精神症状に潜む身体疾患66 モリソン先生のルールアウト

身体疾患を除外するための、明確な「見極めどころ」



精神症状を起こしうる66の身体疾患・物質中毒の「見極めどころ」を平易な文章で解説。 様々な精神症状の特徴の解説の第1部、精神症状が出現しうる身体疾患・物質中毒の概要を記した第2部、そして精神症状と身体疾患/物質中毒のクロス表を記した第3部からなる3部構成で、身体疾患の「ルールアウト(除外診断)」を実践する知識が身につく。 精神科医はもちろん、総合診療医やプライマリ・ケア医、さらには臨床心理士、看護師などのコメディカルにもおすすめ。

¥3,960 税込
原著タイトル
When Psychological Problems Mask Medical Disorders: A Guide for psychotherapists, 2nd Edition
訳:宋龍平 岡山県精神科医療センター 臨床研究部/株式会社CureApp メディカル推進部  監訳:松崎朝樹 筑波大学医学医療系臨床医学域精神神経科 講師
ISBN
978-4-8157-3026-0
判型/ページ数/図・写真
B6変 頁312 図76
刊行年月
2021年7月
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はじめに

第1 部 症状のレビュー
評価が必要な症状
患者を評価する
精神状態を観察する
外観と行動
気分(感情)
発話
思考の内容
認知機能
病識と判断
診断原則

第2 部 精神症状の原因となる66 の身体疾患
悪性貧血
異染性白質ジストロフィー
ウィルソン病
うっ血性心不全
外傷性脳損傷
褐色細胞腫 
鎌状赤血球症
カルチノイド症候群
がん
関節リウマチ
肝不全
寄生虫症
筋萎縮性側索硬化症
クッシング症候群
クラインフェルター症候群
クリプトコッカス症
月経前症候群
高血圧性脳症
高山病
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
更年期障害
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
視覚障害・聴覚障害
重金属中毒
重症筋無力症
術後せん妄
神経皮膚症候群
進行性核上性麻痺
腎不全
睡眠時無呼吸症候群
正常圧水頭症
セリアック病
線維筋痛症
全身性エリテマトーデス
全身性感染症(中枢神経系以外)
僧帽弁逸脱症
多嚢胞性卵巣症候群
多発性硬化症
タンパク・エネルギー栄養障害
てんかん
糖尿病
脳腫瘍
脳卒中(脳血管障害)
脳膿瘍
肺炎
肺血栓塞栓症
梅毒
パーキンソン病
ハンチントン病
ビタミンB1 欠乏症
副甲状腺機能亢進症
副甲状腺機能低下症
副腎不全
不整脈
物質中毒と離脱
プリオン病
ペラグラ
ヘルペス脳炎 
片頭痛
ホモシスチン尿症
ポルフィリン症
慢性閉塞性肺疾患
メニエール症候群
ライム病
AIDS(後天性免疫不全症候群)

第3 部 症状のサマリー
全身・視覚症状
胸部・消化器症状
泌尿生殖器・性的症状
皮膚症状
筋骨格系症状
神経学的症状 その1
神経学的症状 その2
情動面の症状
認知症状,人格の変化
中毒症状,離脱症状

