患者をエンパワーする 慢性疾患セルフマネジメントの手引き

患者のヘルスリテラシーを患者とともに高める!

慢性疾患患者自らが、前向きな自己効力感を得ながら健康や疾患のコントロールに取り組むこと(エンパワメント)を医療者が促すことは重要である。本書はその役割をいかに担うべきかのヒントになる。患者共通の症状や感情を包括的に取り上げ、セルフマネジメントに際しての心構えや具体的な方法、アクションプランやそのためのツールを紹介。患者の視点に立って書かれており、患者への説明や情報提供にそのまま活用できる。医療者が患者とともに学べる一冊。



書評『Hospitalist Vol.9 No.3 2021』掲載‗評者‗五十野博基先生



電子版はこちら(医書JP)

¥5,940 税込
原著タイトル
Living a Healthy Life with Chronic Conditions: Self-Management Skills for Heart Disease, Arthritis, Diabetes, Depression, Asthma, Bronchitis, Emphysema, and Other Physical and Mental Health Conditions, 5th Edition
監訳:孫 大輔(鳥取大学医学部地域医療学講座)
ISBN
978-4-8157-3040-6
判型/ページ数/図・写真
B5変 頁416 図85
刊行年月
2022年1月
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第1章 セルフマネジメント:どんなこと? どのようにおこなう?
本書の使い方
慢性の健康状態とは?
慢性疾患の原因は?
異なる状態,似たような症状
慢性疾患の道筋を理解する
セルフマネジメントとは?
セルフマネジメントのスキルとは?
セルフマネジメントのスキルとツールを使う
同じ条件でも反応が異なる
考慮すべき追加の重要なポイント
慢性疾患セルフテスト
セルフテストの採点方法

第2章 アクティブなセルフマネージャーになるには
セルフマネジメントのタスクとプラン
問題を解決する
意思決定をする:長所と短所を見極める
行動を起こす
短期的な計画を立てる:アクションプランの作成
軌道修正をする(問題解決に戻る)
自分へのご褒美
セルフマネジメントツールボックス
私のアクションプラン

第3章 リソースをさがす
必要なものを見つける:宝探し
リソースのためのリソース
インターネット

第4章 よくある疾患の理解とマネジメント
心疾患・高血圧・脳卒中
心疾患・高血圧・脳卒中の治療
心疾患,高血圧,脳卒中のセルフマネジメント:生活習慣変容と非薬物療法
心疾患と脳卒中がある人のエクササイズ
慢性肺疾患
慢性肺疾患の治療:薬物療法
慢性肺疾患のセルフマネジメントスキル
慢性肺疾患のセルフモニタリング
慢性肺疾患がある人のエクササイズと健康的な食事
慢性関節炎と骨粗鬆症
変形性関節症の治療
炎症性および結晶性関節炎の治療
慢性関節炎のセルフマネジメントスキル
骨粗鬆症の理解と治療
慢性関節炎や骨粗鬆症がある人のエクササイズ

第5章 よくある症状と感情の理解とマネジメント
よくある症状への対応
疲労
痛み
息切れ・呼吸困難
睡眠の問題
うつ
怒り
ストレス
記憶の問題
かゆみ
尿失禁:膀胱制御能の低下
口腔内の健康の問題

第6章 症状マネジメントのために心を使うこと
リラクゼーション技法
イメージ法
ディストラクション
ポジティブシンキングとセルフトーク
心と気分を変えるための他のセルフマネジメントツール
祈りとスピリチュアリティ

第7章 体を動かす
体を動かして健康で幸せになる
よりアクティブになるための問題解決法
エクササイズの種類
あなたが取り組めるエクササイズ
身体活動ガイドライン
持久力エクササイズ
自分なりの持久力プログラムを組み合わせる
自分の持久力エクササイズを選ぶ
地域におけるエクササイズの機会
あなたのエクササイズプログラム:可能性のあるトラブルの解決法

第8章 生活を楽にするエクササイズ
身体活動でより自由で安全になる
あなたに最適なエクササイズは?
一般的なエクササイズの提案
首のエクササイズ
手と手首のエクササイズ
肩のエクササイズ
背中とお腹のエクササイズ
お尻と足のエクササイズ
足首と足のエクササイズ
バランスエクササイズ
全身のエクササイズ
経過をチェックする:セルフテスト
自分のためのエクササイズプログラムを作る
エクササイズのセルフマネージャーになる

第9章 自由と安全のための生活の仕方
怪我のサイクルを理解する
怪我のリスクを減らすためのツール
怪我のリスクを減らすためのエクササイズ
正しいボディメカニクスを使う
意識を集中させ,注意力が低下しないようにする
支援技術を利用して活動をより容易・安全に
住宅と周辺環境を改造する
医療従事者に助言を求める
まとめ:ツールを活用してリスクを減らす

第10章 健康的な食事
健康的な食事とは?
健康的な食事のためのガイドライン
何をどのくらい食べるかを知る
特定の慢性的な健康状態のための食事
過体重と健康的な食事
心臓病と脳卒中と健康的な食事
肺疾患と健康的な食事
骨粗鬆症と健康的な食事
腎臓病と健康的な食事
糖尿病と健康的な食事
健康的な食事のためのヒント
付録A:1,600 kcal と2,000 kcal の健康的な食事プラン
付録B:食事プランのための食品グループ

第11章 家族,友人,医療従事者とのコミュニケーション

気持ちを表現する
「I」メッセージを使う
衝突の軽減
助けを求める
断る
助けてもらう
聴く
さらに情報を求める
ボディランゲージと会話のスタイルを意識する
医療チームのメンバーとのコミュニケーション
医療システムとの協力

