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 症例検討

産科ショック患者の麻酔

   日本麻酔科学会が認定した麻酔指導病院施設での統計によると,2000年(1~12月)では,麻酔科医が管理した帝王切開は,30136例であった1)。日本の年間出生数が約100万人,帝王切開率が約20%と仮定すると,年間約20万件の帝王切開が行われていると推測できる。麻酔科医が関与する帝王切開は約15%であり,大部分の帝王切開は小・中規模の病院で麻酔科医の関与なしに行われているのであろう。現時点では麻酔科医の関与が少なく,今後はもっと関与すべきだが,麻酔科医側からも産科ショックについて発信する必要がある。
   近年,分娩にまつわる母体死亡は大きく減少してきたが,それでも妊婦はさまざまな要因による生命の危機にさらされている。麻酔科医は多くの場合,帝王切開術に際してこれらの危機に接することが多いが,それ以外にも羊水塞栓や子宮内反症など危機にさらされた母体の管理に麻酔科医の知識と技術が要求される局面も少なくない。本特集では,麻酔科医が知っておくべき産科ショックについて特集する。
   本特集を参考にされて産科ショックを来す病態を理解していただき,日常の産科麻酔を行っていただければ幸いである。

1. 巌康秀,川島康男,瀬尾 憲正,ほか:「麻酔関連偶発症例調査2000」について。 麻酔51: 791-801, 2002

日本医科大学附属第二病院   麻酔科 大島 正行