バックナンバー
症例検討
前立腺手術の麻酔
高齢になるにつれ,前立腺肥大や前立腺がんの頻度は増加する。天皇陛下が前立腺全摘出術を受けられたのは記憶に新しい。その後,順調な回復振りを見せられているのは誠に喜ばしいことである。そのせいもあろうか,最近は前立腺特異抗原(PSA)測定が盛んに行われ,前立腺手術も増加してきている印象がある。
前立腺手術はさまざまな種類があり,麻酔上の注意点も異なる。前立腺生検の場合には短時間手術に適した麻酔管理が要求される。経尿道的前立腺摘出術は,一見侵襲が小さいように見えるが,出血のほか,水中毒,膀胱穿孔などの重大な合併症が起こりうる。恥骨上前立腺切除術では出血が問題となる。術前に尿閉から腎不全となる患者もいる。前立腺手術の対象となる患者の大部分は高齢者であり,高齢者特有の病態に対する対処も必要となる。
そこで今回はさまざまな側面をもつ前立腺手術の麻酔について検討する。
順天堂大学 麻酔科学・ペインクリニック講座 稲田 英一