ホワイトライオンも追え!

“まれ”な症候の鑑別診断100選
銀色の便、耳たぶのシワ、フライパン加熱後の呼吸困難など、100のまれな疾患・症候を、クリニカルパールや症候リスト、周辺/類似疾患の鑑別疾患リストとともに解説。米国のZebra CardsTMから着想を得て、部位別、色別、食事・薬剤摂取関連、その他に分けて、内容を独自に書き起こした。見逃しを防ぎ、よりスムーズな診断を手助けする日本の「ホワイトライオン」がここに誕生。
¥3,300 税込
著者
監修: 志水太郎 獨協医科大学総合診療医学主任教授 / 獨協医科大学病院総合診療科診療部長 原田拓 昭和大学江東豊洲病院総合診療科 / 獨協医科大学病院総合診療科スタッフ
ISBN
978-4-8157-0159-8
判型/ページ数/図・写真
A5 頁292 図4・写真3
刊行年月
2019/4/24
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Part 1 部位別
1 大人の大泉門
2 睫毛が長い
3 睫毛が抜ける
4 血の涙
5 黄視
6 咳嗽,嘔吐後に出る眼窩周囲 紫斑(パンダの目徴候)
7 両側のまぶたが腫れて熱が出る
8 嗅覚過敏
9 重度の治療抵抗性の鼻部痒感
10 耳たぶのシワ
11 耳が赤くて痛い
12 外耳道の骨隆起
 コラム:サーファーゆえに生じた (?)疾患
13 外耳道後壁の感覚過敏
14 舌が鼻につく
15 巨舌
16 舌が焼けるように痛い
17 舌に亀裂がある
18 黒い舌
19 歯肉の青紫色のライン
20 再発性の口腔顔面腫脹の鑑別
21 オレンジ色の咽頭
22 ガムを噛むとあごが痛い
23 片側のあごのしびれ
24 舌と一緒に動く頸部腫瘤
25 首を曲げると電撃痛が全身に走る
26 頸部回旋で後頭部痛と舌の半 分がしびれる
27 黒い腋窩
28 成人の片側女性化乳房
29 乳房インプラント術後の乳房のしこり
30 下気道以外からの赤い痰
31 フライパン加熱後の呼吸困難
32 臥位で改善する呼吸困難
33 喀石
34 胸水が黒い!
35 ペースメーカー挿入患者の突然のショック
36 動悸後の多尿
37 両側の腋窩~臍まで広がる静脈拡張
38 臍の結節
39 腋窩のそばかす病変
40 毎月痛む臍
 コラム:臍部以外の稀少部位子宮内膜症
41 臍の周りのダークブルーの斑点
42 掻爬痕のみの背部の難治性痒
43 咳をすると足が痛い
44 灼熱感を伴う足の発赤と疼痛
45 起立時の足の痒感
46 歩くと痛いが走るのは問題ない
47 皮疹のない前腕の難治性痒
48 深部静脈血栓症後の同側下肢痛
49 長時間風呂に入ってもしわができない
50 指の皮下出血
51 両足を上げると顔面が赤くなる(Pemberton's sign)
52 足の痛み+足指の不随意運動
53 尿に空気が混じる(気尿症)
54 陰嚢浮腫と左精巣腫大
55 尿を放置すると黒くなる
56 排尿時の動悸と頭痛
57 深部腱反射の弛緩相遅延
58 意識障害下で開眼に抵抗
59 一過性に失調運動が起きる
60 蚊にさされるとひどく腫れる
61 皮膚が黄色い
62 冷たいものを熱く,熱いものを冷たく感じる
63 筋肉が,虫が這うように動く
64 繰り返す横紋筋融解症
65 運動してすぐ筋肉痛が起きるが運動を続けると数分で改善する
66 急に動くと,手足が突っ張っ たり勝手に動いたりする
67 ちょっとした刺激でけいれん
68 血液検体凝固の鑑別
69 動脈血のように輝く静脈血
 コラム:まれな症候の鑑別診断の調べ方

