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症例検討
術中の低酸素血症1
麻酔中の低酸素血症は,麻酔の導入および覚醒時に起こることが多いが,本症例検討では,"術中"の低酸素血症を取り上げる。
麻酔科医にとって,パルスオキシメータの音程が心拍ごとに低下していく状況は,最も冷や汗が出る瞬間である。体内の酸素リザーブは小さいため,何らかのトラブルが発生すると,酸素化が急速に悪化し,しばしば危機的状況に陥る。迅速な診断と処置を誤れば,重大な合併症に結び付く。重要なことは,術中低酸素血症の原因を系統的に理解するとともに,その患者で起こる可能性の高い原因を予測しておくことである。さらに,原因究明のためにチェックすべきポイントを把握していることが重要である。そのためには,術中に身体所見,モニター,麻酔回路などを注意深くチェックするだけでは不十分で,術前の問診などにより,患者の訴え,現病歴,既往歴の把握も忘れてはならない。
術中低酸素血症の迅速な診断および治療を行う際に,本症例検討がその一助となれば幸いである。
松永 明
鹿児島大学医学部 麻酔・蘇生学講座