もはやこのアトラスは ”美しい写真集”
ベストセラー『感染症プラチナマニュアル』から生まれた
実践で"使える"アトラス、さらにパワーアップ!
臨床医と検査技師が共同で作り上げた微生物アトラス、5年ぶりの改訂。グラム染色手順、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、グラム陰性球菌、グラム陽性桿菌、抗酸性を有するグラム陽性桿菌、嫌気性菌、真菌の全8章。変化著しい微生物の分類や判定基準,同定方法などをアップデートおよび新規追加、写真を大きく見やすく掲載するとともに518点に大幅に増数、さらに充実。Web動画・WEB写真も利用できる。
第 1 章 グラム染色手順
第 2 章 グラム陽性球菌
第 3 章 グラム陰性桿菌
第 4 章 グラム陰性球菌
第 5 章 グラム陽性桿菌
第 6 章 抗酸性を有するグラム陽性桿菌
第 7 章 嫌気性菌
第 8 章 真菌
微生物の写真の撮影方法
付録
私を育ててくれた技師さん。それが佐々木雅一技師である。
彼との出会いはもう 15 年以上前になるだろう。関東労災病院で感染症の非常勤コンサルトをしていた私が,微生物検査室を訪れると,一切嫌な顔をせず,微生物検査の途中経過,推定をきわめて明快に熱心に教えてくれた。感染症内科医にとって,優秀な微生物検査技師は何にも代えがたい存在である。その検査室での議論により私は明らかに多くを学んだし,また,私の診療の大きな支えになり,時にエラーからも救ってくれた。
当初から私は佐々木技師の実力に感嘆し,やがて強い信頼を寄せるようになっていた。佐々木技師の存在が決め手となり,常勤医として赴任した関東労災病院の当時の感染症チームにより素晴らしい教育と診療が提供され,多数の後期研修希望者がそこに集った。まさに優秀な微生物検査技師の存在が,感染症研修の必要条件となるよい例であったろう。佐々木技師の特筆するべきところに,その知識のみならず,趣味の写真のセンスと技術を生かしたたいへんに美しい微生物写真の存在があった。この才能,この存在は世の中に広く知られるべきだと私は感じていた。
そこで本書が生まれることになったのである。この写真のおかげで,私の著書である『感染症プラチナマニュアル』が好評をいただくなかでご指摘のあった,微生物写真かがないという短所を補う目的にも十分にかなうものができたと感じている。
かつての微生物アトラスは微生物検査技師の視点あるいは医師の視点のみから,グラム染色について述べられたものが多かったと記憶している。本アトラスはグラム染色のみならず,培地や微生物同定検査の写真も多く取り上げ,また,微生物同定のポイントや,その臨床への用い方に言及したところに従来にはない特徴がある。しかし,何よりの特徴は芸術性を感じる佐々木技師の写真の質ではなかろうか。今回の改訂では,さらに佐々木技師の写真への美学とこだわりに磨きがかかり,このアトラスは美しい写真集ともいえる仕上がりとなっている。きっとマニアにはたまらないものであるはずだし,マニアのみならず,感染症検査や診療に興味をもつ多くの医療関係者にとっても,プラチナマニュアルとの併用できっとお役に立つであろう。
岡 秀昭
近年,微生物検査の写真撮影に関する話題が増えてきています。日本臨床微生物学会においてもフォトコンテストやアトラスの企画が登場し,目で見る感染症として微生物写真のニーズの高まりを実感しています。これまでも微生物写真のニーズがなかったわけではなく,時代が銀塩フィルムからデジタルにシフトし,さらにスマートフォンの普及と高性能化が「見る」ニーズの高まりに加えて「撮影する」ニーズが相乗効果で高まっているものだと思います。
コロナ禍の副産物というべきか,日本においても遺伝子検査機器が広く普及し,SARS‒CoV‒2 に留まらず,多くの感染症検査に利用され診断に役立っています。しかし,遺伝子検査が普及しようとも,培養検査はゴールドスタンダードであり,今後も変わることはないでしょう。新たに登場する病原細菌や変異していく病原菌を単離して調べることは避けて通れないと思います。
したがって,培養で姿を現した細菌・真菌のコロニーを知り,常在菌などの非病原菌のなかから問題となる細菌のコロニーを拾い上げる能力は今後も欠かせないと考えます。
本書では,日常的に出合うことの多い細菌・真菌を中心に取り上げました。特に,微生物検査を始めたばかりの技師に見ていただければ幸いです。
また,本書を手にとっていただいた読者には,ぜひ御自身で写真撮影を行っていただければと強く願います。
繰り返し撮影することで細菌の顔を覚え,特に特徴を捉えた写真を撮るための挑戦が,より頭の中へのインプットを促します。また,まれにしか出合わない菌の顔を忘れても,こんな顔で発育してくるということを自施設での使用培地に発育した写真を参考にすることが検査の手助けとなります。
本書は感染症診療の小さな巨人『感染症プラチナマニュアル』ファミリーの 1 冊として位置づけられ,作成されました。この『感染症プラチナマニュアル』の生みの親である岡秀昭先生とは私が関東労災病院に勤務していた時代に出会いました。感染症診療の中核として各診療科のコンサルテーションを,時にはネゴシエーターとして力強く行動されていました。その期間,研修医と一緒に感染症のイロハを学ばせていただきました。その経験が私の土台となっており,私にとっては感染症の教科書と言っても過言ではありません。岡先生が 2023 年現在,一流の感染症医として医療業界に留まらず国民に影響力を発揮しているのは皆さん周知のところだと思います。そして,コロナ禍の真っ只中において本書をつくり上げるために尽力していただきました。心より感謝を申しあげる次第です。また,本書の企画段階から,停滞しがちな企画を推進していただいたメディカル・サイエンス・インターナショナルの佐々木由紀子氏に御礼を申しあげて序文の結びとさせていただきます。
佐々木 雅一