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 徹底分析シリーズ

緊急輸血:予期しない,あるいは予想を超えた出血

治にいて乱を忘れず緊急輸血のストラテジーを構築せよ

何でもない手術のはずが骨盤底に予想外の癒着があって,と手こずっているうちに静脈叢が裂けて大出血。みるみる血圧が下がる。「ノルアド出して!輸血まだ?!」「今オーダー出しました。でもセンターからくるのに 20 分,クロスに 15 分かかるそうです」エッ!「あるだけノークロスで降ろして!」「……いいんですか先生,責任取りますよね?」……緊急輸血を経験しない麻酔科医はいない。でもその場にあって慌てないためには,慌てたとしても乗り切るには,普段から対処を考えておくしかない。事前の想定と院内体制なしには異型適合血(O 型血)は使えない。危機管理の要諦は “悲観的に準備し,楽観的に対応せよ” とされる。

輸血を取り巻く状況も変わっている。献血量はぎりぎり横ばい,血液センターも地域集約化が進められていて,近くのセンターが知らないうちになくなったりしている。もう「MAP 血」とは言わないし,製剤単位量もいろいろある。院内在庫血はどこも常備量を減らしている。聞かれてあなたは院内常備量を答えられるだろうか。

戦略があって戦術が立てられる。まず緊急輸血のストラテジーを構築せよ。

須崎 紳一郎