気管切開 包括的ケアマニュアル

急性期から在宅、成人から小児まで

気管切開ケアの拠り所となる書、待望の刊行


気管切開患者・喉頭摘出患者の標準的ケア普及を目的とした団体 National Tracheostomy Safety Project (NTSP)が作成した包括的マニュアル。気管切開術の方法、デバイスの種類、緊急時の対応、施設の体制、医療安全など気管切開ケアに関連するを項目を、要点を踏まえ解説。

術後の短期的気管切開ケアだけでなく、永久気管孔を有する患者の長期的ケア、小児の気管切開ケアにも言及。

解剖図や手技のイラスト、各デバイスの写真、急変時対応のアルゴリズム等、ビジュアル面も充実。

当該領域の看護師、救急・集中治療系の医師をはじめ、呼吸ケアサポートチームに属する多職種メンバーにもおすすめ。



 



気管切開 包括的ケアマニュアル[URLリスト]



 

¥4,950 税込
原著タイトル
Comprehensive Tracheostomy Care:The National Tracheostomy Safety Project Manual
監訳:藤澤 美智子(横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部)・髙田 順子(東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸療法チーム)・武居 哲洋(横浜市立みなと赤十字病院 救命救急センター)
ISBN
978-4-8157-3089-5
判型/ページ数/図・写真
B5 頁192 図137
刊行年月
2023年11月
数量
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概要と主要推奨事項
1 NTSPの資料はどのように開発されたのか
2 気管切開とは? 喉頭摘出とは?
3 気管切開を行う理由と方法
4 さまざまな種類の気管カニューレ
5 気管切開患者,喉頭摘出患者の日常管理
6 合併症
7 レッドフラッグ
8 気管切開患者,喉頭摘出患者の緊急時対応
9 小児の気管切開ケア〔Great Ormond Street小児病院(ロンドン)共著〕
10 インフラストラクチャに関する考慮事項
11 気管切開患者,喉頭摘出患者をケアするスタッフのコンピテンシー
12 コース紹介
13 ヒューマンファクター

訳者コラム 無菌(sterile)or 非無菌(clean)?
参考文献

『気管切開 包括的ケアマニュアル』を手に取っていただきありがとうございます。「包括的」と題される通り,本書には気管切開術や喉頭摘出術を受けた“頸で息をする患者neck breathers”のケアに必要な要素が詰め込まれています。今までにこのような本は日本になく,医療スタッフや介護者を助け,neck breathersがより安心・安全に過ごせるように翻訳することとなりました。
 私は市中病院に勤める集中治療医です。経皮的気管切開術を行い,気管カニューレの抜去プロセスにかかわり,rapid response systemや呼吸ケアサポートチームの一員としてカニューレ閉塞や逸脱,急変に対応してきました。その中で,気管切開ケアに関するトラブルは多く,命に直結することがあり,改善が必要であると考えました。neck breathersの人数は多く,科や病棟を越えるため横断的な対策が必要であり,呼吸ケアサポートチームのメンバーで多職種気管切開チームを立ち上げました。…と,ここまではよかったのですが,さまざまな問題を網羅的に解決するために何が必要で,どのようにアプローチすべきかという指針やテキストがありませんでした。必要な情報は断片的で,各専門分野に散らばっており,困っていました。そんな時,東京ベイ・浦安市川医療センターの髙田順子さんに「良い本があるよ」と,英国のNational Tracheostomy Safety Project(NTSP)という団体とそのマニュアルを教えていただき,「答えがここにあった!」と衝撃を受けました。折に触れマニュアルを見返し,「本当にいい本なんだよ~」と呟いていたら同僚に「翻訳すれば?」と言われ,上司である武居哲洋先生に相談したら「いいね,やろうやろう」と背中を押され,メディカル・サイエンス・インターナショナルの高木健太さん,金子史絵さんに熱意をもってサポートいただき,訳者の先生のご協力を得てあれよあれよと今に至ります。ご縁に恵まれて,本書の翻訳にかかわることができてとても幸せです。
 原書『Comprehensive Tracheostomy Care:The National Tracheostomy Safety Project Manual』は2014年の出版ですが,NTSPのホームページ(https://www.tracheostomy.org.uk/)で情報を更新し続けています(ホームページは動画なども多く秀逸です。本書では,ところどころでNTSPの動画に誘導します)。今回,訳者の先生には,更新情報や日本との違いなど,適宜訳注を追記いただきました。免責事項にある通り,本書は診療の最低限の標準的管理とみなされるべきものではありません。それぞれの現場におけるケア改善の一助としてお役立ていただけたら幸甚です。
 最後になりますが,『気管切開 包括的ケアマニュアル』の出版にかかわってくださったすべての方と,いつも応援してくれる夫と子どもたちに心より感謝いたします。

