50のCommon Diseaseから学ぶ診断推論 - 外来での思考プロセスとマネジメント -

診断推論は“一代限りの名人芸”にあらず。“思考プロセス”を学びスキルアップ!
見逃してはいけない疾患を含め外来診療の基本となる50症例(愁訴・症候)を通して、実践に即した臨床推論の組み立て方を学ぶ書。各章原則見開き2頁での簡明な記述。症例ごとに、病歴聴取の過程でいかに情報を的確に絞り込み、適切な身体診察を選択し、診断・マネジメントにつなげるか、提示されたその局面ごとの判断ポイントを理解することで、ジェネラリストとしての思考プロセスが身につく。医学生・研修医など初学者のみならず、ベテランの復習書としても最適。
¥3,520 税込
原著タイトル
General Practice Cases at a Glance
監訳: 鋪野紀好 千葉大学医学部附属病院総合診療科特任助教 生坂政臣 千葉大学医学部附属病院総合診療科教授
ISBN
978-4-8157-0124-6
判型/ページ数/図・写真
A4変 頁128 図25・写真16
刊行年月
2018/6/13
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Part 1 Introduction
1 診療の基本
2 診断に到達するための臨床推論

Part 2 Cases
1 うちの赤ちゃんが高熱なの!
2 花粉症の薬が欲しいです(痩せた若年女性の診療)
3 咳がどうにもなりません
4 膝がひどい状態です
5 片頭痛があるんです
6 インフルエンザの予防接種を受けに来ました(高齢者の定期受診)
7 この子には手を焼いています
8 肩に違和感があります
9 こんなに体重が増えてるなんて信じられません
10 肛門が痛いんです
11 また妊娠しました
12 赤ちゃんのお腹の調子が悪いんです
13 すごく耳が痛くて
14 お酒のことが心配なんです
15 うちの子はいつも泣いています
16 睡眠薬を処方してください
17 目が痛みます
18 前立腺癌の検査を受けたいです
19 こんな痛み,これ以上耐えられません
20 目が充血してしまいました
21 ニキビにはもううんざりです
22 血液検査の結果を受け取りに来ました
23 ホルモン補充療法のことで先生に相談があります
24 ちょっとおりものが
25 何だか疲れて頭もはっきりしないんです
26 血圧を診てもらえますか?
27 妊娠したみたいです
28 息切れがします
29 うちの子はずっと咳をしています
30 記憶力に不安があります
31 胸が痛いんです
32 ひどい胃痙攣が続いています
33 大きくなっていくほくろが心配です
34 体重が減ったみたいです
35 勃起について不安があります
36 癌が悪くなっているに違いない
37 最近ひどく取り乱しています
38 うちの子は2日前からお腹を痛がっているんです
39 休みの日に生理が来ないようにしたいです
40 足が痛いんです
41 下痢がひどいんです
42 先週,看護師さんに糖尿病の検査をしていただいて,今日は結果を聞きに来ました
43 肌がすごく痒いんです
44 とても気が滅入るのですが
45 胃が焼け付くような感じがして本当につらいです
46 私の乳癌のリスクについて相談があります
47 背中がとても痛いんです
48 抗菌薬が欲しいです(咽頭痛のマネジメント)
49 常に疲れています
50 このしこりが心配です(精巣の腫瘤)

