カンデル神経科学 第2版

●8年ぶりの改訂にして,約30%の改訂量。

●全面的にアップデート。全9パート,64章からなる新構成。「ブレイン・マシン・インターフェース」など3章を新たに追加。

●より完成度を高めた大好評の概論に始まり,神経系の分子メカニズム,発生,末梢・中枢神経系,高次機能,精神・神経疾患の基礎を詳述。

●情報工学系項目を特に強化。また,光遺伝学やイメージング技術などの最新研究データを各章で紹介。

●「脳科学」を包括的に解説する最も信頼できる教科書。

●読みやすい日本語訳と、美しく見やすい907点のフルカラー図版。

●医学,薬学,リハビリテーション,理学,工学,情報工学,心理学,経済学,哲学などさまざまな学問領域の基礎として「人間を知るための科学的基盤」を与えてくれる本。

●初学者から専門研究者・医師,さらにはAIエンジニアまで、幅広く知識を共有できる一冊。

●幅広い読者に手に取っていただくべく,旧版に続き廉価を実現。



 



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¥15,950 税込
原著タイトル
Principles of Neural Science, 6th Edition
原著者
Eric R. Kandel・John D. Koester・Sarah H. Mack・Steven A. Siegelbaum
日本語版監修:宮下保司(東京大学名誉教授)/監訳:岡野栄之・神谷之康・合田裕紀子・加藤総夫・藤田一郎・伊佐正・定藤規弘・大隅典子・井ノ口馨・笠井清登
ISBN
978-4-8157-3055-0
判型/ページ数/図・写真
A4変 頁1704 図903
刊行年月
2022年9月
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Part I 概論
第1章 脳と行動
第2章 遺伝子と行動
第3章 神経細胞,神経回路と行動
第4章 神経回路と行動をつなぐ神経解剖学的基盤
第5章 行動をつかさどる神経回路の計算論的基盤
第6章 イメージングと行動

Part II 神経系の細胞生物学と分子細胞生物学
第7章 神経系の細胞
第8章 イオンチャネル
第9章 神経細胞の膜電位と受動的電気特性
第10章 シグナルの伝播:活動電位

Part III シナプス伝達
第11章 シナプス伝達概論
第12章 チャネルの直接的開口を介したシナプス伝達:神経-筋間シナプス
第13章 中枢神経系におけるシナプス統合
第14章 シナプス伝達および神経活動の修飾:セカンドメッセンジャー
第15章 伝達物質放出
第16章 神経伝達物質

Part IV 知覚
第17章 感覚の符号化
第18章 体性感覚系の受容器
第19章 触覚
第20章 痛み
第21章 視覚情報処理の創造的な性質
第22章 低次視覚情報処理:網膜
第23章 中間段階の視覚処理と視覚要素
第24章 高次視覚情報処理:視覚から認知へ
第25章 注意と行為のための視覚情報処理
第26章 蝸牛による聴覚情報処理
第27章 前庭系
第28章 聴覚中枢神経系による情報処理
第29章 においと味:化学感覚

Part V 運動
第30章 感覚運動制御の原理
第31章 運動単位と筋活動
第32章 脊髄における感覚運動統合
第33章 歩行運動
第34章 随意運動:運動野
第35章 視線の制御
第36章 姿勢
第37章 小脳
第38章 大脳基底核
第39章 ブレイン・マシン・インターフェース

Part VI 情動,動機づけ,ホメオスタシスの生物学
第40章 脳幹
第41章 視床下部:生存のための自律神経,ホルモン,行動の統制
第42章 情動
第43章 動機づけ,報酬,嗜癖状態
第44章 睡眠と覚醒

Part VII 神経発生と行動の発現
第45章 神経系のパターン形成
第46章 神経細胞の分化と生存
第47章 軸索の伸長とガイダンス
第48章 シナプスの形成と除去
第49章 経験とシナプス結合の精緻化
第50章 損傷を受けた脳の修復
第51章 神経系の性分化

