ハリソン物語

第5版 1966年・M.M. Wintrobe

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第5 版の「長い打ち合わせ」は,1964 年8 月に,イタリアのべラッジオにあるセルベローニ荘で行われた。6 人の編者とその妻たちは,コモ湖畔のこのヴィラで,よく働き,よく遊んだ。ロックフェラー財団が保有するヴィラの部屋数は20 あまりで,作家や教育者が,日常の雑事を忘れて美しい環境の中で仕事をできるように配慮されていた。われわれのホストになったのはロックフェラー財団のMarshall 一家で,食事は非常によかった。

われわれのホストは,ゲストがヴィラを生産的に利用しながら,楽しい時間も過ごせるようにと心をくだいてくれていた。編集チームが,楽しい環境の中で,おいしいものを食べ,ワインをふんだんに飲みながら,これだけの仕事ができたのはひとえに彼らのおかげだった。われわれの議論,原稿の批評,討論はしばしば白熱し,食事とカクテルの時間が厳しく決められていなかったら,いつ果てるともなく続いていたにちがいないからである。

長い1 日の仕事の後には,手入れが行き届いた美しい庭の散策や,ボッチェというイタリア式のボウリング遊びが,われわれをリラックスさせてくれた。Adams とThorn はテニスコートで汗を流し,ときには,湖の中の島にあるローマ時代の遺跡を見物したり,モーターボートで湖を一周したりもした。

このときの打ち合わせで,「疾患の主要な症候」の箇所を書き直し,一部の章を,よりふさわしい位置に移動させることなどが決まった。また,疾患についての個別的な記述に入る前に導入の章を入れることで,主要な症候についての議論と,各種の病態についての議論とがスムーズにつながるようにした。こうして,医師による診断のプロセス,すなわち,まずは症状や徴候があり,これらが示唆する症候群を同定し,最終的に特定の症候群の中で疾患を鑑別診断するという過程を,これまでよりも忠実にたどることが可能になった。さらに,パート1 の「医師と患者」をふたたび拡張して,医学の人間的な面をいっそう強調することも決まった。