グローバルヘルス - 世界の健康と対処戦略の最新動向 -

“健康と開発”の視点に貫かれた包括的教科書、日本語版
グローバリゼーションの進展に伴って発生する地球上の「健康」に関する問題について、公衆衛生、疫学、医学、看護学、人類学、開発経済学、政治学、社会学などの複合的な学問領域であり、米国公衆衛生協会によってまとめられた「グローバルヘルス」の入門書。グローバルヘルスの重要な問題を“開発(development)”の視点から概観し、その経済的、社会的影響や対策を検討するための基本的知識を解説する。
¥10,120 税込
原著タイトル
Global Health 101, 3rd Edition
監訳: 木原 正博 京都大学グローバルヘルス学際融合ユニット・ユニット長(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野教授) 木原 雅子 京都大学グローバルヘルス学際融合ユニット准教授(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野准教授)
ISBN
978-4-89592-897-7
判型/ページ数/図・写真
A4変 頁570 図63
刊行年月
2017/9/27
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第Ⅰ部  グローバルヘルスの概念,測定指標,そして健康と開発の関係
第 1 章 グローバルヘルスとは何か─その概念と目標
第 2 章 健康の決定要因,測定指標,およびその動
第 3 章 健康,教育,貧困,および経済
第Ⅱ部  グローバルヘルスに共通するテーマ
第 4 章 グローバルヘルスにおける倫理と人権
第 5 章 保健医療システム
第 6 章 文化と健康
第Ⅲ部  疾病負荷
第 7 章 健康と環境
第 8 章 栄養とグローバルヘルス
第 9 章 女性と健康
第 10 章 子どもの健康
第 11 章 思春期の健康
第 12 章 感染症
第 13 章 非感染性疾患
第 14 章 不慮の傷害
第Ⅳ部  グローバルヘルスで活躍する主な機関と組織 ─協動の意義と課題
第 15 章 自然災害と人道緊急事態
第 16 章 グローバルヘルスで活躍する主な機関,組織─協働の意義と課題
第 17 章 科学技術,官民パートナーシップ,革新的資金メカニズムとグローバルヘルス
第Ⅴ部  グローバルヘルス分野におけるキャリア像
第 18 章 グローバルヘルス分野におけるキャリアパス
第 19 章 グローバルヘルスで活躍する人々
グロッサリー
索 引