2023年10月
藤澤 美智子



私が好きな臨床場面の1つは,“気管カニューレを付けた患者さんが,初めて話せるようになる”時です。患者さんは,久しぶりの感覚に戸惑いながらも,一音を試してみて,一言を話してみて,閉ざされていた心の声を言葉にのせて,話し始めてくれます。この特別な場面に立ち会い,患者さんとともに回復の喜び感じられる瞬間が,私は大好きです。
 東京ベイ・浦安市川医療センターで呼吸療法チームを立ち上げ,気管切開の患者さんの呼吸ケア,嚥下,発声,カニューレ交換,抜去にかかわり始めた2015年秋,『Comprehensive Tracheostomy Care:The National Tracheostomy Safety Project Manual』と出会いました。あらゆる視点から,包括的に気管切開ケアについてまとめられたこの本は,私のバイブルとなりました。この本から学んだことをもとに,安全かつ最善のケアを患者さんに提供できるよう組織やチームで取り組み,気管カニューレを付けた患者さんが話せて,カニューレ抜去に至ることもできるようになりました。そして,「英語だけど,気管切開ケアについて包括的に書かれていて,この本いいよ!」と,いろんな方に紹介していました。特に私が気に入ったのは,気管カニューレの交換,発声や抜管に向けたケアについても解説されていた点です。
 そのような中,2022年秋,横浜市立みなと赤十字病院の藤澤美智子先生から,今回の監訳のお誘いをいただき,初めての経験でしたがチャレンジさせてもらいました。本書は,医師だけでなく,すべての医療スタッフにお届けしたい一冊です。
 フツフツとした熱意を感じるリーダーの藤澤美智子先生,いつも適格に導いてくださる武居哲洋先生,地道に何ページも翻訳くださった訳者の先生,一字一句をも見逃さないプロの姿勢が光るメディカル・サイエンス・インターナショナルの高木健太さんと金子史絵さん,得意とは言えない英語を翻訳ソフト片手に頑張った自分。本書の出版にかかわっていただいたすべての方々,そして離れていてもいつも応援してくれる家族に感謝します。

 我が国の気管切開の患者さんが,だれでも,いつでも,どこでも,包括的な標準ケアを受けることができる環境になりますように。
髙田 順子



気管切開患者のケアにおいて,安全管理上の課題が存在することは以前から強く感じていました。気管カニューレの閉塞・逸脱・事故抜去など,気道トラブルは時に生命を脅かします。私たちはこれまでにICUで数多くの気管切開を行い,rapid response systemなどを通じて,いくつかの気管切開患者のクリティカルな気道トラブルに遭遇してきました。また,呼吸ケアサポートチームを通じて,気管切開患者の病態,リスク,トラブル対応などについて医療スタッフに対する研修を繰り返してきました。このような活動から学んできたことは,気管切開患者の病態が多岐にわたること,関与する診療科・職種が数多く存在し時期により変化すること,ICU・一般病棟・療養型病院・在宅医療など気管切開患者がさまざまなレベルの医療環境に分布していること,にもかかわらずトラブルシューティングは比較的共通であること,そして何よりも気管切開施行後の長期にわたる職種・部署などの垣根を超えた包括的な管理のノウハウが不足していることです。
 そのような時に髙田順子氏,同僚の藤澤美智子医師から『Comprehensive Tracheostomy Care:The National Tracheostomy Safety Project Manual』の存在を知らされ,目から鱗が落ちる思いでした。私たちが試行錯誤している間に,英国を中心に気管切開患者の包括的ケアが大きく進んでいることに感銘を受けました。特に気管カニューレの閉塞・逸脱などの事故を回避する取り組み,“頸で息をする患者neck breathers”特有の緊急時対応,などが詳細に書かれており,プレホスピタル(救命救急士など)から地域社会(在宅医療のスタッフなど)まで数多くの職種の医療スタッフに有用な情報が詰め込まれています。
 本書の監訳にあたり最も気をつけた点は,訳本独特の不自然な日本語にならぬよう,できるかぎり自然な表現に近づけ,読者にとって読みやすくすることです。訳者,監訳者,編集者などと議論を重ねましたが,それでも私たちの力が及ばず,不備な点が存在していると考えます。読者からの温かいご指摘,ご指導をいただけると幸甚です。
 最後に多忙な私を毎日支えてくれる妻に感謝するとともに,3人の子どもたちに本書を捧げます。
武居 哲洋

2024-03-04

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

P8 「Box 3.1 気管挿管長期化に伴うリスクと気管切開に伴うリスク」の「気管挿管長期化に伴うリスク」の段落
(誤)気管カニューレ閉塞と逸脱
(正)気管チューブ閉塞と逸脱

P44 左段,5行目
(誤)カニューレを適切な位置に固定することと,褥瘡を引き起こすリスクを最小限に抑えることとのバランスを取る必要がある(図5.10)。
(正)カニューレを適切な位置に固定することと,褥瘡を引き起こすリスクを最小限に抑えることとのバランスを取る必要がある(図5.9)。

P64 右段,1行目
(誤)図5.25 は,カフ付きカニューレ,カフ無しカニューレ,カフ無し気管カニューレの空気の流れを示している。
(正)図5.25 は,カフ付きカニューレ,カフ無しカニューレ,カフ無し有窓カニューレの空気の流れを示している。

P80 右段,18行目
(誤)カニューレが腕頭動脈穿通すると,気管腕頭動脈瘻が発生する可能性がある。
(正)カニューレが腕頭動脈穿通すると,気管腕頭動脈瘻が発生する可能性がある。

P107 左段,32行目(下から5行目)
(誤)吸引圧をかけるために,カテーテルを折り曲げて挿入してはならない
(正)吸引圧をコントロールする目的で,カテーテルを折り曲げて挿入してはならない

2023-12-25

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

P12 右段,16行目
(誤) この縫合は,通常は新しく形成された気管切開孔が安定する術後5~7 日目に行われ最初のカニューレ交換後に抜糸する。
(正) この縫合は,通常は新しく形成された気管切開孔が安定する術後5〜7日目に行われ最初のカニューレ交換後に抜糸する。

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