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 症例検討

術前検査で困った症例(その 1)

   術前評価は難しい。今回取り上げる「検査の異常」は,当然病歴,身体所見を加味して判断しなければならないが,それだけではない。そもそも手術は本当に必要なのか,必要だとしても延期できないか,できるとするといつまで延ばすか,術者の技量と度量はどうか,患者・家族にリスクを納得させられるか,といった要因を勘案して決断する。この「異常値」は果たして何を意味するのか? 「こんなことなら検査をしなければよかった」とだけは言いたくない。必要な検査だから行ったのである。今こそ,周術期の専門医,兼コーディネーターとしての麻酔科医の腕の見せどころである,と自分に言い聞かせ,この「異常値」に立ち向かいたい。

阪井 裕一