医の知の羅針盤 - 良医であるためのヒント -

医師になったら読む本、10年ごとにもう一度読む本
「偉大な医師(great doctor)」や「名医(top doctor)」にならずとも「良医(good/wise doctor)」でありたい! 「米国家庭医療の父」と称されるロバート・テイラー先生が、半世紀にもおよぶ診療・学究生活の中で、丹念に集めてきた古今東西の医師の「医学の知恵(医の知)」を紐解き、「良医」のあるべき姿を描き出す。心に染み入る助言が満載。
¥3,960 税込
原著タイトル
Medical Wisdom and Doctoring: The Art of 21st Century Practice
監修:石山貴章 新潟大学地域医療教育センター/魚沼基幹病院総合診療科教授 訳: 三枝小夜子
ISBN
978-4-89592-872-4
判型/ページ数/図・写真
A5 頁368
刊行年月
2017/2/24
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第1章 21世紀における医の知
第2章 患者に寄り添う
第3章 臨床対話とコミュニケーション
第4章 臨床診断の技術
第5章 疾患の管理と予防
第6章 死にゆく患者とその家族に寄り添う
第7章 臨床医として生計を立てる
第8章 医師の生涯学習
第9章 明日の医師を育てる
第10章 あなたの家族とコミュニティーについて
第11章 あなた自身を大切にしよう
第12章 倫理、信用、信頼
第13章 明日の計画を立てる
第14章 良医と21世紀の課題と医術
第15章 エピローグ

知識と知恵は同じものであるどころか,
しばしばなんの関係もない。
知識は他人の思想が詰まった頭の中にあり,
知恵はみずからを注意深く見つめる心の中にある。
知識は自分がこんなにも多くを学んだと誇り,
知恵は自分はこれしか知らないとへりくだる。
[英国の詩人William Cowper(1731~1800). 『The Task(課題)』]



患者のケアを行う義務と患者のケアを教える義務を医学が放棄することはない。
[米国の医学教育者・編集者Maurice B. Strauss(1904~1974). Medicine 1964;19:43]



自分の運命を実現することは,人間の唯一の責任なのだ。

 まだ見ぬ宝物と「自分の運命」の見つけ方を知りたがっている羊飼いの少年が,「セイラムの王様」と名乗る老人からもらった助言。
 老人は,「自分の運命」について次のように説明する。

・・・この地上には一つの偉大な真実があるからだ。つまり,おまえが誰であろうと,何をしていようと,おまえが何かを本当にやりたいと思う時は,その望みは宇宙の魂から生まれたからなのだ。それが地球におけるおまえの使命なのだよ。
[Paulo Coelho. 『The Alchemist』(『アルケミスト:夢を旅した少年』山川紘矢ほか訳,角川文庫,1997,p.28より)]





