医学的測定尺度の理論と応用 - 妥当性、信頼性からG理論、項目反応理論まで -

「測定尺度」を制する者は、医学的研究を制する!
ロングセラー“医学的研究”シリーズ、第8弾。医学的研究や統計に多用される測定尺度の理論と応用について、信頼性(reliability)と妥当性(validity)の観点に基づき包括的かつ系統的にまとめたオンリーワンテキスト日本語版。尺度の基本概念から新しい方法論、調査の実施手法など、理論的文脈を踏まえてわかりやすく解説。質問票の作成や各種調査の裏付けとなる知識を提供する。
¥5,060 税込
原著タイトル
Health Measurement Scales: A practical guide to their development and use, 5th Edition
訳: 木原雅子 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野 准教授 / 国連合同エイズ計画共同センター長 加治正行 静岡市保健所長 木原正博 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野 教授
ISBN
978-4-89592-867-0
判型/ページ数/図・写真
B5 頁408 図43
刊行年月
2016/9/28
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第1章 はじめに(医学的測定尺度) 
第2章 基本概念
第3章 項目の開発
第4章 尺度への回答の形式
第5章 質問項目の選定
第6章 回答のバイアス
第7章 質問項目から尺度へ
第8章 信頼性
第9章 一般化可能性理論
第10章 妥当性
第11章 変化の測定
第12章 項目反応理論
第13章 調査の実施方法
第14章 倫理的配慮
第15章 測定結果の報告
付録A 尺度の検索法
付録B 因子分析の(非常に)簡単な紹介

原著序文
第5 版とこれまでの版との一番大きな違いは,本書の表紙を見れば明らかです。つまり,John Cairney が新たに著者陣に加わったことです。Streiner がもう3 回も定年退職し,Normanにも最初の定年退職の時期が近いことを考えれば,これはある意味自然の成り行きと言えることかも知れません。本書を最初に出版したとき,これほど好評を博するとは思いもよらず,それを見て,私たちは,この分野の進歩を取り入れながら今後も改訂を続けていきたいと思うようになり,しかし,その一方で,Samuel Goldwyn(米映画界の著名人)が言ったように,「もう引退させてくれ」という気持ちもありました。その最終的な解決策が,John に参加してもらうことだったのです。
マクマスター大学の健康科学部が45 年前に創設されたとき,全米に先駆けて,問題解決型教育problem-based learning(PBL)という,小グループ学習を特徴とする教育方法が導入されました。PBL では,ノンエキスパートチューターによって,講義ではなく,学生の自主学習を手助けするという形で教育が行われます。チューターには,その専門分野の知識は要求されず,Streiner も,臨床心理士でありながら,心臓病学のチューターを仰せつかることになったのです(もちろん,週末の一夜漬けで心臓の位置ぐらいはわかるようになりましたが)。私たちは,その最初から関わり,学習環境の整備に貢献しましたが(実際,Norman は,最近まで教育研究開発プログラムの副部長を務めていました),ノンエキスパートチューターというものの意義自体にどうも納得がいかず,学習指導の効果を上げるためには,やはり,その分野の専門知識が必要だと思っていました。そのことは,しばらくしてから,ようやく関係者にも理解されるようになり,私たちも,やっと,そうした不毛な時間から解放されたのでした。
それから,私たちは,もっと意味のある仕事,つまり,測定手法に関する教育という,もっと自分の専門性を生かせる仕事に携われるようになりました。そしてその後,何十年にもわたって,私たちは,測定の理論や尺度の開発方法を教えてきましたが,この分野を一緒に教えられる人はほとんどおらず,その稀な例外が,John だったのです。彼は,独特な(ときに“非常に” 独特な)講義で,教育を分担してくれるようになり,今では,彼がコースの責任者となっています。このように,よき後継者に恵まれたのは幸いでした。
第5版では,全体にわたって,新しい研究の成果を取り入れただけではなく,新たな追加や,大幅な修正を随所に行っています。特に大きな変化は,ロードマップを加えたことですが,これは,読者からの要望に基づくもので,尺度開発の際の道案内や,どのような情報が必要かを判断する上でのガイドとなることを期待して作成したものです。第9 章「一般化可能性理論generalizability theory」では,私たちが開発したアプローチと他のアプローチを調和させ,この方法を,層化デザイン,非均衡デザインなど,もっと複雑なデザインに拡張させるために,かなり大幅な改訂を行いました。それに伴い,これまでの版にあった,いくつかのわかりづらかったセクションは削除しました。第12 章「項目反応理論」では,項目のキャリブレ―ションに関する理論や手法に関する記述を大幅に改訂し,倫理に関する章も,尺度開発や計量心理学的特性の検討に伴って生じるさらに多くの問題を含めるように加筆し,さらに,第13 章「調査の実施方法」では,ウェブやスマートフォン,携帯電話など,最近出現した新しいIT 技術を使った調査について,その利点と限界を追記しました。また,この第5 版では,第11 章「変化の測定」を新たに設けて,「信頼変化指標reliable change index」と呼ばれる,患者が臨床的,あるいは統計学的に有意に改善したことをどのように判定するか,その方法について解説しました。
本書の改訂に当たっては,読者からのコメントが非常に役に立ちました。本書についても,ぜひご意見を下記にお寄せくださるようお願いします。
streiner@mcmaster.ca
norman@mcmaster.ca
cairnej@mcmaster.ca.