私が初めて総合診療と出会ったのは,千葉大学医学部での臨床実習であり,センセーショナルな経験であった。そこには病歴聴取と身体診察だけで診断の核心に迫っていく診療があり,原因不明として長年苛まれた症状に,次々にと診断という名前がついていくのを目の当たりにした。患者さんからは安堵の表情がこぼれ落ちる。まるで「シャーロック・ホームズ」をみているかの如くドラマチックな診療だった。診断推論は,自分が生涯をかけて探求し研鑽するべきスキルだと思った。
 診断推論は,ややもすれば“一代限りの名人芸”と揶揄されることがある。だが,決してそうではないことを強調したい。診断推論には,技術や方略があるのだ。千葉大学総合診療科の代名詞とも言える「外来診断カンファレンス」では,ノービスからエキスパートまで診断プロセスが共有される。そこにはリアルタイムに実臨床の流れに沿ってディスカッションが行われ,次々に診断の暗黙知が形式知へ昇華されていくのだ。
 包括医療費支払い制度(DPC)が導入され,原因精査は可能な限り外来で行う時代へとシフトしつつあり,診断の見当がつくまでは外来でのワークアップが期待される。外来診療のウエイトはこれまで以上に大きくなる。留意すべきは,外来診療では病棟診療とは異なる診断の思考プロセスをとる必要性である。ただ残念ながら日本では外来研修を受ける機会は希少で,各専門領域に進んだ後に独学を迫られるのが現状である。独学では自身の診断推論の曖昧さに対する確証を得難く,マネジメントの方向性が定まりにくいという問題がある。
 本書は,このような診断推論の技術や方略を言語化したものである。総合診療医の視点から外来診療に必要となる思考プロセスをリアルタイムに学習できるスタイルとなっている。本書で扱われる症例の多くは,高度な診断機器に頼らずに診断の核心に迫っていく。病歴聴取を通じて情報を的確に絞り込み,適切な身体診察を選択し,診断・マネジメントに至る思考プロセ
スが明らかにされる。本書を通じて,読者は診断の暗黙知を丁寧に言語化することができるとともに,適切な外来マネジメントを症例ベースで体系的に学習できる。症例もコモンディジーズから見逃してはいけない疾患まで多様な疾患をピックアップしている。本書は前述の問題を解決し,総合診療医を目指す学生・研修医から一般外来を担当する医師まで,外来診療スキル
の向上に必ずや役立つと考える。外来診療で遭遇する多様な愁訴に対応するためにも,本書の内容はいずれも知っておくべきである。ぜひ本書を通じて,時間や医療資源が限られる一般外来での思考プロセスやマネジメントを,総合診療の幅広さや診断推論の醍醐味とともに体感していただきたい。
 日本語版の出版にあたり,各章の末尾に最終診断名を,一部の章タイトルに副題を加えるなど,細部まで工夫した。これにより,患者の主訴を医学用語に変換し,診断に至る思考をさらに深めることが期待される。
 最後に,メディカル・サイエンス・インターナショナルの長沢雅氏の細やかで丁寧な編集作業がなければ,本書は成立しなかった。本書の監訳を受けて頂いた我が師である生坂政臣先生,翻訳を担当頂いた先輩・後輩・友人,そして影ながら支えてくれる妻へ,この場を借りて感謝の気持ちをお伝えしたい。

2018 年春
千葉大学大学院医学研究院診断推論学
千葉大学医学部附属病院総合診療科 後期研修プログラム責任者
千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター 特任助教
鋪野紀好



本書は英国のgeneral practice(総合診療)を舞台に,小児から高齢者,コモンディジーズから見逃してはいけない疾患まで総合診療医が対応すべき50 の症例を供覧している。ただ,類書と大きく異なるのは,プライマリ・ケアの現場の診療を忠実に再現している点である。細分化された臓器別診療とは異なり,総合診療を受診する患者の主訴は曖昧で,問題の所在が臓器にあるのか心にあるのか,はたまた家庭・学校・職場なのかは診察してみないと分からない。患者の愁訴からは想像もできない最終診断にたどり着くことも日常茶飯事であり,したがって本書でもそのような症例が含まれていることに驚かないで頂きたい。それが総合診療の現実であり,複雑で混沌とした問題を解決しようとする姿勢とスキルこそが総合診療医と臓器専門医の決定的な違いとも言える。
 臓器専門医は当該領域の症例を繰り返し経験することによる診断と手技の精度向上をトレーニングの主眼とするが,ケースの振れ幅が大きい総合診療では類似症例の蓄積が難しく,レパートリーの広さや未経験の問題への対処という全く異なる方向での進化が要求される。したがって学習方略は,主訴から診断・治療へのパターン認識ではなく,病歴や身体診察の各段階での考え方の研鑽が中心となる。
 本書は診察の様々な場面で設けられた問いに答えていくことで,徐々に総合診療医の思考プロセスが身につく仕様になっている。もちろん総合診療の領域でも覚えなければならないことがあり,それらはTip やKey Point として抜き出されているし,身につけるべき診察の基本はIntroduction を読めば確認できる。
 本書が総合診療を目指す学生・研修医ならびに実地医家にとって役立つ一冊になることを願ってやまない。

2018 年4 月
千葉大学大学院医学研究院診断推論学 教授
千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター センター長
千葉大学医学部附属病院総合診療科 科長
千葉大学医学部附属病院 副病院長
生坂 政臣

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