【まえがき】

 私は本書で,われわれ医師が数千年の医療の実践を通じて身につけてきた知恵と,その知恵を日々の患者ケアにいかす医の技術の話をする。本書に登場するのは,あなたが昨日の午後に治療した肺炎の高齢女性や,今朝診察した胸痛を訴える中年男性だ。夜中に呼吸困難に苦しむクループの子供や,われわれが日常的に用いる薬物だ。あなたのリーダーシップを期待する同僚や,あなたが指導する医学生だ。医師という尊い職業の末席に連なる私とあなた,そして,われわれを支え,その幸せのために心を砕いてくれる家族だ。
 われわれ医師が(そして,すべての医療従事者が)自分の職業の尊さを正しく理解するためには,過去の世代の医師や学者から受け継いだ遺産を現代に役立てる方法を知っておく必要がある。先人たちはわれわれに,プロの臨床医として思考しながら一人の人間として患者の心に寄り添う方法や,疾患や病(やまい)や死に対処する方法や,患者,患者の家族,われわれ自身,われわれの家族との付き合い方などを伝えてくれた。つまり,われわれが豊富な知識を持ち,賢明で,思いやりのある21世紀の医師になるにはどうすればよいかを教えてくれているのだ。
 本書を読み進める読者諸氏は,巻頭の引用句が示唆する3つのテーマの存在に気づかれるだろう。第1のテーマは,われわれが先人から受け継いだ「医学の知識」と「医学の知恵(医の知)」だ。われわれはこうした知識や知恵に日々感謝しなければならない。もちろん,知識と知恵は同じものではない。「医学の知識(medical knowledge)」は,猛烈な勢いで増えてゆく客観的なデータの宝庫で,われわれがエビデンスにもとづく医療を実践できるようにしてくれる。これに対して,「医の知(medical wisdom)」は主観的で,哲学的で,ときに驚くほど直観的だ。第2のテーマは,他者への奉仕の義務だ。これは医療と医術の土台となる使命である。第3のテーマは,Paulo Coelhoが言うところの「自分の運命」を探すこと,すなわち,医師の自己実現への道のりだ。この旅は,治療者を志す者には特別な意味を持つ旅である。
 3つのテーマに関して,私は,癒し手であり研究者でもある良医たちが残した不朽の助言を参考にした。以下で紹介する思想や逸話の多くは「口述歴史」とでも呼ぶべきもので,一般的な教科書に記されていることはめったにない。私は本書をできるだけ学術的な著作にするため,こうした教訓や格言を具体例で補足した。具体例には3種類ある。1つめは現在の医学文献からとったもの,2つめは医学史の逸話からとったもの,3つめは開業医の個人的な経験からとったもので,私自身の経験も含まれている。
 私が本書に『Medical Wisdom and Doctoring: the Art of 21st Century Practice(医の知の羅針盤)』というタイトルをつけたのは,その内容が今日の医師の仕事と直結していることを強調するためだ。私はここで,今日の診断法や治療法,実践的なコミュニケーション技術,医療に関連した倫理的問題,明日の医療の予兆となるかもしれない動きなどについてお話しするつもりだ。医師であるあなた自身を大切にすることや,あなたの家族やコミュニティーとの付き合い方についての章もある。いずれも,あなたが医師としての能力を十分に発揮するために欠かすことができないものだ。
 Moses Maimonides,Ambroise Pare,John Snow,Francis Weld Peabody,Mayo兄弟など,われわれより前の時代を生きた偉大な医師たちの業績にも触れたい。日々の医療経験に磨かれた,名もなき英雄とも呼ぶべき勤勉な臨床医たちのエピソードも多数紹介するつもりだ。こうした良医たちが編み出した概念や技術は,未来の世代にも伝える価値がある。最後に,私自身の40年にわたる医療・教育経験にもとづくお話もしたい。
 さきほどの「口述歴史」の話に戻るが,本書には,ベテラン医師から若手医師へ,教師から学生へ,師から弟子へと受け継がれてきた医師の知恵が記されている。こうした教訓や方法論や知恵の言葉は自然に受け継がれていくはずのものだが,なかなかそうならないのが現状だ。若手医師にとってもベテラン医師にとっても,日々はあまりに忙しく,内省的な話をしたりキャンプファイヤーのまわりで腹を割った話をしたりする余裕はない。さらに,医師が身につけておかなければならない科学的知識が膨大な量にのぼるため,医師の知恵を分かち合う時間などないように思われる。それゆえ,本書に書かれていることは,あなたが学生時代にもレジデント時代にも学んでいないことかもしれないし,多忙な日々の中で後回しにしていることかもしれない。
 私は本書を医師のために書いたが,その内容は患者ケアに携わるすべての臨床家にあてはまる。本書が紹介する概念は,医学生,レジデント,駆け出しの医師,看護師,医師助手にとっても,医療事故や悲痛な体験学習を回避するのに役立つはずだ。20年,30年と医療に携わっているベテランにも,これまで考えたことのないようなヘルスケアへのアプローチを示すつもりだ。自分が日々行っている診療が,いわゆる「良医」たちの診療とどこまで一致しているかという好奇心を満足させるのにも役立つだろう。
 もちろん,先人からの助言のいくつかは,21世紀の医学に合わせて手を加える必要がある。例えば,1903年のSir William Oslerの言葉だ。彼はこの年,医学教育改革の一環としてベッドサイド教育の実施を呼びかけた1)。けれども今日では,治療の短期集中化により多くの患者が数時間しか在院していない上,患者ケアの選択肢が多様化しているため,診察室,病院の救急部,手術室のほか,患者の自宅やナーシングホームでも医学教育が行われることが増えている。だから私は時代を超越した格言を選んで,今日の医療と関係のある具体例で裏付けを与えることにした。なお,個人的に経験した逸話を紹介する場合には,守秘義務との関係で,話の大筋を変えないように気をつけながら,名前や具体的な状況を変えている。
 人間的成長のために本書を読むのもお勧めだ。Hippocrates,Pogo*1,Albert Schweitzer,Charles Berkley(もちろん,バスケットボール選手のCharles Berkleyだ!),Louis Pasteur,漫画『小さな孤児アニー』の主人公Annieの言葉は,あなたを勇気づけてくれるだろう。レストラン「Applebee’s(アップルビー)」の成功の秘密,Joseph Listerと洗口液リステリンをめぐる裏話,シャーロック・ホームズのモデルになった人物についてもお話ししたい。何か役に立つことを学びたいという読者諸氏のために,クリニカル・パールも紹介している。眼部帯状疱疹を発症した患者に関して注意すべき点,糖尿病性末梢性ニューロパチーの良い検査法,片側性の右精索静脈瘤に遭遇したときに考慮するべきこと,左肩に放散し前傾姿勢で軽快する胸膜性の胸痛の重大性などだ。先見の明ある教授によって本書が医学部の必修科目の教科書に指定されれば光栄だが,個々の疾患の診断法や治療法について詳しく述べることはしていない。
 中世の医師Paracelsus(1493~1591)の「医学は単なる科学ではなく芸術でもある」2)というアフォリズムもあるように,本書は何よりも医の技術について書かれている。ここで紹介する概念はじっくり味わってほしいので,できれば,暖炉の傍で過ごす静かな夕べや,飛行機での長旅の間や,オンコール待機中の退屈な夜などに,じっくり考えながら読んでほしい。
 それでは『医の知の羅針盤』をどうぞ。

