プロの対話から学ぶ感染症

プロの「頭の中」、お見せします

4名の強者感染症科医が一堂に会し、バラエティに富んだ12症例について個々に鑑別診断を挙げ持論を展開するクロストーク集。感染症のプロの対話を通して、感染症診療において教科書では学びにくい、診断に至るまでの思考プロセスを指導医からアドバイスを受ける感覚で追体験できる。Teaching Pointがまとめられているのも有用。感染症診療の醍醐味が伝わる書。



【メイキング映像その1】



【メイキング映像その2 症例提示編】



【メイキング映像その3 感染症医としてできること】



【メイキング映像その4 問題提起編】

 



 



 

¥4,950 税込
岩田健太郎 神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授 青柳有紀 Consultant Physician, Internal Medicine Department, Dunedin Hospital ,New Zealand 岡 秀昭 埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科診療部長/准教授 本田 仁 東京都立多摩総合医療センター感染症科医長
ISBN
978-4-8157-0188-8
判型/ページ数/図・写真
A5 頁240 図7・写真28
刊行年月
2020年4月
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第1ラウンド
・Dr.岩田の症例1
服役中のMSMの30代男性。ゲンボイヤ®服用中で,
両手の手掌と手背に皮疹あり。これってアトピー?
・Dr.青柳の症例1
15歳男性の家族旅行後の頭痛と嘔気
── 直感と論理のあいだ
・Dr.岡の症例1
耐性緑膿菌の治療相談
──メロペン®でいいですか?
・Dr.本田の症例1
MDSの60代男性。引っ越しの最中に雷鳴頭痛。
発熱,悪寒戦慄もあるが,画像所見はなし。
いったい何が起こったのか?

第2ラウンド
・Dr.岩田の症例2
ベトナム帰りの50代男性。帰国直後から熱があり,
上半身があちこち痛くてしょうがない
・Dr.青柳の症例2
15歳男性のありふれた喉の痛みと苦い結末
・Dr.岡の症例2
タイ人の妻をもち,タイと日本を行ったり来たりの
68歳日本人男性。タイ滞在中から6週間も39℃の熱が続いている
・Dr.本田の症例2
骨髄移植前提で入院中の46歳男性。Burkitt lymphoma
あり。微熱と軽度の咳が続いているが,なぜ?

第3ラウンド
・Dr.岩田の症例3
基礎疾患全くなしの20代男性。飲み会で立ち上がった途端,
右股関節痛が起こった。眠れないほど痛い
・Dr.青柳の症例3
治療すべきか,せざるべきか,それが問題だ
── 僕らができることについて
・Dr.岡の症例3
40代男性。肝移植後に繰り返す菌血症
・Dr.本田の症例3
38歳女性。扁桃炎を繰り返すため,扁桃摘出術を行う予定。
腎機能に問題はないが,ASTとALTが少し上昇

ずいぶん長いこと感染症を教えているけど,なかなか伝わらないことがある。  それは,診断に至るまでの思考プロセス。  えー,それって基本中の基本じゃん。と皆さんは考えるかもしれない。ぼくも 基本中の基本だと思う。が,案外,これが伝わらない。学生,初期研修医,後期 研修医ですら,「どうしてこの診断に至るのか」をうまく指導医たちと追体験でき ないのだ。感染症診断は感染症診療の「いろは」であり,基本だが,そこが一番 難しいのだ。いや,基本だからこそ難しいのか。  診断プロセスは理路の道筋だ。こういう患者がいる。であるならば,こういう 病態,こういう微生物,こういう疾患を考えるべきだ。これこれこういう理由で。 こういう病態,こういう微生物は考えづらい。これこれこういう理由で。ライプ ニッツが言うように,「A病だと思う」は同時に「BやCやDではない」と思う ことだ。そうやって,診断に漸近していくのが理路の道筋であり,これは感染症 に限ったことではなく,多くの病気の診断プロセスも同様である。  が,多くはここを端折る。血培,尿培,痰培とってバンコとゾシンいっときま した,というプレゼンになってしまう。バンコとゾシンは診断ではない。メロペ ンでも診断ではない。いったい,我々は何と対峙しているのか。何が問題の正体 なのか。私が見ている世界は君には見えているのか。「とりあえず培養とってゾシ ンとバンコいっときましたー」というプレゼンのあとに神戸大感染症内科の回診 で何が起きるかは一種のホラーなので割愛するが,そこにはアセスメントがない。 No assessment, no life. Literally.
 理路の追体験は,なかなか難しい。おそらく,回診中にそこを上手に説明でき ていない岩田の責任が大きいのだろう。上手な言語化が必要なのだ。  そこで,対話である。ご依頼したのはぼくが信頼する質の高い感染症医たちで あり,ぼくよりもはるかに「言語化」に長けている方々だ。この対話が理路を可 視化し,イメージとして体感を可能にするのではないか。これが本書の試みであ る。もちよったケースを我々が議論し,対話を重ね,疾患の正体に近づいていく。 理路の可視化が本書の狙いだ。  本書の意図が,うまく読者に伝わらんことをお祈りしています。
2020年2月のやや不吉な日に 岩田 健太郎

