スタンフォード神経生物学

神経科学の新しい教科書が誕生
具体的な研究手法に触れながら、全体像が把握できる

生物学的、医学的側面に焦点を定め、神経科学では主流となった分子レベルの研究に重点を置き解説した教科書。単なる知識の羅列ではなく、「知識がどのように得られ、原理がどのように導き出されたのか」がわかるよう、筋道立て丁寧に解説。神経科学分野の第一線で活躍するLiqun Luo博士が、スタンフォード大学での18年間にわたる神経生物学の授業をもとに執筆した単著。首尾一貫し、読者を惹きつける工夫を怠らない記述は、わかりやすく面白い。初学者から専門研究者まで必読必備の一冊。

¥13,200 税込
原著タイトル
Principles of Neurobiology
監訳: 柚﨑通介 慶應義塾大学医学部生理学教室 教授 岡部繁男 東京大学大学院医学系研究科神経細胞生物学分野 教授
ISBN
978-4-89592-888-5
判型/ページ数/図・写真
A4変 頁732 図612
刊行年月
2017/8/9
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第1章 神経生物学への招待
第2章 神経細胞内の信号伝達
第3章 シナプスを介したシグナル伝達
第4章 視覚
第5章 視覚系神経回路の配線
第6章 嗅覚,味覚,聴覚,体性感覚
第7章 神経系の回路形成
第8章 運動系と制御系
第9章 性行動
第10章 記憶,学習,シナプス可塑性
第11章 脳の疾患
第12章 神経系の進化
第13章 研究の手法

日本語版監訳者の序
神経科学は面白い
 神経科学とは,神経系に関する研究を行う自然科学の一分野である。神経科学の究極の目的の1つは,ヒトの脳がいったいどのような基本原理によって形成されて機能するのか,という問いに答えることである。これは,宇宙がどのように成り立っているのか,という問題と同等な,人類にとって根源的な問いといえる。また,近年増加の一途をたどっている自閉症・注意欠乏多動症候群などの発達障害やパーキンソン病,認知症などの神経変性疾患,統合失調症やうつ病などの精神疾患に対する効果的な予防法や治療法を確立するためにも,神経科学の重要性はますます高まっている。
 神経科学の最大の特徴は,カバーすべき領域や技術が生命科学の中でも極めて広範であり,分子生物学,遺伝学,生化学,生理学,薬理学,心理学,コンピュータ科学,統計学,物理学,病理学,臨床医学(神経内科・脳外科・小児科・整形外科・精神科)など多岐にわたる点である。このような学際性に対応するために米国では1969年,日本では1974年に神経科学学会がそれぞれ組織された。引き続いて米国では1976年のKuffler & Nicholls “From Neuron to Brain”,1981年のKandel & Schwartz “Principles of Neural Science” 以来,神経科学の教科書が次々と出版され,多くの大学に神経科学学部が創設された。一方,日本ではこれらのレベルに匹敵する教科書は未だに存在しない。また神経科学学部をもつ大学もなく,神経科学は医学部,薬学部,心理学部,工学部,理学部,情報学部などさまざまな学部に分かれて教育されているのが現状であり,日本人の初学者にとっては大きな ハンディキャップがある。私たちが本書を翻訳しようとした最大の動機はここにある。本書を通じて神経科学分野に進もうとする日本人学生が一人でも増えれば,翻訳者たちにとって望外の喜びである。
 教科書として,本書がもつ大きな特徴は2つある。まず何より面白い。教科書は,しばしば事実の羅列になりがちである。本書では,どのようにして個々の知見を得ることがで きたか,また得られた知見を総合することによってどのような原理を見いだすことができるか,といった点に重点が置かれている。ほとんどの章において,まず興味深いエピソードや疑問点が読者に提示される。引き続いて,この疑問点を解決するためにどのように問題点を整理したり,モデル動物を用いた実験が行われたかが紹介される。例えば,第5章では,脳には1,000億個のニューロンが,それぞれ1,000以上ものシナプスを整然と形成することによって神経回路が形成されていることが紹介される。しかし2万個しかない遺伝子が,いったいどのような戦略によってこのような課題を達成しているのだろうか?著者は,ハエやマウスの視覚経路や嗅覚経路について判明してきた実験結果を次々と解説しながら,第7章にてこの問いに対する一般原理を提唱する。
 本書の2つめの特徴は,これだけ広範な範囲を扱う神経科学の教科書としては稀有なことであるが,単独著者により執筆されたことである。そのために各章の記載が見事に連動し,全体としての一貫性が極めて高い教科書となっている。過去18年間にわたってスタンフォード大学で著者が行ってきた授業をもとにしているとはいえ,現役のトップ神経科学研究者の一人である著者が,多忙の中でこれほどの教科書を書き上げたことに心から敬服する。
 本書の各章の翻訳はそれぞれの分野の第一線で活躍している研究者の熱意と努力によって達成された。関係各位に深く感謝する次第である。近年の概念的・技術的進歩によって,神経科学における発見のスピードは加速し続けている。しかし「根源的な問い」についてのわれわれの理解はまだまだ満足にほど遠く,見通しすらついていない。是非,多くの若手研究者がこの刺激的な分野に参入してくれることを期待する。
2017年7月 柚﨑通介 岡部繁男

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