Part 2 色別
70 緑色の尿
71 白色の尿
72 尿バッグの色が紫色に
73 黒色の尿
74 銀色の便
75 緑色の髄液
76 青色の爪
77 黄色の爪
78 黒い爪
79 緑色の爪
 コラム:爪甲剥離症(onycholysis)

Part 3 食事・薬剤摂取
80 居酒屋で若年男性に発症した 急性の筋力低下
81 飲み屋でのショック
82 飲酒後の痛み
 コラム:Hodgkinリンパ腫のまれな症状
83 高蛋白を食べると動けない
84 御飯を食べているのにペラグラになる
85 妊娠時に経験した食欲や味覚変化の再燃
86 食物アレルギーの集団発生

Part 4 その他
87 風呂に入ると頭痛
88 入浴後の痒感(aquagenic pruritus=水原性痒症)
89 風呂に入ると体調が悪くなる (Uhthoff現象)
 コラム:多発性硬化症の奇妙な症状
90 空港近くの発熱
91 一過性に体温が下がる
92 溶接工場でのインフルエンザ様症状
93 同一環境でのインフルエンザ 様症状の同時発生
94 便臭のするげっぷ(曖気)を伴う慢性下痢
95 魚のにおい
96 検診でコレステロールが低いといわれた
97 繰り返す発熱または皮膚炎があり,多関節炎,sicca様症 状,腹痛または下痢などを伴う
98 誘因なしの突然の大量皮下出血
99 髄液中の好酸球増加
100 金属がないのに金属探知機にひっかかる