2015年の春に都立多摩総合医療センターの本田仁先生と『感染症的往復書簡』を 上梓させていただいてから,そこで試みたような,「対話」をベースにした教材づ くりにかかわりたいと思ってきました。ですから,本書の企画をいただいたとき は「胸が踊る」思いでしたし,プロフェッショナルとして,また人として,日頃 から尊敬申しあげている本田先生,岩田先生,岡先生と,久しぶりに東京で再会 できることがとても楽しみでした。  私は,自分の仕事が好きです。とりわけ,診断が難しい症例だったり,限られ た情報に基づいていくつもの可能性について考えなくてはならない状況では,好 奇心と意欲を掻き立てられます。もっと好きなのは,それらについて信頼する同 僚や仲間と対話するときです。彼らと話すと,自分とは異なる視点やアプローチ にしばしば感嘆させられますし,自分が知らない知識に気づかされます。話に夢 中になりすぎて,会議や約束事に遅れそうになることがよくあります。そうした やりとりが積み重なるたびに,私は共に働く仲間への尊敬の念と,自分自身も成 長したいという気持ちを新たにします。  お互いに選りすぐった症例をもちあい,事前の情報共有は全くない状況で行わ れた今回の対話は,そんな自分にとっては,「夢のよう(magical)」な時間でした。 最後の症例について議論し終えたとき,最上のコンサートを見終えた瞬間のよう な,興奮と充足感と若干の寂寥が混じった,あの何とも形容しがたい気持ちにな りました。太平洋と赤道を隔てて,次回をすでに楽しみにしている自分がいます。  本書を手にとって下さった方々と,『往復書簡』と同様,今回も編集を務めて下 さったメディカル・サイエンス・インターナショナルの佐々木由紀子さんに心よ り感謝いたします。
2020年2月 ダニーデンにて 青柳 有紀

感染症専門医として独立してはや10年になろうとしています。  少なくとも感染症専門医を目指そうと思ったときには,日本では時代のニーズ にあった感染症研修を行うことはなかなか困難でした。  私は血液内科で初期研修(今の研修制度前の人間です)を始め,次いで呼吸器内 科を経て,日本の臨床現場での感染症診療の重要性を痛感するなかで現在に至っ たのです。私は海外留学経験もなく,いわば,プロトタイプの純国産感染症内科 医です。  私のキャリアのなかで,血液培養2セットは異端で1セットが当たり前,CRP を追いかけ,抗菌薬を取っ替え引っ替え,ピペラシリン2g朝夕,カルバペネム サイクリング療法,レボフロキサシン100mg 3錠 分3と戦い揉まれ,メトロニ ダゾール腟錠坐薬使用,アムホテリシンB(リポソームじゃない!)の漸増療法も 経験してきました。こうやってプロトタイプは誕生し,それとともに思い返すと, ガラパゴス日本の感染症診療もゆっくり進歩していることに気づきます。  しかし,ひとたび,感染症内科医として独立すると,時に他の専門医はどう考 えるのだろうか,グローバルな研修や教育を受けて活躍する専門医はどう考える のだろうか,このままでは自身がガラパゴス化してしまうのではないか,と一抹 の不安もよぎります。  ゆえに,今回のクロストークのお話をいただいたとき,最初の緊張感はあっと いう間に通り過ぎ,期待に満ち溢れていました。  実際にクロストークの最中は,収録であることを忘れ,お互いがお互いの症例 を純粋に楽しみながら,率直な意見交換ができたので,収録後の感想は,疲労で はなく,楽しかった!の一言です。  何より4名の基本的な感染症診療の基礎は同じで,共通言語で話せ,目標も同 じ方向を向いています〔ゆえに感染症診療の原則(青木眞先生)が大切なことがお わかりいただけるでしょう〕。  では,それが偏った見方や内容なのかといえば,コントラバシーなところは, それはそれで少しずつ考え方が違い,それがとても参考になったのです。  読者には,この楽しさをぜひ体感していただきたいと思います。本書は感染症 のベーシックな知識獲得型の書籍ではありません。それを期待するとがっかりし ます。しかし,感染症診療の思考過程を楽しむのだという感覚で,気楽に読んで みてください。そうすると雑談のように感じるところであっても,自身の思考を 鍛えるのにお役に立つでしょう。そもそも,臨床感染症を学ぶテキストは溢れています。今,現場に不足しているのはその知識をどう使うか,魅せてくれる指導 医ではないでしょうか。本書では4人の指導医の考え方を,実際のプレイを体感 できるのです! 特に,自分が勉強したことが,現場では実践されておらず,か といってなかなか受け入れられない,信頼できる感染症専門医指導医から指導が 受けられない,そういった方々に,本書をぜひお読みいただきたいです。
岡 秀昭

