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 症例検討

輸血合併症,輸血によるトラブル

   輸血製剤は,平成15年度実績として,約560万人から208万リットルの献血を受け,血小板製剤として75万本,血漿製剤として172万本,赤血球・全血製剤として352万本が供給されている。このような血液事業に関しては,安全な血液製剤の安定供給が平成15年度施行の法律(新血液法)に基づいて整備される一方,使用者に対しては,「血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針(厚生労働省)」としてその適正使用が強く求められ,国内自給の原則を目指している。しかしながら,輸血の実態としては,近年における低侵襲手術の拡大や無謀な医療に対する社会的監視の強化,血液製剤関連感染症への認識の高まり,輸血基準の見直し,自己血輸血の促進などに より,以前と比較して安易な同種血輸血が行われることはなくなったが,その使用量は必ずしも減少傾向をみせていない。今後とも,供給から使用に至る一貫したトレース・システムの下,安全にかかわる監視体制aemovigilanceの強化が重要課題であることに変わりはないだろう。
   本特集では,輸血にまつわる合併症として,GVHD,血液型不適合輸血,輸血関連性急性肺障害(TRALI),アナフィラキシー様反応の各症例を提示した。日本赤十字社による2001年度副作用報告では,疑われた報告総数1290件のうち,発熱やTRALIを含む非溶血性副作用1115件,輸血感染症140件,溶血性副作用24件,GVHD8件と無視できない数を残しており,本稿が,輸血に携わる機会が多い麻酔科医として知識のブラッシュアップになれば幸いである。

津崎 晃一