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 症例検討

肺機能低下患者の麻酔

    重要臓器の機能低下,つまり予備力の低下が見られる症例で,麻酔計画をたてることは難しい。循環系の基礎疾患については, ACC / AHA が詳細なガイドライン*1を提示しているが,呼吸器系については,いまだに周術期管理のベストな方法は示されていない。特に,慢性肺疾患では術前より日常生活の制限されていることが多く,麻酔・手術を契機にさらに ADL の低下する可能性がある。肺機能低下患者の QOLを維持する意味でも,退院後の日常生活までを視野に入れた麻酔計画が必要である。
    今回の症例検討では,慢性肺疾患をテーマに,慢性肺気腫と慢性気管支炎に加え拘束性障害として側彎症症例における麻酔計画を特集した。限られた呼吸機能をどのように維持するのか,麻酔薬の残存効果や全身麻酔による呼吸機能のさらなる低下をどのように防ぐのかがテーマになる。こうした麻酔計画は,呼吸機能の低下している症例のみならず,他の臓器障害をもつ症例においても,呼吸器系のリスクを軽減するために有用であるものと考える。

*1 ACC/AHA guideline:Eagle KA, Berger PB, Calkins H, et al., ACC/AHA Guideline Update for Perioperative Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery--Executive Summary: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Committee to Update the 1996 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery) Anesth Analg 2002 94: 1052-64.

落合 亮一