特別座談会 医学生・研修医にとっての『ハリソン内科学』とは?

『ハリソン』はもっと後で使うもの?

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小林最初に,皆さんがいま学校でどのような勉強をしているかについて聞かせてください。

僕は6 年生なので現在卒業試験期間中で,週に大体二つ試験があります。それが2ヶ月続きますが,その試験対策を中心に勉強しています。

藤川私も6 年生ですが,日本大学では普通の授業と試験があって,それに加えて夏と冬に2 回卒業試験があります。授業の内容が国家試験対策という形なので,ちょっと偏りがあると感じています。

吉田日本医科大学の4年生にはコース試験というのがあります。循環器,呼吸器などと分かれていて,週1回試験があるという形です。今まで僕があまり『ハリソン』を使ってこなかった理由にもなるのですが,毎回月曜日に試験があるので,1週間のうちにその科のページを全部読むとなると,ちょっと厳しいかなと思って,なかなか手を出せないでいます。

鈴木いま3年生ですが,これから衛生学,法医学の実習と,引き続き講義もあって,3年生の3学期からはコース試験に入っていきます。現状では『ハリソン』はもっと後で使うものなのかなと思っていたし,図書館でも素通りしていました。ただ,薬理の講義の終わりに,討論形式の small group learning (以下SGL) をやったことがありました。SGLルームには,『ハリソン』がいろいろな本と一緒に置いてあって, すごい存在感というか威圧感みたいなものがあって(笑),「これ,みんなで読んでみようか」と言って開きました。そのときに症状から順に言い当てていくという,たぶん臨床の現場でも患者さんに症状を聞いて,そこから辿ってメカニズムみたいなものを考えながら疾患を言い当てていくと思うので,患者さんを診るってこういう感じなのかなと読みながら思いました。

小林僕はいま研修医1 年目で,最初3ヶ月は外科を回って,次の3ヶ月は救急,ICU,集中治療室で,現在は内科にいます。最初の3ヶ月はそもそも薬がわからないんです。薬を処方するときは全部商品名なので,学生のときに習ったスタチンなどとうまく結びつかないんです。それにたとえばヘパロックとか,病棟で聞いたことのない専門用語が出てきたら,「それ何ですか」というところから始まるので,まず研修医のマニュアル的なものを読まないと病棟では何もまわせない。研修医はまず動けっていう感じです。救急や集中治療部のときは,専用の本が沢山必要なので,『ICU ブック』などにも大分お世話になったんですけど...。現在は循環器を回っています。『ハリソン』は循環器の分だけでも300 ページくらい。結構分厚いのですが,せめてこの2ヶ月の間にはそれくらい読み終わりたいと思って,病棟に置いています。学生時代の勉強方法を振り返ってみると,僕はまずは簡便な参考書である程度勉強して,試験前はテスト対策問題をやったりしました。同時に自分の中でちょっとじれったい思いがありました。もっとしっかり勉強したいなと。それでちょこちょこ興味がある部分について,『ハリソン』の「ハ」の字ぐらいは読んだんじゃないかと思います。

『ハリソン』は最初から最後まで通読すべきか?

小林・林

吉田先輩方に聞きたいのですが,『ハリソン』を実際にはいつぐらいにどういうきっかけで読み始めたのですか?

4 年生で臨床が始まったときに,自分の知りたいことが他の教科書にはなくて,『ハリソン』には載っているのだろうかと思って調べたのがきっかけです。そうしたらさりげなくしかもしっかりとした記述で載っていて,それからは時間があるときとか,本当に知りたい病気については必ず引くようにしています。『ハリソン』は大事な疾患とそうでもない疾患で記述の量が全然違います。重要な疾患にはたくさんのページを割いて,そうでもない疾患は5 行ぐらいで終わったりしていて,そういう点が他の参考書と違うと感じるところです。本当に何が世界で必要とされているか,どういう患者さんが多くいるかなどが伝わってくる本だなと感じます。

小林僕の場合,実際に買ったのは4 年生のときです。それまでも図書館でパラパラ開いたことはありましたが,よく読むようになったのは5 年生の病院実習が始まったときです。そこで言われたこと,習ったこと,患者さんの病気などを『ハリソン』を使って勉強しました。

吉田自分の調べたいところを中心に?

小林そうですね。最初から最後まで通読するのは結構大変だと思う。多くの人は,冒頭の総論と症候学のパートを読んで,あとは気になるところを読む,という使い方をしていると思います。

藤川私は学年でいえば3 年生で,基礎が終わって臨床が始まったときに『ハリソン』を買いました。そのきっかけは推薦図書に上げられたうちの一冊だったからです。学校の図書館に内科学基礎の棚がありますが,その半分以上を『ハリソン』が占めていたので(笑),必然的に興味が湧きました。SGL,症例検討のときに主に使って,それで読む習慣がついたのだと思います。

2011年1月10日 医学界新聞 レジデント号掲載 PDF版ダウンロード(4.2MB)