監修の言葉

外来でも病棟でも,医師はある日,目の前の患者が比較的日常ではお目にかからない,まれな病気で悩んでいるのではないかと思う瞬間に出合う可能性があります。
まれな疾患が「ゼブラ」疾患と呼ばれることは,この本を手にとられた皆様の多くはご存じと思いますが,実際に,“Zebra CardsTM ─ An Aid to Obscure Diagnosis” という,まさにゼブラ(シマウマ)柄の表紙の本があり,自分は2007年の市立堺病院内科後期研修医時代にこの本の存在を知り,「こんな疾患あるんや!」と(覚えたての関西弁で)興奮したのが懐かしい思い出です。“Zebra CardsTM” はカードといいつつ本の体裁を成していて,米国内科学会(American College of Physicians:ACP)では教材として扱われていました。このようなウィットの効いた本の企画をちゃんと認めるところに米国医学界の懐の深さも感じます。この本では200ほどの比較的まれな疾患が各ページ表裏(所見が表,裏が鑑別や解説)で収載されていました。こちらの本自体は現在ほぼ入手不可能ですが,個人的にはこのようなまれな疾患から得られる疾患や症状の多様性と医学の奥深さを広く伝える本が書ければよいな,と長らく思っていました。実際に持ち込み原稿で“The Rare Diseases” というタイトルで本を書き始めた(すでに中断)こともあったり,まれな症状シリーズでreview article を書こうとした時代もあったりしました。しかし,日々の臨床とベッドサイド教育,渡米でのバタバタ,重なる総合診療科の立ち上げ,各種論文や『診断戦略:診断力向上のためのアートとサイエンス』(医学書院)関連の仕事,商業誌などをはじめとするさまざまなアウトプットの陰に“The Rare Diseases” 構想はしばらくお蔵入りになってしまいました。
今から約3年前の2016年に,自分は獨協医科大学に移り,キャリア3 つ目の総合診療科を立ち上げることになりました(獨協医科大学病院総合診療科,略称,獨協総診)。獨協総診ではcommon diseases も市中病院のようにバリエーション豊富に診察する一方で,1970年代まで遡らないと症例報告がみつからないようなまれな事例にも遭遇することがあります(今でも)。ある日の会議で,まれな疾患についてもチームで積極的に共有したほうがよい,と初年度チーム(5人)のなかで意見が一致したことがありました。それならせっかくだから本にしよう,ということで,実働の主幹をその5人の1人,原田拓先生がリードし,自分が監修,そして2017年度までのスタッフメンバーで本書の執筆がスタートしました(このような破天荒な企画をご快諾くださったMEDSiの佐々木由紀子様に心より感謝申し上げます)。また図らずも,志半ばで倒れた“The Rare Diseases” の仇を打ってくれていることに個人的にはこの企画自体にとても感謝しています。
本書は前述の“Zebra CardsTM” に着想を得,さらにその本へのリスペクトから,登場する症候のなかでも特に思い入れのある一部のものについてはそのままテーマをお借りし,読者と共有するために改めて触れさせていただきました。それ以外にも,これまで獨協総診メンバーが実際に経験してきたもの,実際に文献などで触れたもの,またメンバーそれぞれのメンターや仲間から見聞きしたものを合わせて,100の疾患・症候に限定して挙げさせていただきました。本書はいわゆるEURORDIS(Rare Diseases Europe)の取り決めなどに則った稀少疾患の範疇に入るものも入らないものもあります(そもそも網羅することは数として難しく,今回本書から漏れてしまった症候や疾患もまだまだありますが,それはまた次の機会があればご紹介させていただきたいと思います)。どちらかといえば,インパクト勝負の感が強いセレクションになっています(銀色の便,など)。本書の目的としては,今より10年遡ることの「こんな疾患あるんや!」の自分の想いが読者に伝わり,日常臨床で大切な驚き,知的好奇心を通して,日々のやりがい,さらには患者をしっかり診察するモチベーションが上がるようになる,そんな本を目指しています。そして,微細なサインからその本体にズバッと迫る,クリニカルパールが,System 1(直観的診断)の診断力の助けにもなる本になればうれしいです。
本書は,獨協総診としては初となる獨協総診presentsの第1冊目の書籍です。その全体を貫くコンセプトと骨子を原田拓医師が打ち立てました。原田拓医師はその類まれな集中力と筋肉質な仕事量のこなし方で有名で,私たち獨協総診の最初の1年間の立ち上げ期間に強力なリーダーシップを発揮するとともに,5人から成る獨協総診初年度スターティングメンバーの重要な一角を担っていました。本書の執筆活動にもその彼の才能がいかんなく発揮されています。そして,執筆を原田拓医師を含めたメンバーで行いました。それぞれ異能的な才能と個性をもち獨協総診に幅と奥行きをもたせてくれている各スタッフメンバーたちの感性,情報収集力,そして推敲を重ねた執筆の作業がなければ,本書は完成しなかったと思います。志水は監修兼プレイヤーとして,全体のバランス,症候の一部と,主にクリニカルパールの監修・作成に特に力を入れました。クリニカルパールのなかには,そのトピックそのものでなくても,より重要なものを加えた項目もあります。本書のタイトルは『ホワイトライオンも追え!─ゼブラへのリスペクト,そして見逃せない鑑別疾患』としました。類書(というよりオリジナル)には“Zebra CardsTM” があり,また世界的にもこのZebraは臨床教育の現場でまれな疾患の記号として引き合いに出されることが多いと思います。しかしゼブラ自体は動物界でそれほど稀少でもないこと,また,より稀少感を出したかったこともあり,本書では「ゼブラ」をリスペクトしつつも,タイトルは他の動物にしようと考えました。稀少な動物をオンラインでさまざまに探し,そのなかでもビジュアルから8 つを候補に残しました。具体的にはアムールヒョウ,ミツクリザメ,シマテンレック,ブルードラゴン,ホワイトライオン,ハシビロコウ,イッカク,グーティサファイアオーナメンタルタランチュラです。このなかで,グーティサファイアオーナメンタルタランチュラはさすがに名前が長すぎる,ブルードラゴンはファンタジー色が強い,またシマテンレックなどはそもそも生き物なのか機械メーカーの名前なのかわからない,というような理由から消え,最終的にわかりやすいホワイトライオンを採用しました。
タイトルの「追え!」については,稀少疾患を追求する執念に該当する言葉をタイトルに端的に込めたいと思いを巡らせたところ,トム・クランシー原作,1990年にショーン・コネリー主演で映画にもなった「レッド・オクトーバーを追え!」にちなむのがやはりよいと思った次第です。
日常臨床ではまれなものはまれです。ホワイトライオンをみつける執念はそのままに,ちゃんとホワイトライオンのクラスター(鑑別疾患)であるライオンやトラなどありふれたものを追い,さらにホワイトライオン「も」追う,ということでタイトルを「を」でなく「も」にしました。この本が,まれな疾患もきちんとみつけていこうという臨床医の明日からの成長の助けになることを心より願っています。

