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症例検討
気道トラブル
気道トラブルで真っ先に思い浮かぶのは,挿管困難だろう。ここ数年で気道確保が困難な症例に対応するアプローチは,米国麻酔科学会の「気道確保困難患者の管理のための実践ガイドライン」とともにかなり浸透してきた。各地の学術集会やセミナーで企画される DAM(difficult airway management)ワークショップは,いつも早い時点で定員いっぱいになる。
しかし,「気管挿管ができればすべて OK」とはならないことを,ほとんどの麻酔科医は承知している。麻酔管理中の気道周辺には,危ないトラップが至る所に仕掛けられているのである。私自身,「アー,よかった」と胸をなでおろしたことは 1 回や 2 回ではない。東日本大震災のように,どんなに注意し予測していても,想定外のトラブルは起こるのである。そんな気道トラブルに対処する方法はただ一つ,経験と知識を積み重ね,そしてそれを広く皆が共有することである。
今回の症例検討は,そんな怖い経験がたくさん詰まっている。ぜひ,わがことのようにイメージし,自分が同じ立場になったらどうしたか,有用であったといわれる方法や器材は自分の施設に揃っているのか,今一度見直す機会としていただきたい。
県立広島病院 麻酔科 中尾 三和子