参考文献
索引

うつ病や不安症,統合失調症など,一般的によくある精神障害と診断されている人の中に,実はその原因となる身体疾患を抱える人が隠れていることもある……そうとは知っていても,身体的な原因を考えることについて苦手意識を持っている精神科医も多いのではないでしょうか。少なくとも私自身はそうでした。そんな中,出会ったのが宋龍平先生でした。
ある日,私のもとを訪れた宋先生と精神医療における想いを語り合う中でご紹介いただいたのが,モリソン先生による一冊“WhenPsychological Problems Mask Medical Disorders: A Guide for Psychotherapists”でした。さまざまな領域につき積極的によく学んでいた宋先生だからこそ出会えたのであろうこの本。さっそく原著を手に入れ読みはじめてみると,精神医療の中で臨床的に考え
るべき身体疾患のことが十分に,それも精神科医にも理解しやすいよう配慮され盛り込まれたその一冊は,多くの学びを与えくれるものでした。その後,宋先生から,本書の翻訳版を日本の精神医療に携わる人々に届けたい,という熱い気持ちとともに,監訳を打診いただき,お受けしました。それに応えるように,株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナルの方々にはこの翻訳本の出版を快くお引き受けいただきました。
いざ作業に着手してみると,ただ原著を日本語にするだけにとどまらず,よく調べたうえで日本の臨床にあわせた訳注が多数盛り込まれており,宋先生の真面目な仕事ぶりには驚かされるばかり。私自身は監訳者として,より正確な内容にできるよう,より読みやすく読者の頭に届けられるよう,そして,モリソン先生ならではの語りの魅力が感じられるように努めたつもりです。
さて,精神症状の裏に隠れた身体的問題について,われわれは本当に気づくことができるのでしょうか。実際のところ,一般的な精神科の外来で,そのような患者の率はそう高いものではありません。しかし,ただの精神障害だと片付けられている身体疾患は,われわれ医療者が気づくのをひっそりと待っているはず。われわれが本書で得た学びを通して,日本で精神症状に悩む多くの方々の中から1 人でも2 人でも,その真の原因に気づくことができたとしたら,その方に大きな救いをもたらしうるでしょうし,そのときこそ,この本の真価が発揮されたといえるでしょう。
この本を皆さんのもとにお届けできたのは,まず何よりも豊富な知識をもとに原著を書き上げたモリソン先生の功績が第一にあります。そして,この原著の素晴らしさを日本の医療者にも共有すべく翻訳にあたった宋先生の熱意があってこそ。私自身,本書に関わる中で多くを学ぶ機会を得たのは幸いでしたし,今こうして本書を手にしている医療者の皆様にとっても臨床の大きな助けとなることを期待しています。
2021 年6 月
松崎朝樹

偉大な先人が著した書籍や論文によると,「急性発症」,「軽微な意識障害の併存」,「精神症状の多彩さや移ろいやすさ」は,身体疾患や物質中毒が原因で起こる器質性・症状性の精神障害を示唆するそうです。私自身のそう長くない精神科医としての経験から,これらの特徴を知っておくと臨床的にとても役立つと実感します。しかし,器質性・症状性精神障害を疑ったとして,具体的にはどの身体疾患や物質中毒を鑑別リストに入れればよいのでしょうか。この疑問に直接答えてくれるまとまった資料は見つけられず,自分で作ろうかと考えながらも怠惰に任せて数年間過ごしたときに出会ったのが,精神障害の診断に関する実践的な書籍を多数執筆されているモリソン先生の1 冊,“When Psychological Problems Mask Medical Disorders: A Guide for Psychotherapists”でした。
本書は,身体疾患が原因となる精神症状の特徴が学べる第1 部,精神症状をきたしうる66 の身体疾患・物質中毒それぞれの概要が記された第2 部,鑑別疾患リスト作りにとても役立つ精神症状と身体疾患・物質中毒のクロス表がまとめられた第3 部からなります。
今この序文を読んでくださっているあなたが(どの診療科であれ,精神症状がある患者さんを診ることがある)医師ならば,第1 部にさらっと目をとおしておいて,精神症状の原因として身体疾患を疑う患者さんと出会ったときに第3 部のクロス表をご利用いただくとよいかもしれません。第2 部は簡潔にまとめられている分,少し物足りないと感じられるかもしれませんが,馴染みのない疾患について概略をつかむのにお役立ていただければと思います。
精神症状を呈する患者さんに最初に接するのは,看護師,保健師,公認心理師,ソーシャルワーカー,作業療法士の方々という場合もあるでしょう。あなたがこれらの職種のどれかに該当されるなら,第1 部から読み始めるのがおすすめです。第1 部の本文中には,精神症状の説明に加えて,その精神症状の原因になりうる身体疾患についても簡単に触れられています。知らない疾患名が出てきたら,その疾患に関する説明を第2 部で確認しながら読み進めていくとよいでしょう。
身体疾患や物質中毒が精神症状の原因となることはそう多くはありません(精神科救急の患者さんでも2 ~ 3% 程度でしょうか)。しかし,これらの原因を見逃さずに診断することはとても大切です。なぜなら,予後の見通しや治療選択が全く変わるからです。本書がそのような診断の助けとなることを願ってやみません。
最後に,初めてお会いしたにも関わらず,監訳をお引き受けいただき出版社とも交渉くださった松崎朝樹先生,行き届いた編集作業をご担当くださった株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナルの水野資子氏に厚くお礼を申し上げたいと思います。
2021 年6 月
宋 龍平

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