人工呼吸器の本 エッセンス

まずはこれだけ、勘所
初期設定のオキテを知ればこわくない
人工呼吸管理における人工呼吸器の使い方について、具体的かつ実践的にまとめられたガイドブック。まるで優れた指導医に教えてもらっているように親しみやすく、ポイントがわかりやすい。「エッセンス」編は初期設定から基本的な管理方法までの最低限の必要事項を解説。ICUに関わる医師や呼吸器科医、研修医、また呼吸療法士を目指す看護師・コメディカルなど、人工呼吸管理に携わる医療者必読。
¥2,200 税込
原著タイトル
The Ventilator Book
訳:田中 竜馬 Pulmonary & Critical Care Medicine, Medical Director, Intensive Care Unit, Intermountain LDS Hospital, Utah. USA
ISBN
978-4-89592-908-0
判型/ページ数/図・写真
A5変 頁128 図8
刊行年月
2018/2/21
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人工呼吸器の考え方
How to Guide
chapter 1 初期設定
chapter 2 設定調節
chapter 3 トラブルシューティング
chapter 4 人工呼吸器の十一戒

Owner's Manual
chapter 5 急性呼吸不全
chapter 6 アシスト/コントロール換気
chapter 7 同期式間欠的強制換気
chapter 8 プレッシャーサポート換気
chapter 9 PEEPとCPAP
chapter 10 トリガーと流量
chapter 11 高頻度振動換気
chapter 12 気道圧開放換気
chapter 13 人工呼吸器離脱
chapter 14 遷延性呼吸不全

付録:使える知識
参考文献
索引

訳者序文
初めて触るとき,人工呼吸器ってなんだか得体が知れなくておっかないですよね。人工呼吸器についてしっかり勉強したくても,次から次へと重症患者さんが来たりトラブルが起こったりして,そんなヒマがないままなんとなく過ごしたりしていないですか? いきなり専門的でややこしいことを言われても困るけど,必要なことは(短時間で)きっちり知っておきたい,という全世界共通の悩みに答えるために,サウスカロライナ大学集中治療科のWilliam Owens先生が書かれたのがこの本です。
本書の前半部分はハウツーガイドです。すぐに初期設定をしなければならないとき,血液ガスの結果を見て設定調節をしなければならないとき,トラブルに遭遇したときにすぐ使える重要なポイントが簡潔にまとめられています。とりあえずここを読めば緊急事態を乗り切れます。
急場をしのいでちょっと落ち着いたあと,根拠を理解して自分で考えられるようになりたい,となると今度は後半部分を読みます。人工呼吸器の各モードや設定,HFOVやAPRVの使い方,離脱の方法や離脱できないときの考え方について,臨床に役立つ実践的な内容が記載されています。それぞれのチャプターは「15~20分で読めるようにした」というだけあって,非常に短くまとまっていますが,だからといって情報が少ないわけではありません。簡潔な中にも人工呼吸管理で知っておくべき生理学についてきっちりみっちり解説しているというスゴ本なのです。
すでに本書を購入して下さった方,あるいは書店でちょっと手に取ってみてこの前書きをご覧の方は,まず「人工呼吸器の十一戒」を読んでみて下さい。

「人工呼吸器は単なる補助の手段であり,それ自体が病気をよくすることはない。」
「完璧な血液ガスなどというのは想像上の生き物であり,追い求めるべきではない。」

といった,人工呼吸管理の根底にある考え方が11項目にまとまっています。人工呼吸器は,どんなに上手く使っても,それ自体が患者さんの肺を良くするわけではありません。自力で呼吸を維持できないときの手助けであり,逆に使い方次第では肺を悪くすることもある必要悪なのです。と考えると,血液ガスを正常にしようと無理な設定にしたりせず,自力で呼吸できるようになれば(SBTで判定して)すぐに人工呼吸器から離脱する,というのもよくわかります。
本書を読んで,人工呼吸器についてはだいぶわかってきた,ちょっと自信がついた,もっと学びたい,という方はどうすれば良いでしょう?ご安心下さい。そういう方のためにOwens先生は続編の“The Advanced Ventilator Book”も用意して下さっています。ぜひそちらもどうぞ。
それでは,人工呼吸器についてさくっと簡潔に,それでいて使える知識を身につけてみましょう。

2018年1月
田中竜馬


はじめに
午前3:30の集中治療室。救急室から患者が入室してきた。若い男性,突然発症の発熱,悪寒戦慄,呼吸困難。救急室で気管挿管されたが,人工呼吸器のアラームがイライラするくらい頻回に鳴っている。胸部X線の所見はひどく悪く,肺野全体に浸潤影が広がっている。ICUの呼吸療法士がこっちを見て尋ねる。患者が到着してからいつ聞かれるかとビクビクしていた問いだ。「先生,人工呼吸器設定はどうしますか?」
ICUで過ごす時間の長い我々にとってこれはおなじみの状況で,研修医なら研修中に必ず一度は経験する。人工呼吸器はおっかない。独自の(必ずしも理屈に合わない)用語があり,生命維持装置であり,間違って使うと重大な結果につながる。しかも,人工呼吸器を使う医療者たちは,人工呼吸器がやっていることをよくわからない言葉で話す。これでは非常に優秀な研修医や医学生であっても混乱してしまう。
さらに悪いことに,忙しい医師が人工呼吸器をどう調節すべきかさっと調べようとしても,実用的な資料はあまりない。勘違いしないでほしいのだが,人工呼吸器についての優れた教科書はいくらでもある。そして時間さえあれば,これらの教科書は大いに読む価値がある。問題は「時間があれば」という部分である。図書館で午後いっぱい過ごす時間があるのなら,従圧式換気の利点と欠点について本を100ページ読むのもよいだろう。しかし,忙しいICUで患者を診ているときには,これはまったく非現実的である。こんなときに必要なのはハウツーガイドで,だから私はこの本を書くことにした。私1人で書いているので,書いてあることにはもちろんバイアスがある。まあ,あまりなければよいと願ってはいるが。ともかく,本書に書いた方法が完璧に客観的で事実にのみ基づいている,などと考えるのは妄想が過ぎるというものだ。医療に携わる者は誰でもそうだが,私の診療は私自身の逸話や経験で成り立っている。
このユーザーマニュアルの前半は,すばやく正しい決断を下す手助けをするためのものである。臨床での問題についてそれぞれの対処法を示していて,時間がないときに使えるようになっている。前半の締めくくりとして,「人工呼吸器の十一戒」を載せてある。
後半は人工呼吸器について説明するのを目的としている。それぞれのchapterは,15~20分以内に読めるよう短くしてある。ここを読めば,人工呼吸器用語を理解できるようになり,人工呼吸器がどのように機能するのかとか,集中治療医はどのような根拠に基づいて診療しているのかといった理屈を理解できるようになる。
ここで1つ言っておかなければならないことがある。本書にはすばらしいアドバイスが溢れるほどたくさん載っているが,実際の患者にすべてぴったり当てはまるわけではない。「患者は医学書を読まない」とスタッフ医師から聞いたことがあるだろうか?それは正しい。どの患者にもその患者独自の治療法が必要になる。あなたは信じないかもしれないが,弁護士にそう言われたから書いているわけではなく,これは「常識」ってやつだ。

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