オレゴン州ポートランドにて
Robert B.Taylor

*1訳注:米国の新聞連載漫画『ポゴ』の主人公のフクロネズミ]

参考文献
1. Osler W. On the need of a radical reform in our methods of teaching senior students. Med News 1903;82:49?53.
2. Paracelsus. Die grosse Wundarznei. Quoted in Strauss MB. Familiar medical quotations. Boston: Litte, Brown; 1968;295.






【本書について】

世の中には群を抜いて優れた人々がいる。兵士,船乗り,羊飼いではかなり多いが,芸術家ではまれで,聖職者ではもっと少ない。けれども医師はほぼ全員だ。彼はわれわれの文明の(ささやかな)花だ。この時代の人間が用済みになり,歴史の中で懐かしがられる存在になったとき,人々は彼のことを,この時代に共通する欠点をほとんど持たず,人類の美徳を体現した存在だったと信じるだろう。彼は寛大だ。それは,術として職業を行う者には可能だが,商いとしてそれを行う者には不可能なことだ。彼の慎み深さは百の秘密によって試された。彼の機転は千の難局によって試された。もっと大切なのは,彼が怪力無双のヘラクレスのような快活さと勇気を持っていることだ。彼は病室に新鮮な空気と活気を運んできて,(彼自身が望むほどではないが)しばしば治癒をもたらす。
[Robert Louis Stevenson,詩集『Underwoods(下生え)』献辞1)]

