輸液管理は,麻酔科医が担う重要な役割の一つであるが,近年,その考え方は大きく変化している。本書は,輸液の基本から,新しい輸液管理方法にもとづいた周術期の輸液管理を,症例ごとに提示しており,臨床現場ですぐに役立つ。輸液の投与量のみを羅列したマニュアルとは一線を画し、患者の所見、検査値から何を読み、どのように判断し、輸液の種類と投与量を決定するのかという思考過程を呈示した。LiSAに掲載された特集をベースにしつつすべて書き下ろし、テーマも追加し再構成。症例を通して考え方を学ぶ実戦書として麻酔科医必携の書。
I. 総論
1. 水の行方:輸液の適正化を図るために知っておくべきこと
2. 輸液管理とアウトカム:目標指向型輸液管理と輸液反応性の指標について
3. 輸液製剤の選択:特徴をよく理解して輸液管理を行おう
コラム1. 術中輸液の経済:輸液を行う時にはその費用も考慮
II. 症例検討
1. 結腸癌手術:腹腔鏡下手術ならより制限的に,リスクを考慮したモニタ選択を
2. 腹部大動脈瘤手術:手術の流れをよく理解して,輸液・輸血を使いこなそう
3. 脳外科手術:血液脳関門,脳浮腫と輸液製剤の選択
4. 肺悪性腫瘍切除術:過剰な輸液は控え,出血は量に応じて対処
5. 肝硬変合併患者の肝切除術:肝硬変の病態,肝切除術特有の管理に配慮しつつ適切な循環血液量を保つ!
6. 透析患者の心臓手術(オフポンプ冠動脈バイパス術):心不全に注意しながらも,輸液により循環血液量の維持に努める!
コラム2. 心不全患者の非心臓手術:病態に応じた厳重な輸液管理を
7. 腎移植手術:輸液を中心としたレシピエントの周術期管理について
8. イレウス緊急手術:膠質液の効果を見極める
9. 熱傷患者:病態変化を見極め,二手三手先を見据えた対応を
10. 敗血症:敗血症性ショックの輸液管理をどうするか
11. 帝王切開:脊髄くも膜下麻酔後低血圧予防と分娩後出血対応
コラム3. 妊娠高血圧症候群の帝王切開:多様な病態に応じた輸液戦略を
12. 小児:「小児は小さな大人ではない」は輸液管理にも当てはまる
コラム4. 新生児:新生児の病態生理からみた輸液管理
13. 高齢者:加齢による変化は輸液管理にどのように影響するか
コラム5. 熱中症:冷却・脱水の補正が基本,鑑別診断で初期対応を遅らせるな