監訳者序文

“Global Health and Socio-epidemiology”,これは,監訳者が,2000年に京都大学医学研究科に創 設された日本で初めての公衆衛生大学院(社会健康医学系専攻)に着任したときに教室につけた名前 で,“Global Health”を大学の教室名に用いたのは恐らく日本で最初であったと思います(なお, “socio-epidemiology[社会疫学]”は監訳者らが提唱する社会科学と疫学を結合するグローバルヘル ス時代の研究アプローチ)。これは,1999年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校のエイズ予防 研究センター(CAPS)の階上にあったグローバルヘルス研究所Institute for Global Health訪問に触 発されたもので,当時は不覚にも,それがGlobal Healthを冠した世界で最初の研究所であったこと も,当時の所長であったRichard Feachem博士が,それから数年後に,グローバルファンドの初代 事務局長となるほどの世界的なグローバルヘルス分野のアクターであったことも知らずにいました。 しかし,その後北米では,いわば疾風怒濤のような「グローバルヘルスブーム」が起き,瞬く間にグ ローバルヘルスは,研究所,学位課程,あるいはプログラムとして100を超える大学に広がり,2008 年には,Consortium of Universities for Global Health(CUGH)がロックフェラー財団とメリンダ& ビルゲイツ財団の支援で設立され,現在ではヨーロッパ,アジアを含む153の大学や研究機関などが 加入するまでに成長し(2017年8月11日時点),活発な活動を展開しています。  これと全く対照的なのが日本の状況です。「グローバルヘルス」という言葉自体は比較的早く市民権 を得たものの,世界の潮流からはすっかり取り残され,グローバルヘルスに関する教育研究を行う大 学院を持つ大学は今に至ってもほとんど存在せず(例外は,2015年創設の長崎大学の熱帯医学・グ ローバルヘルス研究科),CUGHに加盟している組織も未だに1つもありません(2017年8月11日時 点)。これをグローバルヘルスで有名なある友人から「日本はグローバルヘルスの真空地帯だね」と冗 談めいて言われたことが今でも耳に焼き付いています。この背景には,日本の大学には,2000年に 京都大学に社会健康医学系専攻が創設されるまで公衆衛生大学院というものが存在せず,現在でも小 規模のものが6つ程度にとどまるなど,グローバルヘルスを担える組織が物理的に存在しないという わが国独特の現実があります。そこで監訳者らは,大学横断的組織として,他研究科の有志ととも に,学際融合教育研究推進センターの中に,「グローバルヘルス学際融合ユニットGlobal Health Interdisciplinary Uni(t GHIU)」を創設することにしました。2014年10月のことです。このユニット は,京都大学の持つフィールド研究の強い伝統と,アフリカ・アジアに広く展開されている文化人類 学,農学,エネルギー学,地球環境学,地域研究などの研究拠点を骨組みとして活用できれば,わが 国では京都大学にしかできない,グローバルヘルス教育研究の強力なセンターを作ることができると の考えで設立したもので,同時に世界の先進国にまだ例のない「途上国出身の研究者による途上国の 人々のための研究センター」を作りたいという監訳者の「夢」を込めたものでした。時間はかかるで しょうが,資金面の問題を少しでも解決しつつ実質化したいと考えています。  この本の翻訳を思い立ったのも,こうした事情が背景にあります。つまり,1つは,グローバルヘ ルスの最新の現状とそれを巡って世界で起きている対拠戦略のダイナミクスを日本に広め,遅ればせ ながらグローバルヘルスの波を起こす一石としたいと思ったこと,もう1つはささやかながらその印 税をグローバルヘルスセンター設立の足しにしたいと思ったことです。そして,折角なら,これを若 い人々のグローバルヘルス教育の機会にもしたいとも思いました。それが翻訳者に多くの大学院生や 学部生,そして高校生まで加えた理由です。高校生はグローバルヘルス学際融合ユニット(GHIU)が創設以来高大連携活動をしている高槻高等学校に呼び掛けたところ参加が得られました。大学院生, 学部生,高校生による翻訳プロジェクトは,恐らくわが国で初めての試みであったと思います。  終わって見れば,翻訳の分量は,実に73万5000字に及び,監訳者がこれまで翻訳してきた教科書 の優に2倍にはなる分量で,翻訳にも監訳にも想像以上の苦労と時間と身体的負担が伴いました。最 終的には,編訳者の力も借りて,英語表現の意味の正確性を期し,監訳の段階では自然な日本語にな るよう,また論理がスムースとなるように徹底して見直しました。また,この分野では,やたらと略 語が使われることが多く,読み続けることを難しくすることすらありますが,本書では読者が略語で 迷うことがないように,各ページに,略語に対応する日本語もしくはフルスペルの原語を付記するよ うにしました。また,「木原ライブラリ」の他の本と同じように,重要な用語には原語を付記して,英 語の単語も同時に学習できるようにしました。こうした努力が少しでも読者の皆さんの理解に役立つ ことを願っています。  さて,前文を読んでいただければお分かりのように,第1版から第3版に至る原著の執筆は,多数 (延べ151人)の同僚,学生などが関わった大規模なプロジェクトとして取り組まれたものであり,疾 患や疾病負荷の動向,グローバルヘルスに関わる各種の組織の活動,世界の様々な国や組織・団体の 活動の事例,グローバルヘルスをめぐる政治や資金調達のダイナミクスなど,膨大で複雑かつダイナ ミックなグローバルヘルスをめぐる情報が,全体としてよくまとめられています。本書から私たちが 学べることは数多くあります。なかでも,①人口転換や疫学転換が進む低・中所得国は,2重負荷, 3重負荷という複雑な健康問題に直面し,現在の脆弱な保健医療システムのままでは,その負荷に耐 えきれないような危機的な状況が生じかねないこと,②新興・再興感染症の脅威は今後ますます高ま るが,それによって先進国を含めて甚大な経済的損失が生じる恐れがあること,③健康問題は,社会 的決定要因 (ジェンダー,教育,貧困など)によって,極めて不平等に生じていること,④21世紀に 入って,ミレニアム開発目標の影響で,多くの低・中所得国の政府,国際援助組織,NGO,市民社 会の努力によって,母子保健や感染症には重要な前進が見られたこと,⑤21世紀はパートナーシッ プの時代であり,グローバルファンド,Gavi,ゲイツ財団などの新たなアクターの登場とともに, 公的セクターとNGOあるいは民間セクターの多様なパートナーシップが生まれ,グローバルヘルス に新たな可能性が次々と生まれていることは,ぜひ学んでいただきたいと思います。グローバルヘル スについては類書も多数出版されていますが,最も新しい情報が掲載されていること,分量の手ごろ さ,米国公衆衛生協会という安定した組織からのシリーズ出版で今後も改訂が続けられるであろうこ と,カラー印刷であること,そもそも学生の教科書として作成されていることなど,「教科書」として の適切さを勘案して本書を選択することにしました。本書を読んで,少しでもグローバルヘルスに興 味を持ち,将来国際的に活躍する人材が生まれることを願ってやみません。  最後に,本書の出版を機会に,京都大学グローバルヘルス学際融合ユニット(GHIU)では,2018年 度から,広範な分野の学生や社会人を対象としたグローバルヘルスの研修コースを設けるとともに, 教育・研究活動を担うセンターを設立するために,「グローバルヘルス教育研究基金」を設ける予定に しています。興味のある方は,kihara.masahiro.4n@kyoto-u.ac.jpまでご連絡いただければ幸いです。
 平成29年8月16日 五山の送り火の日に
木原 正博  木原 雅子 

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