2019 年春 志水 太郎



監修の言葉

思い返してみれば“Zebra CardsTM ─ An Aid to Obscure Diagnosis”の存在を知ったのは大船GIMカンファレンスだったと思います。そのときはそんなマニアックな本があるのか,くらいの感想でしかなく,のちに類書を出すことになるとは思いもよりませんでした。
しかしながら,「診断」というものに向き合っているうちに特異的な徴候の鑑別診断というものに興味がいくようになりました。たとえば,「ムチウチ様皮疹」という皮疹があります。見た目のインパクトは非常に強いです。予備知識なしに救急外来でみることがあったら鑑別に非常に困るのではないでしょうか? しかし,こういった疾患があることを何かで耳にしていたり,Evernote か何かのアプリにメモを残し,その存在を想起することさえできれば,鑑別はしいたけ皮膚炎,成人Still 病,薬剤性(ブレオマイシン,トシリズマブ),接触性皮膚炎,植物性光線皮膚炎,皮膚描記症のように挙がり早期診断が可能になります。ほかにも例はあります。
・徐脈+ショック
・シャワーを浴びたときの雷鳴頭痛
・片側性のあごの痺れ(numb chin syndrome)
・仰臥位のほうが呼吸困難が軽度
上記のような症状の場合はどうでしょうか?
ショックの鑑別,雷鳴頭痛の鑑別,顔面の痺れの鑑別,呼吸困難の鑑別といった感じに進めるよりも,状況に応じた鑑別診断リストを所持していれば,よりスムーズに診断は進むだろうと思います。
また,知っているか知っていないかで診断までのスピードが全く異なる疾患,みたいなものも存在します。本書で例を挙げるとすると,背中の難治性痒感,足の痛み+指の不随意運動といったものです。
現在,症候学を学ぶ本は素晴らしいものがいくつも出ていますが,こういった「まれな症候」の鑑別診断を取り上げている本というのは日本では他にありません。本書は類書(というよりオリジナル)の“Zebra CardsTM” や“Pocket Guide of 50 Unusual Symptom”(Blackwell Publishing, 2002)という洋書なども参考に100の疾患・徴候をセレクトさせていただきました。そして,想起した徴候や疾患がドンピシャではなく,周辺疾患 / 類似したもの〔獨協医科大学病院総合診療科(獨協総診)ではpivot and cluster戦略にちなんでcluster(クラスター)と呼んでいます〕だったとしても診断補助になるように鑑別疾患リストを付け加えている構成になります。
ケースカンファレンスや書籍による勉強のメリットとして「まれで特異的な症例を共有できる」ことがあります。本書のクリニカルパール,症候リスト,鑑別診断リストは読者の皆様のSystem 1(直感的診断力)の助けとなり,そしてその先にいるであろう患者様に少しでも役に立つ瞬間があれば幸いです。
最後に,この本の出版に当たって,MEDSiの佐々木様,獨協医科大学病院総合診療科の志水先生をはじめとするスタッフの皆様,現在御世話になっている昭和大学病院総合診療科の皆様,自分の家族に多大な感謝を述べさせていただきます。

2019 年 原田 拓

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