D.L.S.
G.R.N.
J.C.

訳者序文
以前に比べれば,医学的研究の分野でも,尺度が使われる機会がはるかに多くなってきました。しかし,計量心理学の分野とは異なり,医学的研究の分野では,尺度の作り方や理論が体系だって教えられることは,私たちの知る限り,これまではほとんどなく,かなり問題のある使われ方がされている例が少なくありません。例えば,意味のわからない直訳の尺度が使われる,既存の尺度の一部だけが抜粋して使われる,海外での信頼性,妥当性がそのまま日本でも該当するという前提で使われる,と言った具合です。
こうした背景には,質問票が,「アンケート」という,いかにも“軽い” 言葉で呼ばれ,特別に習う必要もない簡単なことと誤解されてきたことがその背景にあります。しかし,質問票は,しばしば,「instrument」と表現されるように,血圧計やCT スキャンなどと同じく,科学的「測定手段」の1 つであり,本来,それなりの高い精度が求められるものなのです。血圧計の精度が悪ければ,誤診につながるように,粗雑な質問票(尺度)では,目的とする現象や概念をうまく捉えられず,せっかくの研究が無意味化する恐れがあります。考えてみれば至極当然のことなのですが,この方面での方法論的伝統がまだ浅いわが国の医学的研究の分野では,そうした
認識が十分に浸透していないのが現状です。
それでも,最近では,医学的研究の分野でも,信頼性reliability と妥当性validity という用語が定着し,少なくとも,表面妥当性,内容妥当性,クロンバックのα,再テスト信頼性といった用語はよく見かけるようになってきました。これは1 つの進歩として喜ばしいことです。疫学の教科書にも,これらを含め様々なタイプの妥当性や信頼性が紹介されるようになっています。しかし,残念ながら,これらの教科書の記述は羅列的にとどまり,その背後にある理論的文脈を知ることができませんでした。私たちにとっては,それが長年のジレンマの1 つであり,一度系統的に勉強したいと思っていました。
本書に出会ったのは,この第5 版が初めてではありません。実は初版から研究の参考にしてきた教科書の1 つでした。最初は薄く,それほど翻訳の必要性を感じる内容ではありませんでしたが,その後版を重ねるごとに,包括的になって分厚くなり,第4 版以降は,尺度の妥当性と信頼性に関して,少なくとも医学分野の教科書としては,類書にない水準に達したと思われます。著者らは,妥当性や信頼性を,辞書のように,切れ切れに羅列的に説明するのではなく,できる限り系統的に説明しようと試みています。信頼性と妥当性のつながり,信頼性の包括的理論としての一般化可能性理論(G理論),妥当性における「妥当性の検証validation」という概念の導入,質問項目単位での測定の理論化である項目反応理論の導入などは,新しい方法の紹介というだけにとどまらず,妥当性や信頼性の系統的説明の必要性からと思われ,その目論見は,大枠では成功していると思われました。
本書からは,尺度の妥当性と信頼性の理論と応用について,多くのことを学ぶことができます。その中で,最も重要で,著者らが繰り返し強調していることは,妥当性と信頼性はいずれも「相対的」な概念であり尺度が用いられる状況や対象が変化すれば妥当性も信頼性も変わってしまうという事実です。これは,他の論文で妥当性や信頼性が確認されているからと,既存の尺度を無頓着に流用する姿勢に警鐘を鳴らしたものと思われます。そして,各章の記述は,尺度の理論と応用に関して,それぞれ,類書にない重要な学びを提供してくれます。尺度(質問項目,選択肢)の作成や選択に必要な実用的で理論的な知識(第1 ~ 5章),回答のバイア