 Shirley Iversonは42歳で新しい職を得ることができた。保険には加入しているが,都会に出てきて間もないため,まだかかりつけ医は決まっていない。最近,脱力やめまいが何度かあったので,医師に診てもらうことにした。医師探しは診療所に電話をかけることから始まった。彼女は4件の診療所に電話をかけたが,「新患は受け付けておりません」,「当診療所はあなたの保険会社の指定診療所ではありません」などと言われて断られてしまった。その後,大きな診療所が,彼女の保険の保障範囲を確認してから,1週間後の予約を受けてくれた。予約の日に診療所に行き,受け付けを済ませ,会計審査係のところに行くと,30ドルの自己負担金が免除されると言われた。次にメディカルアシスタントが診察室に案内してくれ,彼女の主訴を聞き,電子カルテに入力すると,検査着に着替えてくださいと言った。今度は白衣の看護師が来て,バイタルをとり,詳しい病歴を聞いてきた*1。
 そしてついに(電話での問い合わせと,当日の4人の診療所スタッフとの出会いと,スースーする検査着での長い待ち時間の果てに)診察室のドアが開いて医師が入ってきた。医師は彼女と握手をして椅子に腰掛け,「こんにちは,Iversonさん。はじめまして,Johnsonです。今日はどうされましたか?」と言った。Shirleyは医師の様子にほっとした。直観的に,この医師の前ではリラックスして自分の話をしてよいのだと感じたからだ。
 21世紀の今,患者が医療を受けるまでのプロセスは,大企業の本部を訪問するプロセスによく似たものになっている。違いは,ようやくたどりついた診療室に,(運が良ければ)自分の健康と秘密を託すことができそうな,経験豊富で思いやりのある医師がいることだ。患者と医師の出会いはそうでなければならないし,実際にそうであることが多い。
 Shirleyをはじめ,現代人の多くが,医療を受けようとして認知的不協和に陥っている。考えてみてほしい。診察室や病院のベッドサイドには,思いやりがあり,信頼できる臨床医がいて,個々の患者に合わせた治療をしてくれる。しかし,そうした医師たちは,損得勘定にしか興味のない理事や企業の重役や役人が指揮をとる,複雑怪奇で人間味のないヘルスケア事業に組み込まれているのだ。われわれはそんな世界に生きていて,このパラドックスをなくすことが私の願いだ。とはいえ本書では,今日のヘルスケアにはびこる官僚主義や,自分の利益のことしか頭になく,驚くほど怠惰な企業のことは,基本的に無視するつもりだ。代わりに私は,最も有望な変革要因に希望を託す。それは,この物語に登場する,一見,時代錯誤な英雄たち,個々の患者を治療するために勤勉に努力する,賢明で有能な医師たちだ。われわれ医師が社会で享受する地位は,彼らの気高い行いに対して与えられた。こうした英雄的な医師たちは,もはやヘルスケアをめぐる政治や経済の意思決定を担う存在ではないかもしれない。けれども,万人のためのより良い未来のヘルスケアの鍵を握っているのは,やはり彼らなのだ。
 だからこそ,われわれは英雄的な良医たちを理解しようとし,ときに彼らに倣おうとする。それを試みる以下の章は,あなたがこれまで医師として歩んできた日々と同じく,1つの旅になるだろう。ガイドは私だ。それは私が読者諸氏や医師仲間よりも賢いからではなく,発掘や分類といった作業をしてきたからだ。私は文献を探し,書籍や論文を読み,山のように資料を集め,私自身の開業医時代の逸話で風味づけをして,以下の15章を執筆した。
 本書を思索的であると同時に学問的なものにするため,私は文献から大量の引用をしている。参考文献は2種類の方法で示してある。1つは簡略な方法で,医学史上の出来事,診療法,語源,臨床に関するアフォリズム,古典からの引用などについて書かれた参考文献の一覧にある書籍のページを示したものだ。また,1,2回しか引用していない参考文献は,伝統的なスタイルで,項目ごと,章ごとに引用元を示した。読者諸氏の好奇心を刺激するため,どちらのタイプの引用も多数入れてある。
 患者が中心になる物語もある。医師仲間から聞いた話もあるが,ほとんどは私自身が医師として遭遇した患者の話だ。私が本書で語る出来事は年代順になっていないため,私の経歴を簡単にまとめておく。私は1961年にフィラデルフィアのテンプル大学メディカルスクールを卒業し,ヴァージニア州ノーフォークの米国公衆衛生局病院で3年間の研修と義務勤務を終えた。そして1964年に,妻と2人の幼い娘を連れて,ニューヨーク州ニューパルツの医師グループの診療所に4人目の医師として加わった。ニューパルツはニューヨーク市から150 kmほど北にあり,ハドソンバレーに位置する,絵に描いたように美しい大学町だ。
 1968年,私は医師グループから独立して,ニューパルツからそう遠くないガーディナーという街のりんご園の跡地に広さ140平方メートルの診療所を建て,「田舎医者」になった。けれどもその後,医学研究,なかでも内科医のための参考図書の編集に興味を持つようになったので,1987年に診療所をたたんでノースカロライナ州ウィンストン・セーラムにあるウェイクフォレスト大学メディカルスクールの教授になった。
