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 症例検討

在宅酸素療法(HOT)の麻酔

   在宅酸素療法(HOT)を行っている症例の検討である。
   HOTの適応症は,総論でも述べられているように呼吸不全,肺高血圧症,そして心不全症例であり,それぞれが生命予後に直結する基礎疾患として周術期の綿密な計画が必要である。一方,周術期リスクを検討する際に,こうした基礎疾患を有する症例では呼吸・循環系の予備力を評価することは困難であることも多い。虚血性心疾患症例では,非心臓手術について周術期管理のガイドラインが発表されて久しいが,呼吸不全に関する総合的な指針は見られていない。疾患の多様性や重症度に個人差の大きいことがガイドライン設定を難しくしていることは想像に難くないが,安全な周術期管理のためにも「非呼吸器手術における呼吸器疾患の周術期ガイドライン」の設定がまたれる。
   本症例検討で扱う内容は応用問題でもあり,必ずしも正解は一つとはかぎらない。医学的評価に加えて施設ごとの非医学的因子(ICUの有無,acute pain service の有無,呼吸器専門医の有無などなど)も考慮する必要があるが,誌面にもかぎりがあり,すべてを網羅することは困難であろう。読者の診療の一助になれば幸いである。

落合 亮一