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 徹底分析シリーズ

デクスメデトミジン

   デクスメデトミジンは,強力で選択性の高いα2アドレナリン受容体作動薬であり,術後の集中治療における鎮静薬として承認され日本での使用が可能となった。これまで使用されてきた鎮静薬(ミダゾラム,プロポフォールなど)と全く異なり,鎮静中でも患者の意識レベルが保て,応答が可能であり,かつ鎮痛作用を有し呼吸抑制が全くないという画期的な鎮静薬であり,今後鎮静の質が大きく改善すると期待される。
   しかし,循環に対する作用が強いことから投与量を細かく調節しながら使用する必要があり,安易な使用による不幸な事故を防ぐためにも,厳重な循環管理のもとに使用することが要求される。また,デクスメデトミジンの持つ鎮静の質と鎮痛作用は,術後鎮静以外のいろいろな臨床応用の可能性を示している。
   本特集では,デクスメデトミジンのユニークな作用機序,日本での臨床試験で得られた感触,使用上の注意点について解説し,そして今後の新たな臨床応用の可能性について検討する。デクスメデトミジンの発売により,今後集中治療における鎮静法が大きく変わることが予想される。適切にそして安全に使用するための参考にしていただきたい。

上村 裕一