 私はそこで6年間過ごした後,1984年にオレゴン州ポートランドのオレゴン保健科学大学の家庭医学科長に就任し,1998年までこの地位にいた。その後,名誉教授/学科長として今日に至る。
 私が経歴を語るのは,自己愛のためではなく,以下でお話しする逸話の背景を理解してもらうのに必要だからだ。私の経歴はおそらく読者諸氏の経歴とはだいぶ違っているので,一個人としても医師としてもいろいろな人生があることを示すのに役立つだろう。しかし,われわれ医師の人生には,学位取得,過酷な研修医時代,開業当初の日々,誰もが直面する進路の決定,年齢とともに訪れる生活の変化などの共通の段階がいくつかある。われわれの人生を彩るこうした出来事は,患者の物語とともに,現代の医師が共有する物語だ。
 もちろん,医師だけが共有する物語も多数あり,本書では,われわれより前の時代を生きた治療者たちの偉業や奉仕や誤った考えや過ちについて多くの章を割いている。本書は,こうした出来事と,そこから得られた教訓が,今日のわれわれに大きな影響を及ぼしていることをあなたに示すことになる。
 読者諸氏にお願いしたいことが1つある。この本が小説だったら(例えば,ワシントンDCを吹き飛ばす陰謀を描いたミステリー)だったら,作り話だということを忘れて読んでほしいとお願いするところだ。けれども本書は,良医になること,良医であることを主題にしている。この本を読んでいる間は,ふだんの科学的懐疑主義を忘れて,人間的成長のための糧を得ようとしてほしい。失望はさせないつもりだ。私は本書で,臨床対話の技術,診断の技術,疾患管理,疾患ではなく患者を治療することについてお話ししよう。あなたは,早すぎる死亡宣告を受けた青年(第6章),大きな製薬会社から給料を受けとっている教授(第12章),「わかりません」を連発する医師(第3章),バージニア州のディズマル・スワンプという湿地でガラガラヘビに噛まれた医師(第11章),おばあさんの猫を殺した旋毛虫病(第4章)などの事例を通じて,新しい概念に出会うだろう。
 著者が謝辞を書くのは,どんな本でも(本書のように過去に目を向けた本は特に),著者一人の努力で完成するものではないと思うからだ。まずは私の家族に感謝したい。真の医学研究者であり,洞察力に富む編集者でもある妻のAnita D. Taylor,娘のDianaとSharon,そして4人の孫たち,Francesca(Frankie),Elizabeth(Masha),Jack,Anna(Annie)。次に,長年にわたり私と友情をはぐくみ,話を聞いてくれ,物語と知恵を分けてくれた多くの人々に感謝したい。そうした物語と知恵のいくつかは本書にも反映されている。彼らの名前を順不同に挙げよう。Robin Hull,Van Pine,Bob Bomengen,Jim Crowell,Ray Friedman,Nancy Friedman,Tom Deutsch,John Saultz,Bill Toffler,Scott Fields,Eric Walsh,Peter Goodwin,Coelleda O’Neil,Ben Jones,Louise Jones,Marge Sosnik,Takashi Yamada,John Kendall,Joseph Van der Veer,Alan Blum。そして,Springer社の編集者Katharine Cacaceの優秀な仕事ぶりに心からの感謝を捧げる。
 そろそろお話を始めよう。今よりもっと進んだ勉強をしたい医学生にも,名医をめざすベテラン開業医にも,本書は役に立つはずだ。あなたは本書を読むことで,患者のケアについてより良い決断をできるようになるだけでなく,医師としても一個人としても「賢明でない」選択をしそうになったときに,それに気づけるようになるだろう。さあ,私と一緒に医の知と医術のすばらしい世界を旅しよう。


*1訳注:米国では基本的に,保険会社が患者一人に対し一人「かかりつけ医」の決定を義務付けている。保険会社が与える医師リストの中から一人選び,その医師と「患者-医師関係(patient-phsycian’s relationship)」を結ぶ必要がある。さらに,日本人が馴染んでいる病院あるいは開業医の外来とは異なり,米国で「かかりつけ医」にかかる場合,基本的にはすべて予約制だ。患者はいくつかある診察室で待たされ,患者ではなく医師がそれらの部屋を動き回り,患者を診察していくこととなる。本文にあるとおり,医師がその診察室に来る前に,ナースやアシスタントがまず簡単な病歴やバイタルを取りに来るのが普通である。

参考文献
1. Stevenson R L. Dedication. Underwoods, a collection of poems published in 1887.

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