ハリソン物語

第4版 1962年・M.M. Wintrobe

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第4 版から第6 版までの物語は,もっと簡潔に語ることができる。この頃には,毎年春にアトランティックシティーで開催されるAssociation of American Physicians と「若手の会」の会合の際に編者間でさまざまな問題について連絡をとり合い,そのほかに,快適な行楽地で「長い打ち合わせ」を行うという慣例が確立していた。連絡の際には,「ハリソン組」の各編者とBill Keller に1部ずつコピーが送られ,全員が情報を受け取り,返事をする機会が与えられるようになっていた。

次の「長い打ち合わせ」は,1961 年4 月に,シチリアの楽園として知られるタオルミナで開かれた。この打ち合わせの思い出は,編集上の成果においても楽しさにおいても参加者の心に永く残ることになる。Harrison,Resnik,Thorn,Adams,Bennett,Wintrobeは,おのおのの妻と一緒にティメオホテルに宿泊した。19 世紀に建てられたこのホテルには,おいしい食事と,とびきりのテラスがある。ホテルはメッシーナ海峡の南に位置していて,その向こうにはイタリア本土が見えた。ホテルのすぐ隣には古代ギリシャ時代の劇場の遺跡もあった。

編者はそれぞれ資料を持参し,午前中に打ち合わせをした。場所は,眼下に美しい庭園と海が広がるテラスだった。例によってBennett が的を得た論評をし,Resnik が辛らつだが有益な意見を述べ,議論は白熱した。けれども常に,遠くの光景を眺めながら幾分超然とした様子で議論を聞き流している編者が1 人か2 人いて,適当なタイミングを見計らって議論に加わり,問題を丸くおさめてしまった。