スに関する系統的な知識(第6章),スコア化とそれに基づく判定に関する実際的,理論的問題(第7章),信頼性とその包括的理論である一般化可能性理論の概要(第8,9章),妥当性における構成概念妥当性の重要性(第10章),変化の測定における重要な理論的問題(第11章),古典的尺度理論の限界を克服するために開発された項目反応理論の概要(第12章),面接法から,最近急速に発達しつつあるインターネットを用いる方法に至る実施方法の利点と欠点(第13章),測定にまつわる倫理問題(14章),そして,妥当性,信頼性に関する研究報告の標準化の
問題(第15章)などです。私たちにとって,特に印象深かったのは,カッパ係数と級内相関の連続性,統計学的検定と信頼性の間の「クロンバックのパラドックス」(第9 章)と,「変化の測定」の介入前値における平均値への回帰現象の影響や,暗黙的変化理論やレスポンスシフトという理論的問題(第11 章),階層的回帰分析(第11 章)などですが,読者の方々にも,本書から,多くのことを,学んでいただきたいと思います。
しかし,本書の翻訳はかなりの苦行でした。結局翻訳開始から1 年を要し,これまで10 冊近くの翻訳を行ってきた私たちにとっては異例の長さとなりました。その理由は,多少の数式が含まれ,難解だったからですが,翻訳が終わって見れば,内容自体が難解というよりも,原書に多かった数式の誤植と,おそらく分担執筆のためと思われる,数式の記載形式の不統一などが主な原因であったと思います。これらについては,翻訳版では,すべて,引用文献にもあたりながら修正しましたが,かなりの時間がかかり,1 つの章に1 カ月以上かかったこともあります。こうした努力の結果,翻訳者としての多少の自負を許していただければ,翻訳版は,原著を読むよりも,わかりやすく読みやすい内容と表現になっていると思います。ただ,ごく
一部ですが,時間的制約のために,訳としては,原著に正確ではあるものの,文脈的にこなれ切れていない部分があり,それらについては,後日,さらに検討したいと思っています。
本書は,筆者らが,メディカル・サイエンス・インターナショナルから出版し続けている,シリーズ本の第8 冊目(改版を含めれば11 冊目)となります。これまで,海外の特に優れた教科書を選んで,「医学的研究のデザイン」(2014年),「疫学」(2010年),「医学的研究のための多変量解析」(2008年),「医学的介入の研究デザインと統計」(2013年),「疫学と人類学」(2012年),「現代の医学的研究方法」(2012年),「国際誌にアクセプトされる医学論文」(2000 年)を出版してきましたが,ここには,独学で研究方法を学ぶ人々を少しでも支援したいという思いがあります。
かつて,わが国の疫学研究には,海外の公衆衛生大学院で疫学や統計学を学んできた研究者がいる,いくつかの大学のお家芸のような時代があり,その外部にいる私たちのような人間は,独学する以外なく,その習得は簡単ではありませんでした。独学するならと一念発起して,まだ一地方研究所の研究員であった時代に,仲間を募って,「医学的研究のデザイン」の初版を1997年に翻訳発行したところ,大きな反響があり,その後1 つひとつ,優れた教科書を選んでは,翻訳し続けてきました。学生の間では,いつしか「木原シリーズ」と呼ばれるようになりました。そのシリーズにまた優れた1 冊を加えることができたことを嬉しく思います。
私たちのこうしたささやかな仕事が,わが国の医学的研究の方法論の普及と研究の発展に少しでも貢献できれば,訳者としてこれに過ぎる喜びはありません。
2016年8月26日
木原雅子
加治正行
木原正博

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