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 症例検討

フルストマックの麻酔

   「夢にまでみるfull stomachのおそろしさ」。東京逓信病院麻酔科部長の芦澤直文先生の著書『麻酔のコツとポイント』(克誠堂出版)の麻酔いろは歌に掲載されている一文である。私自身,今まで夢にまでみた経験はないが,先日6か月の乳児の頭部外傷の麻酔導入時,大量のミルクを嘔吐した症例に遭遇し,実体験としてあらためてその恐ろしさを認識した。
   今回の症例検討「フルストマックの麻酔」では,どの施設でも日常遭遇するようなものから,フルストマック+合併症ありの4題を提示してみた。われわれ麻酔科医は,経験がなくても知識として「full stomachのおそろしさ」を知っており,そのような症例に出くわしたとき,いかに未然に合併症を防ぐかを考え,麻酔計画を立てていく。麻酔計画は当然,その麻酔科医の知識,経験,技量によってさまざまであるのは当然であるが,得意とする選択肢をいろいろもつことで,どんな症例に出くわしても慌てず,落ち着いた周術期管理ができると考える。
   今回の執筆者らの麻酔計画が,読者の麻酔計画のオプションの一つとしてお役に立てば幸いである。

東邦大学医学部 麻酔科学第一講座 佐々木 順司