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 徹底分析シリーズ

薬物の血中濃度をはかる

    有効でかつ安全な薬物療法,すなわち合理的な薬物療法のためには,薬の「血中濃度」を測ることが役に立つことは誰でも知っている。しかし,日ごろから測定しているのは果たして本当に「血中濃度」なのか。「血中濃度」のほかに「血漿濃度」や「血清濃度」という用語も耳にするが,これらは何を指すのか,実際に薬の濃度を測定するときにはどれを採用するのか,などの疑問が生じるかもしれない。
   また,「血中濃度」といえば,半減期を思い浮かべる人も多い。しかし,半減期を知ることによってどのように治療に生かせるのか。薬を投与してからの濃度の低下速度がわかるだけと理解しているとすれば,宝の持ち腐れである。あるいは,薬物相互作用が問題になることは多いが,疑わしいときには「血中濃度」を測定すれば解決するのだから,濃度測定さえ実施すれば問題はないと理解しているとすれば,それは問題である。
   この徹底分析では「血中濃度」を測定することを最大限に生かせるように,「血中濃度」に関する基本的問題を扱った。また,本文に用いられる薬力学的および薬物動態学的用語について簡潔にコラムとして解説した。

中木 敏夫