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 症例検討

肺手術の麻酔

   心疾患患者の非心臓手術に関しては,ガイドラインが提案されている。アメリカ心臓協会(ACC/AHA)が中心となったガイドラインでは,身体所見や病歴を基盤として,検査・治療の進め方,手術・麻酔時のリスクが示されている。ガイドラインとしては,曖昧な表現の部分もあり,またガイドライン発表後の臨床評価が十分に行われていないことが批判の対象となっているが,麻酔科医にとって日常の診療に際してのよりどころになっている。
   一方で,COPDを代表とする慢性肺疾患は虚血性心疾患以上に一般的な疾患であり,虚血性心疾患以上に日常生活に影響の生じることが問題である。しかし,「肺疾患患者の非肺手術のガイドライン」あるいは「肺疾患患者の肺手術ガイドライン」は存在しない。虚血性心疾患ほど生命予後に影響はないということであろうか。
   最近は,胸腔鏡手術が普及し,また自動吻合器に代表される手術機器も大きく進歩した。胸腔鏡手術では肺の脱気と膨張の程度が視野を決めるため,外科医と麻酔科医のコミュニケーションが重要となる。施設ごとに,さまざまな工夫が行われているものと考える。
   本症例検討では,生理学的・薬理学的知識をもとに各施設の“コツ”を読み取っていただけれ幸いである。

落合 亮一