症状の解剖学的な基礎知識を提供し」「どこに病変があるのか?」という疑問に答えられるようにするという,われわれがこの本の根本に置いた目的を継承している。第2版では「神経解剖学的な構造を臨床に有用な機能と結びつける」ことを強調するのに加えて,神経系の正常な機能と異常な活動の病態を理解するのに重要な,基礎的な生理学的知識を加えた。第3版では,こういった内容を簡潔にわかりやすく記載することによって,医学部や医療系の学生に広く理解してもらうことを目指している。
 この版では,学生の臨床神経科学の学習を助けるために大幅な改訂を行った。まず第1に,図をカラーにすることによって,神経系の構造とつながりを見やすくした。第2に,脳の構造と機能についての最新の内容を盛りこむようにテキストを書き直した。さらに,「臨床との関連」コラムを追加し,臨床における脳構造と機能の関連の重要性を学生に理解してもらえるようにした。最後に,USMLE(米国医師国家試験)形式の問題を各章の最後に加えた。
 この本を執筆するにあたって,著者たちはパトリシア・アンダーソン女史と特にクリス・シャーマン女史に感謝したい。ラリー・クリフォード氏には初版からイラストを提供していただいているが,この版ではさらに色を加え,重要な構造物やつながりをわかりやすくしていただいた。著者たちはウォルターズ・クルワー社のスタッフ,特にクリスタル・テイラーとローレン・ピーカリッチ,ジェニファー・クレメントの,この本に対する熱意とサポートに感謝したい。ウォルターズ・クルワー社のすべてのスタッフが温かく,そして忍耐強くサポートしてくれたおかげで,われわれはここに第3版を送り届けることができた。



初版への序

 この本の主要な目的は,神経学的な異常について解剖学的な基礎知識を与えることである。臨床神経解剖の基礎知識は,医学部の学生が,外傷や神経系の疾患をもつ患者の診察における最初の質問である「病変はどこか?」に答えることができるようにする。また,臨床神経解剖の基礎知識は,看護師や理学療法士,作業療法士といった医療従事者をめざす学生が,そういった患者の神経学的異常の解剖学的な基礎を理解できるようにする。これがこの本の目的なので,臨床的に重要な構造の解剖学的関係や機能に重点を置いている。脳や脊髄の解剖学的な知識はできるだけ単純化するようにしてある。
 この本は詳細な参考書でも神経解剖学の教科書でもない。たいていの神経解剖学の教科書は,ある特定のシステムやメカニズムを理解させることを目的として解剖学的構造についてたくさんの情報が書かれているが,こういった構造が障害されて徴候や症状が出るわけではない。この本ではそういった知識は最低限にしてある。
 この臨床神経解剖の基礎知識の本は,(1)基本構造,(2)機能システム,(3)付属した構造の3つのパートからなる。基本構造のパートは,神経系の構築,組織学的特徴,支持構造,脳と脊髄の解剖学的区分,臨床的に重要な脳と脊髄の機能レベルの紹介からなる。ここでは臨床的に必要な最小限の構造の区分とレベルについてのみ扱っている。
 第2のパートは機能システムとその臨床的に重要な事項をまとめてある。この部分はまず,運動系と感覚系を最初に扱っているが,その理由はこれらが非常に重要で,脳と脊髄のすべての領域がかかわってくるためである。このパートの残りの部分は特殊感覚,高次精神機能,そして行動と内臓系にかかわる経路が扱われている。
 第3のパートでは血管系と脳室と脳脊髄液系がまとめられている。
 3次元的な解剖学的関係を視覚的にイメージできるということは,障害部位を同定し,神経系の疾患の解剖学的理解に非常に重要である。臨床的に重要な構造物についての3次元的なイメージをつけられるように,なるべくイラストを入れるようにした。また,それに加えて,機能系のダイアグラムや脳や脊髄の特定の部分の髄鞘染色の模式図も掲載している。これは,神経系の疾患や症状の解剖学的基礎の理解に役立つような解剖学的位置関係を示すためである。臨床との関連についてはこの本の全体を通して強調してあり,神経学的な異常についてもいくつかイラストが入れてある。
 練習問題が各章末に入れてあるが,すべての章で臨床像と障害部位の同定に絞っている。練習問題の答えは巻末の付録にある。その他付録には,脳神経の成分とその臨床像との関連,用語解説,参考図書,ミエリン染色した切片のアトラスが含まれている。
 著者たちはラリー・クリフォード氏がこの本のかけがえのない要素であるイラストを作ってくれたことに感謝する。また,スーザン・クイン女史にはこの本の執筆に多大な力を貸していただき,また,スーザン・マクレイン女史にはコンピュータで章立てや表を作っていただいた。最後に,出版社のウィリアムズ・アンド・ウィルキンス社とその編集部および販売部のスタッフが,この本の出版について興味を持ち,忍耐強いサポートをしてくれたことに感謝する。

2020-01-07

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

77頁 問6-10
(誤)d. 伸展性足底反応
(正)d. 伸展性足底反応

44頁 図4.7
(誤)状回
(正)状回

45頁 図4.8
(誤)状回
(正)状回

212頁 図16.7
(誤)状回
(正)状回

221頁 図17.1
(誤)状回
(正)状回

222頁 図17.3
(誤)状回
(正)状回

426頁 図D.18
(誤)歯状核
(正)帯状回

427頁 図D.19
(誤)状回
(正)状回

2019-05-23

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

75頁 左段 下から8行目
(誤)交叉性片麻痺 crossed hemiplegia
(正)交代性片麻痺 alternating hemiplegia

75頁 右段 コラム「臨床との関連」内 6箇所
(誤)交叉性
(正)交代性

78頁 右段 問題6-14内 3箇所
(誤)交叉性
(正)交代性

144頁 右段 コラム「臨床との関連」1行目
(誤)交叉性
(正)交代性

150頁 右段 6行目,11行目,18行目
(誤)交叉性
(正)交代性

337頁 図27.5G
(誤)交叉性片麻痺
(正)交代性片麻痺

363頁 2行目
(誤)中交叉性片麻痺
(正)中交代性片麻痺

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