第12章 セックスと親密さを楽しむ
セックスについての一般的な懸念
官能的なセックス
空想と官能
セックス中の症状を克服する
セックスの体位
セックスと親密さ:特別な考察

第13章 治療方針の決定と服薬のマネジメント
医療や健康に関する主張の評価
治療について詳しく知る
薬について
心の働きを利用する:最高を期待する
複数の薬を服用する
検査,治療,処置を受ける前に医師に伝えておきたいこと(医師に聞かれなくても!)
検査,治療,処置,新しい薬を服用する前に質問すること
薬の管理
調剤ラベルを読む

第14章 糖尿病のマネジメント
糖尿病とは?
糖尿病のセルフマネジメント
症状を観察し,血糖値をモニターし,行動を起こす
健康的な食事
体を動かすこと
ストレスや感情のマネジメント
シックデイ,感染症,その他の病気のマネジメント
糖尿病の合併症を防ぐ
薬物療法:血糖値のコントロールと合併症の予防
必要な健康診断・検査・予防接種を受ける
セルフマネジメントと糖尿病:あなたの役割は重要です

第15章 慢性疾患を抱えながら働くことと生活すること
ワークライフバランスを見つける
ストレスマネジメントと仕事
コミュニケーションと仕事
家庭における仕事に関するコミュニケーション
活動的に体を動かしながら仕事をする
よく食べてよく働く

第16章 未来への計画を立てる:恐れと現実
もう自分の面倒を見られないとしたら?
ケアのための費用は足りるのか?
助けが必要だが,助けを望んでいない場合,どうするか?
悲嘆:悪い知らせに対する正常な反応
終末期の意思決定
法的文書を準備する
終末期の問題について,友人や家族と希望を共有する
終末期の問題を医師と話す
自分自身と他人を準備する
緩和ケアとホスピスケアを考える

索引

本書は画期的な本だと思います。
医学書でもなく,一般の方向けの病気の解説書でもなく,患者の視点から慢性疾患のセルフマネジメントの心得や具体的な方法について,ほとんど他に例を見ないほどに詳細に書かれた本だからです。
本書においては,「マネジメント」という言葉が特別な意味で使われています。Managementは通常「管理」などと訳される言葉です。Self-managementは「自己管理」と翻訳しても,意味は通じそうな気がします。しかし,本書の第1章において,明確に次のように述べられています。
「積極的にマネジメントする」という言葉に注意してください。私たちはあえて「マネジメント」という言葉を使っています。
つまり,本書の「マネジメント」には,能動的かつ積極的に自己を統御していくという意味が含まれており,通常の「管理」以上の意味が込められています。さらには,その前提に深い人間観があるように思います。
組織経営の分野において「マネジメント」といえば,ピーター・F・ドラッカーが思い浮かびます。彼の言う「マネジメント」とは,いかに組織を動かしていくかという方法論あるいは哲学です。そして,その前提には「人は責任,貢献,自己実現を欲する存在である」という人間観がありました。
そして,これは本書にも通じる価値観であると思います。人は何かに対して責任をもち,何かに対して貢献したいという欲求があり,そして自己実現を望む存在であるという人間観です。
例えば,私たちはなかなか自分の思いのままにはならない「感情」というものを抱えています。しかし,誰しも自分の感情を理解し,その影響に対して責任をもちたいという思いを抱えているのではないでしょうか。単純に,感情を自分の管理下に置くのではなく,それを「私」という人間の理解と,自己の成長や自己実現につなげていきたいという思いです。
慢性の病気を抱えている人は,日々様々な身体的症状とともに,様々な感情を経験しています。この「感情」は,自己を深く理解する手掛かりであり,うまく心を使うことで感情と症状をマネジメントすることができます。そして,そのための具体的で詳細な方法が,本書において説明されています。
その他にも,本書では,エクササイズの方法,安全を保つための体の使い方,健康的な食事,コミュニケーションの手法,性的生活のこと,薬のこと,働くこと,リソースの探し方,未来の計画の立て方などが,具体的かつ詳細に,そして様々な事例や利用できるツールとともに説明されています。一般的な解説書では決して知ることができないようなコツや,患者ならではの知恵が豊富に紹介されているのです。
本書を,慢性疾患を抱えるすべての人,またその家族やサポーター,そして慢性疾患患者にかかわっているすべての医療従事者にお勧めします。本書で紹介されている一部の記述は,カナダや米国の社会的制度に沿ったものであり,文化的な違いを感じるところもあるかもしれません。それでもなお,本書から学ぶことの利点は,その欠点を補って余りあると思います。
慢性疾患を抱える当事者の人たちにとって,本書のもたらす恩恵はとても大きいと思います。この本を是非,日々のセルフマネジメントに役立てていただければと思います。とはいえ,内容を鵜呑みにせず,自分で実験しながら様々なことにチャレンジしてみてください。わからないことや自信がないことは適宜,かかりつけの医師や医療従事者に相談してほしいと思います。
また,本書を手に取る医療従事者の方も,自身のこととして学んでいただき,患者や当事者の方をサポートしていただきたいと思います。患者視点から書かれた本書をぜひチームで活用して,患者のエンパワメントにつなげてください。
本書を翻訳するにあたり,ご協力いただいた翻訳者の皆様,そして編集をご担当いただいたメディカル・サイエンス・インターナショナルの山下隆久様,久保苑加様に心より感謝申し上げます。

鳥取大学医学部 地域医療学講座
孫 大輔

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