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慈恵医大(神経科学研究部)輪読会レポート第1弾

2014年12月16日 更新

11月のある金曜日の朝、木製の大テーブルにラボの面々が集まって、輪読会が始まりました。ここは、慈恵医大の加藤総夫研究室(神経科学研究部)。英語の本の輪読会だと、「翻訳の勉強になりがち」。でも、日本語で読むカンデルは、サイエンスの議論がしっかりできると大好評。読むスピードも速いから、分厚いカンデルを全章読み、神経科学を俯瞰することを目指すという皆さんのお話しです。

インタビュー風景

加藤研では、扁桃体の働きを中心に、痛みや情動のメカニズムと治療法、神経ネットワークの可塑性、グリアとニューロンの関係などを研究しています。4月からは、「痛み脳科学センター」*1の拠点としても稼働しました。

さて輪読会では、大学院生さんが持ち回りで発表します。今日は、整形外科医・卒後9年の篠原恵さんが担当。加藤研の大学院生は、専門・経歴が多様です。薬学部卒の宮沢裕太さん、理学療法士歴数年の杉村弥恵さん、麻酔科医・卒後約20年の杉本真理子さんと同じく麻酔科医・卒後7年の伊藤真理子さん、小児科医・卒後15年の辻恵さんといった具合。輪読会のまとめ役をしているのは、ポスドクの永瀬将志さんです。「毎回、大学院生が1つの章を担当し、その内容を30〜45分程度にまとめて発表します」。発表内容をまとめたレジメも配られます。

篠原さんが担当したのは、第50章「てんかん発作とてんかん」。「臨床から来た私たちにとって、脳科学はかなりハードルが高い学問。だから、日本語で読めるのはありがたいです」。永瀬さんは、「基礎系の私たちにとっても、日本語だと、自分の専門分野以外の章でも気軽に読めて助かります。神経科学のカバーする領域はかなり広いので」といいます。これはまさに加藤教授の狙うところなのでしょう。「『カンデル神経科学』を日本語で読む。日本語だから、全章を読み通すことができるので、脳科学を俯瞰できるようにしたい。将来、基礎研究者になるのであれ、臨床系の仕事につくのであれ、これは絶対に役に立つことです」(加藤教授)。

インタビュー風景

「日本語の輪読会のよさは、サイエンスの問題に集中できること」と、渡部文子准教授も言います。英語の本の輪読会だと、英文解釈に終始し、翻訳の勉強会になってしまうことも多々あるとのこと。内容を議論する中で、「英語がわからないから...というエクスキューズも効かなくなりますしね」とイタズラっぽく笑う渡部准教授。

輪読会のテーブルには、加藤教授、渡部准教授、高橋助教も加わって、質問やコメントが随時飛んできます。「過分極ということは、T型Caチャネルはどうなるのでしたっけ?」といった基本的な事柄から、「このような薬は、麻酔科領域で使われますか?」などの質問もあり、発表者以外もうかうかはしていられません。また、さまざまな専門領域の人がいるので、輪読会の機会を利用して、大学院生どうしの情報交換の場にもなっています。「脳波って、実際にはどのように測るの?」「てんかんの非けいれん性の発作って、どんなふうになる?」など。そして、神経科学の歴史を踏まえた加藤教授のうんちくも、「とてもタメになる」と一同。「20世紀半ば、脳外科をリードしたのがカナダ。その先駆的研究者が、脳外科医のペンフィールド。彼は有名な脳の地図を作ったのだけど、あれは実はてんかん患者のデータを元にしたものなのですよ。最近の研究で、健康人とほとんど一致していることがわかったんですよ」などなど。余談のなかに、サイエンスのヒントがたくさん隠れているのですね。そして、こうした活発な議論の輪の中心には、『カンデル神経科学』が存在するのでした。

インタビュー風景

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