カンデル神経科学

今すぐ注文

新着情報

取材レポート「輪読会のすすめ」慶應SFC青山研 その2

2014年11月20日 更新

取材レポート「カンデル神経科学」輪読会のすすめ2

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)にある環境情報学部。その学部学生さんたちが主体となって開催している輪読会をレポートします。今回は、輪読会後に聞いた学生さんたちのナマの声を中心に紹介しましょう。

レポーター:みなさん、こんにちは。あれっ、机を輪にしないのですか? 輪になって読むから輪読会なのでは......?
学生一同:(笑)順番に読むから輪読会なんです。それに、私たちは、コンピュータを使ったプレゼン形式で輪読会をやるので、机は輪にしないほうがいいんです。パワーポイントの画像をプロジェクターで映し出すので。
レポーター:輪読会のやり方もいろいろ工夫されているのですねぇ。
上野太郎さん:ここは環境情報学部なので、学部の1年生でもコンピュータの扱いには比較的慣れているんですよ。

輪読会開始

輪読会風景

この日の参加者は、上野太郎さん(2年)、藤井優人里さん(2年)、田川慶樹さん(2年、今回飛び入り参加)、上野良揮さん(3年)、鈴木啓太さん(3年)、松崎裕太さん(3年)、江部正周さん(4年)。発表者は、上野太郎さん(2章 神経細胞、神経回路と行動)、藤井さん(60章 言語)、江部さん(65章 学習と記憶)でした。「アストロサイトがあると何かいいことあるの?」「髄鞘ってすごいんだよ。実は髄鞘の隠れファンなんだ」「言語獲得に適した臨界期というものが、もし存在しなかったらどうなるのだろう」「HMさんの脳を解剖したら、記憶に関して、教科書の記載と異なる事実が発見されたというニュースがありましよ」といった活発な質問やコメントが発せられました。

輪読会終了
楽しく刺激的な輪読会

レポーター:お疲れさまでした。みなさん活発に発言されて、発表者もリラックスされていて、楽しい雰囲気の輪読会でしたね。発表の仕方やパワーポイントの使い方も各自自由に工夫され、要点をまとめたり、興味のある図や表を映し出したりと。ところで、ご自分が発表する章を、どのように決めているのですか?
江部さん:各自が興味のある章を自由に選んでいます。発表の順番も、章の順番とは特に関係ありません。好きな章をとりあげて、発表してもらっています。
レポーター:なるほど。学生さんたちが、楽しみながら行っている輪読会なのですね。実際、笑い声も絶えませんでした。
一同:みんなで勉強できて、本当に楽しいですね。
江部さん:興味を共有できる仲間がいるということは、モチベーションして、とても大きいです。それに、輪読会は、楽しいばかりでなく、すごく刺激になります。後輩がおもしろい研究を見つけてきて質問してきたり、それを私が知らなかったりして。
上野太郎さん:私たちは、先輩になんでも聞けるので、すごく助かっています。
藤井さん:本の内容だけでなく、勉強の仕方だとか、いろいろなことまで聞けちゃいます。
上野太郎さん:カンデルを媒体に、人と交流できているのだなあと、つくづく実感できます。

脳に興味をもったきっかけは...

 

インタビュー風景

レポーター:みなさんの興味は、脳科学?
一同:はい。
上野太郎さん:私は、ロボットに興味があり、ロボットは心を持つのかなという問題がきっかけで脳について知りたいと思いました。
藤井さん:脳科学のなかでも、特に言語に興味があります。
田川さん:最近祖母が認知症になってしまったため、脳はどういう働きをしているかに興味を持ちました。
松崎さん:心に興味があって、心がどのようにつまずいたりするのかを知りたいと思っていたので、脳に興味を持ちました。
鈴木さん:最初は、コンピュータで人工知能アルゴリズムなどを作る研究室にいました。しかし、デバイスを作ることよりも、何かを調べて結果を出すというおもしろさに気がついて、青山研究室に移ったのです。青山研究室では、MEG(脳磁図。脳の電気活動によって生じる磁場の画像)などを使った脳機能の計測ができます。
上野良揮さん:私は、最初は心理学系の研究室に入りました。でも、実験で検証することのほうに興味があり、しばらくしてから脳科学の研究室に移りました。
江部さん:もともとは教育関係で起業しようと思っていました。でも、もう少し人間について知っておいたほうがよいと思い、心理学や脳科学の勉強を始めたのです。今は、実験を組み立て、計測して解析することがどんどんおもしろくなってきており、研究をしたいと思っています。

 

カンデルで基礎力をつけたい

レポーター:輪読会のメンバーは、脳のメカニズムを解析する研究をしている青山研究室に所属している人が多いのですね。慶應SFCでは、1年生から研究室に所属して、自分にあった分野を探すとお聞きしていますが。
上野良揮さん:各研究室では、週に1回、学部生から院生までが参加する研究会が開かれています。
藤井さん:青山研究室の研究会は実験を行うので、とてもおもしろいのです。ですが、やればやるほど、基礎的な知識を身につけることの大切さが実感されてきました。そのようなときに、輪読会が発足したと知り、すぐに参加したのです。
上野太郎さん:基本を身につけるには、教科書を読むのが非常に大切なことだと思い、輪読会を始めました。
レポーター:上野さんが『カンデル神経科学』を知ったきっかけは?
上野太郎さん:インターネットです。脳科学のテキストは『カンデル神経科学』が一番といわれていることを知りました。先輩方も、カンデルがいいよとすすめてくれました。
レポーター:うれしいですね。実際読んでみて、どうですか?
上野太郎さん:網羅的で、丁寧に書かれているところがすごくいい。こんなに詳しく書いてある本は他にないです。
江部さん:論理的な飛躍がないところが好きです。わかりやすいし、どのような実験の結果、何が発見されたかがよくわかります。
鈴木さん:何が明らかで何が明らかでないか、その境界を知りたいと思っていますが、それを知るのに適していると思います。そういうことがわかれば、研究で何をテーマにしようか考えるときなどに役立つと思うのです。
レポーター:ところで、脳科学の基本を教えてくれる授業はないのですか?
江部さん:青山先生がおっしゃっていたのですが、各学生のこれまでに学習してきた程度がバラバラなので、必要な知識といっても各自で異なり、一律の内容で授業をするのは難しいということでした。

日本語で読むよさ

レポーター:『カンデル神経科学』を英語で読むメリット、日本語で読むメリット、それぞれあると思うのですが、日本語で読む良さについてどうお考えですか?
上野太郎さん:初めて勉強する人にとって、日本語で読めるのはとてもありがたいです。自習ができますし。
松崎さん:私は、すでに一度英語でも読んだのですが、理解が足りないと思ったところなどを日本語で補えると感じています。後輩にも教えやすいです。
藤井さん:私は母語が英語なのですが、神経科学を自習する際、日本語で読むほうが楽です。これまで神経科学を学んだことはないので、専門用語が出てくると、(実際いっぱい出てくるのですが)、英語では意味を推測できないことが多いのですが、漢字だとなんとなく意味が予想できる。それでとっても楽なんです。
レポーター:逆に困るところは?
藤井さん:えーと、本が重たいところ。でも、これは英語でもいっしょですね(笑)。
レポーター:輪読会に参加するのに、本の購入は必要ですか?
上野太郎さん:図書館にも数冊置いてありますから、それを使っても大丈夫です。ただ、本当に読み込もうとすると、どうしても自分の本がないとだめですね。そう感じています。

  • 1
脳科学の頂点 カンデル神経科学 2014年4月23日発売 今すぐ注文する
 トップへ戻る
ページトップへ