Part VIII 学習,記憶,言語,認知
第52章 学習と記憶
第53章 潜在記憶を貯蔵する細胞機構と個性の生物学的基盤
第54章 海馬と顕在記憶貯蔵の神経学的基盤
第55章 言語
第56章 意思決定と意識

Part IX 神経系の疾患
第57章 末梢神経と運動単位の疾患
第58章 てんかん発作とてんかん
第59章 意識的・無意識的な精神過程の障害
第60章 統合失調症における思考と意志の障害
第61章 気分障害と不安障害
第62章 社会的認知に影響を与える障害:自閉スペクトラム症
第64章 脳の老化

『カンデル神経科学 第2版』は,原著第6版(2021年)の日本語版である。原著は40年以上もの長きにわたり世界中の神経科学・脳科学に携わる人々のバイブルとなってきた。第6版は,原著第5版(2013年)までの骨格を保ちつつ,この8年間に生じた新事実の発見や新規方法論の開発,理論的枠組みの革新を反映し,全体構成が組み替えられた。また,どのページも丁寧に見直されて,随所の記述がアップデートされた全面改訂版となっている。それを受けた日本語版第2版は,神経科学・脳科学に初めて足を踏み入れる人々への読みやすいガイドであるとともに,日本語版第1版(2014年)からの8年間の進歩に関する自身の理解を見直し,アップデートを図りたい人々の期待に応える内容となっている。
 本書の魅力は,まず,ここに盛られている“分厚い”体系的な情報である。ただし,記述は平易で初心者にも理解しやすいよう工夫されている。同時に,神経科学の全体像の理解へと読者を導く全体構成が特徴である。原著初版以来一貫して編者を務めるエリック カンデル(2000年にノーベル生理学・医学賞を受賞)が,自身の俯瞰的視野を読者に伝えようと,改訂ごとに構成を進化させているのである。入門者にとって全体像の把握は容易ではない。「PartⅠ 概論」 は原著初版以来ずっと本書の目玉であったが,今回の改訂では従来の3つの章から6章へと大幅に拡充され,神経科学全体に対する俯瞰的見通しを伝えたいとの本書の狙いが明確になっている。
 本書はさまざまな立場やバックグラウンドの読者が,それぞれに合わせて使える入門書である。学部学生や大学院生はもとより,自分の専門領域を神経科学全体から俯瞰的・包括的に再度把握したい熟練研究者,そして医学臨床や看護・介護にかかわる方々,人工知能(AI)を扱う工学系分野に携わる方々も,それぞれ必要な情報をここに見いだすことができるであろう。入門書とはいえ,その内容は極めて現代的である。過去半世紀にわたり確立してきた分子レベル・細胞レベル・システムレベルの基礎事項を扱う章は,従来の版から表題名が変わらない場合でも,今回の改訂では内容が刷新され,全体における各章の位置づけも大幅な組替えが行われている。例えば,新設されたPartⅨ では,これまで本全体に散らばって記述されていたさまざまな神経系の疾患(精神・神経疾患)が1つにまとめて扱われている。それは多くの神経変性疾患や神経発達障害の根底に共通する原理に対する理解の深まりを反映している。それを可能にしたのは,ゲノムの塩基配列決定法の驚異的発展と普及を土台にして,家族性変異や自然発生変異からさまざまな病態が発現する分子細胞生物学的プロセスの解明,さらに,各個人の多様性にもとづくプロセスの個別性への理解が進んだことである。それらの進歩全てが,臨床現場における個別の病態に合った(パーソナライズされた)治療法を開拓する方向に結実しつつあることに注目したい。
 本改訂版に至る8年間の学問的発展は,「まだまだ遠い目標」と思われていた分野においても顕著である。初版の日本語版監修者の序に私は,「『意識』や『自由意思』の原理にわれわれが挑むことができるときも近いとの期待が高まっている」 と書いた。今回の第2版では,それが現在どのようにして実現されつつあるかを示した新しい章(第5章および第56章)が新設されたことが象徴的である。遺伝子マーカーで標識した特定の種類のニューロンの活動を多数同時記録する技術や,それらニューロンの活動を特異的に操作する技術(オプトジェネティックス〔光遺伝学〕やケモジェネティックス〔化学遺伝学〕)が発展した。そうした技術によってもたらされた多くの新知見は,関連する多くの章の記述を一新している。ニューロンの活動が行動へと変換されるプロセスの検証には,ブレイン・マシン・インターフェースの新しいアプローチが貢献している(本改訂で第39章として新設)。それらの新知見が,計算論的方法に立脚した新しい意思決定理論の枠組みによって,意図的選択から行動が生まれてくる(意識にのぼる/意識にのぼらない)メカニズムについての根底的理解へとわれわれを導きつつある,これらの新しい章は,読者に神経科学分野の発展を強く実感させるであろう。
