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 徹底分析シリーズ

麻酔器を理解しよう

   私たちが毎日使っている麻酔器ですが,身近なものであるにもかかわらず,その機能や構造について考えてみる機会は意外に少ないことに気づきました。医学雑誌の総説や解説などでも,ほとんど取り上げられていません。実際,創刊以来10年以上経過したLiSAの歴史の中でも,一度も取り上げられたことがないテーマです。
   麻酔を日常業務とする麻酔科医にとって,「よく知らない」ではすまされない道具であるはずの麻酔器ですが,その構造のみを理解するにはあまりに興味がもてない部類の医療機器なのかもしれません。症例報告などでも,「麻酔器の構造を知っていれば防げた」,「始業点検をきっちり行っていれば防げた」というものが結構あります。そこで,今回の徹底分析の切り口として,日本麻酔科学会の「麻酔器の始業点検」を意識した構成としました。具体的には,「麻酔器の始業点検」のやさしい解説,低流量麻酔時の始業点検,麻酔器とは別に組み立てる非再呼吸回路やバッグバルブマスクなどの構造と始業点検(次号掲載),麻酔器に起因する麻酔事故,麻酔器の歴史と構造変化,電子化された麻酔器の構造とトラブル(次号掲載)などについて取り上げました。
   また,麻酔器を使う側の立場の医師だけでなく,作る側のメーカーの方々にも御参加いただき,本音の「麻酔器」を語っていただきました。この「徹底分析」により,本当の意味で麻酔器が身近な存在となり,麻酔器に関連するトラブルにも冷静に対応できるような知識の一助となれば幸いです。

県立広島病院麻酔・集中治療科   讃岐 美智義