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 症例検討

慢性肺気腫症の麻酔管理

   高齢化に伴い,慢性疾患を有する症例の麻酔管理が増えている。糖尿病,高血圧,冠動脈疾患などが代表的であるが,慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease(COPD)も増加の一途を辿っている。
   COPD 症例は,特徴的な呼吸器メカニクスを示し,病期によって在宅酸素療法や在宅人工呼吸管理など,疾患自体に加えて日常生活を著しく制限する要素が多い。麻酔中の全身管理の要点は,手術という大きなストレスに対応するのと同時に,全身の諸臓器の十分な酸素化を維持することにある。しかし,呼吸器疾患を有する症例では,ガス交換障害のために,こうした麻酔管理の要点を維持することも困難なことが多い。
   非可逆的肺組織の損傷が COPD の本態で,慢性に経過するが,感冒をはじめとした呼吸器感染症が原因で急性呼吸不全を呈することもある。周術期の管理においては,術前の評価とともに,麻酔計画が術後経過に大きく関与する。
   今回の症例検討では,COPD 症例の麻酔管理のみならず,COPD の病態生理,さらには COPD の急性増悪時の第一選択として用いられる NPPV について紹介する。

落合 亮一