 こうした具体的な進歩は,もっと大きな学問的進化および社会的インパクトに関連している。「汝自身を知れ」との古代ギリシャの問いを,現代自然科学を基礎として統合的集学的に問うことのできる学問が,神経科学あるいは脳科学である。この8年間に驚異的進歩を遂げた神経科学・脳科学は,現在,この問いを,より具体的先鋭的に問わねばならぬ状況に直面している――人工知能の社会的普及・浸透である。大脳皮質感覚野の神経回路をモデルとしつつ,機械学習・深層学習(ディープラーニング)・強化学習のアルゴリズムに立脚した人工知能が,社会生活の隅々まで進出してきたのである。その能力は,2016年には世界最強棋士の一人が人工知能「アルファ碁」との対局に敗れ,2017年には将棋名人位保持者も人工知能に敗北する,といった事例に象徴されて広く社会的に知られるようになった。むろん,現在の人工知能が扱える領域は極めて限定されている。しかし,人工知能の限界と将来を知りたい,との広く社会的に共有される問題意識に答え,もっと多様な社会的課題に柔軟に対処できる次世代の人工知能を開発する基礎として,ヒトの脳の動作原理を深く知ることの意義を強調したい。
 本書を読むにあたって,詳細な情報や特殊な話題は読み飛ばしても差し支えない構成になっている。しかし,学生時代には,まずこの本を通読してほしいと強く願う。なぜなら,自分の専門から少し離れたことでも,きちんと議論できる人であってほしいからだ。日本の学生は,往々にして,自分の専門のことしか知らない傾向がある。しかし世界を見渡せば,そんなことはない。専門外の知識・情報・考え方についての理解の幅や奥行きが,研究者を成長させるのである。本書によって神経科学の現在について正確な情報・知識を得ることはもちろん重要であるが,さらに本書を通読することによって,読者が,現在自分のいる場所(研究をしている領域)を俯瞰的にみられるようになることを期待したい。そして,そうした広い視野は研究者自身の活動のグローバル化・多様化にも必須なのだ。過去8年間の国内外の研究環境の変化を反映して,日本の大学出身者のキャリアのありようも大きく変わり,国外で研究を推進し,自分のラボを主宰するようになる若手研究者も増加している。米国・ヨーロッパはもとよりアジア各国の大学・研究機関が,日本人研究者に優れた研究環境を提供することを積極的に推進しているのである。同時に,国内においても大学以外の企業で研究職および研究職以外のさまざまな職で働くキャリア形成が進みつつある。本書が,そうした専門性のあり方の変貌に対して,専門分野を踏み台としつつ成長する新しい研究者像へのガイドとなれば望外のよろこびである。
 日本語版第1版の共同監修者であった金澤一郎先生が2016年に逝去された。わが国の神経科学・脳科学が,自然科学のみならず人文学や社会科学をも視野に入れた総合的人間科学の構築に寄与することを夢見て,そのロードマップを共に構想し推進した畏友に哀悼の誠をささげたい。本書には,その夢に学問的基盤を与える力があると,私は信じ続けている。

宮下保司

2023-11-17

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

・1426ページ : BOX56-1 の 2行目
(誤) 対象物や環境の特性である
(正) 対象物や環境の特性とした

2022-10-04

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

599頁 右段 下から4行目
(誤)視覚世界全体は反対方向にジャンプし
(正)視覚世界全体は同側方向にジャンプし

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