バックナンバー

 徹底分析シリーズ

麻酔科的緩和医療

麻酔科的緩和医療とは何を意味するのであろう?

緩和医療では,いまだに特異的な医療技術が確立されていないことから,何科の医師であっても手を挙げれば緩和医療医になることができる。ただし,ほとんどの麻酔科医は癌を治療したことがない。そして,癌の発見から死まで主治医として連れ添ったことがない。そんなわれわれ麻酔科医が緩和医療を担うとき,麻酔科医ならではの特殊技術を生かさずに,頼ってくれた主治医の期待に応え,患者の苦しみを緩和することができようか。すなわち麻酔科的緩和医療とは,緩和医療のなかで麻酔科医が麻酔の特殊技術を前面に出していくということであり,これこそが,麻酔科医の「専門性」なのである。

本徹底分析では,実際に臨床の現場で麻酔科の専門性を発揮して患者の緩和医療に当たっている方々に執筆をお願いした。これから麻酔科を経て緩和医療に進む医師には,是非本徹底分析を読んで,他科に頼られる,そしてチームメンバーの熱い信頼を得られる医師となって活躍してほしい。

■cancer painの日本語訳について

「cancer pain」は,これまで「癌性疼痛」「がん疼痛」「がんの痛み」などと訳されてきた。『麻酔科学用語集 第3版』は「癌性疼痛」としている。
しかし,「疼痛」とは疼く痛みのことであり,痛みの一部しか表していないという観点から,「疼く」を用いずに「がんの痛み」もしくは「がん性痛」とするのが最近の潮流であり,関連学会でも審議されている。
そこで本徹底分析では,cancer painに当たる用語を「がんの痛み」または「がん性痛」と表記することとした。

 

がん研究会有明病院 麻酔科・ペインクリニック 服部 政治