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 徹底分析シリーズ

麻酔科医の知らなければいけない免疫

   麻酔管理は,鎮痛・意識消失・筋弛緩に加え侵襲制御に対して重要な役割を担っている。侵襲に対する生体防御反応は神経・内分泌・免疫系で調節されるが,これらは独立した系ではなく密接にクロストークを行っている。さらに炎症反応,血液凝固系も密接に関連し,複雑系を形成している。侵襲局所でのシグナル発動には自然免疫の担当細胞であるマクロファージや好中球などの活性化が深くかかわっている。したがって,外科侵襲と生体防御を理解し,より質の高い麻酔管理を行うためには免疫系の理解が必須となってくる。過剰な炎症反応の制御,神経系とのリアルタイムな関係,栄養学的介入,長期予後改善のための免疫系の理解は麻酔科学を周術期医学としてさらに発展させることの一方法になると考えられる。また,明日からの業務でもアナフィラキシー,免疫能低下患者,移植手術,癌性疼痛管理と免疫系の理解が必要となる場面は少なくない。本特集が読者の明日とさらなる未来への発展に役立つことを願っています。

大分大学医学部 麻酔科学講座   岩坂 日出男