「感染症診療の醍醐味は何なのか」という話のときに皆さんは何を思い浮かべるの だろう? 感染症診療は決して起炎菌をみつけ,その菌に最適な抗菌薬を選択す ることみたいに理解している人は世の中にはけっこういるのではないかと思う。 もちろん,これは行われるべき感染症診療の一部をなすのだが,実はそれだけで はない。むしろ最適な抗菌薬の選択という業務が占める割合はそれほど多くない。 実際に最適な抗菌薬の選択は複数存在するし,状況によっても異なる。だからこ そマニュアル本を用いてそのとおりに診療だけすることには面白みや醍醐味を感 じることができない。感染症診療はもっと3次元的であり,言語化しにくい。だ から私が尊敬する感染症医は皆おしなべてベッドサイドでの診療をとても重視し ている(そのうえで臨床研究や基礎研究もよくやっている)。自分は米国の大学病 院でその研修を修了したが,その研修中に出会った1960年代トレーニーの指導医 の臨床力の高さにとても魅了された(彼は研究者としても一流だった)ことを今で もはっきり覚えている。臨床力とは抗菌薬のことを知っていることだけではない。 その疾患の通常のclinical course,感染症診療におけるさまざまなpitfall,外科治 療の適応など,感染症診療にかかわる細かい包括力を表しているのかもしれない。 彼はいつもそのベッドサイドで多くの感染症診療におけるtipsを感染症フェ ローに惜しみなく提供していた。自分も帰国してはや10年経つが全然その指導医 に追いつかない。  日本の感染症診療は20年前に比べるととてもよくなったと思う。ただ,その感 染症診療を行うという文化は正直浅く,この言語化しにくい部分の感染症診療や 教育が若手医師に伝わることはあまり起きていないというのが私の実感である。 そのベッドサイドで繰り広げられる,あまり教科書に書かれていないような感染 症診療における意思決定,hidden curriculumに近い内容はそのような教育を受 けた人でないと提供できない。そういう指導医は概ね教科書的な標準治療が何な のかをよく理解しており,さらにそのうえでその標準治療から外れるにはそれな りの理由があるということを明確に説明している。これが長い時間をかけると「感 染症の診療の文化」という形をつくる。日本でそういう感染症臨床が起きにくい のはこういう教育を提供できる指導医の絶対数が少ないからだと思う。  今回の内容は私のいう,そのあるべき感染症診療の一端がわかる書籍だ。対話 をしている感染症医は日本,米国,ニュージーランドで感染症診療をしている現 役の感染症医で,それぞれ特徴的な医師が集まり議論するので,この企画をいた だいたときにはとても楽しみに感じていた。実際会って議論を交わすとあっという間に時間は過ぎていったのだ。読者の皆さんにもぜひ手にとってプロの対話を 読んだ感想を聞かせてもらいたいと思います。
本田 仁

2020-04-13

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

124ページTeaching Pointの1行目
(誤)不明熱のアプリーチ
(正)不明熱のアプローチ

際限なき医学欲を満たす、極上の教科書を召し上がれ。

周術期管理を核とした総合誌[リサ]月刊/毎月1月発売

集中治療の“いま”を検証し、“これから”を提示するクオータリー・マガジン。季刊/年4回発行

患者全体を見すえた内科診療のスタンダードを創る!季刊/年4回発行

脳科学の宇宙(せかい)を展望する。

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