Mayo Clinicの症例から学ぶ臨床感染症

Mayo Clinicのケースカンファレンスを疑似体験し、スキルアップ!

総合内科医や感染症専門医が日常診療で接する機会の多い感染症を、症例ベースで診療の流れに沿って解説。コモンではあるが経過や既往歴が複雑な疾患を中心に、54症例を収載。SECTION 1の「症例提示」では、初診から最終的な診断が下されるまでの詳細な診療の流れがわかり、「症例の考察」では、原因菌の解説、症状、検査、治療について最新の知見を交えてコンパクトにまとめた。SECTION 2のQ&Aにより学んだ知識を整理できる。

¥4,620 税込
原著タイトル
Mayo Clinic Infectious Diseases Case Review : With Board-Style Questions and Answers
原著者
Larry M. Baddour,John C. O'Horo,Mark J. Enzler,Rahul Kashyap
訳:織田錬太郎(東京都立多摩総合医療センター感染症内科医長・診療科長)
ISBN
978-4-8157-3093-2
判型/ページ数/図・写真
B5変 頁208 図42 写真49
刊行年月
2024年2月
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SECTION 1 症例集
症例 1 腎移植患者の肺炎
症例 2 妊娠中の小休止:緊張感の漂う間
症例 3 なんという頭痛だ!
症例 4 網膜病変と眼の痛み
症例 5 国境の腹水
症例 6 長期にわたる脚の問題
症例 7 糸状の怪物
症例 8 模倣の達人
症例 9 造血幹細胞移植後の意識変容
症例 10 耐性
症例 11 緊急を要する感染症
症例 12 腎臓病とHIV
症例 13 心臓血管外科術後患者の全身症状
症例 14 おんぶしてくれるのは誰?
症例 15 早すぎる店じまい
症例 16 情報の公表
症例 17 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症患者の急性呼吸不全
症例 18 問題は1つではない
症例 19 HIV / AIDS 治療中の患者の口腔内にある隆起した紫色の丘疹状腫瘤
症例 20 移植患者の頭痛
症例 21 海外で獲得した神経病変
症例 22 糖尿病がある50歳男性の副鼻腔炎
症例 23 腫脹した下肢
症例 24 もう1つの感染症
症例 25 遠すぎる耳の痛み
症例 26 あまりよくない
症例 27 少し典型的じゃない
症例 28 最初の診断は胆囊炎だった
症例 29 多剤耐性菌による複雑性尿路感染症
症例 30 血小板減少
症例 31 移植でウイルスに感染するとき:過剰な免疫抑制
症例 32 帰国した海外渡航者の潰瘍性皮膚病変
症例 33 HIV 予防
症例 34 免疫不全者の進行する皮膚結節
症例 35 2つの問題
症例 36 複視と胸痛のある患者
症例 37 積み重なる耐性
症例 38 両側の耳鳴り
症例 39 帰国した海外渡航者の発熱
症例 40 皮膚科的緊急症
症例 41 転倒を繰り返す60歳男性
症例 42 イヌ咬傷後の屈筋腱腱鞘炎と化膿性関節炎
症例 43 発熱と黄疸を呈した健康な若い女性
症例 44 いつも灼熱感でなければならないのか?
症例 45 悪化の一途をたどっている癤
症例 46 免疫不全患者の口腔内潰瘍
症例 47 水中の何かに違いない: 釣りの後の手感染症
症例 48 陰圧
症例 49 人工関節感染症の珍しい原因
症例 50 HIV とそれに伴う無数の日和見感染症
症例 51 旅のお土産
症例 52 足と弱点の間で行き詰まる
症例 53 不明熱の皮膚の手がかり
症例 54 慢性多関節炎

SECTION 2 質問と解答
質問
解答

カラー写真
索引

訳者序文

約15年前,自分が研修医の時代には,感染症を勉強するリソースはかなり限られており,感染症診療を体系的に教えてくれる指導医は皆無に等しかったし,青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』(医学書院)や岩田健太郎先生の『抗菌薬の考え方,使い方』(中外医学社)などの限られた書物を自分で読みながら臨床に挑むしかなかった。
そのような時代から,ここ10 年ほどの間に,先人達の努力により正しい感染症診療の考え方が普及し,感染症医も増えて(まだまだ不足しているが),晴れて自分も感染症医となった。書店には感染症診療を学ぶための良質な本が多く並べられており,どれを買うか選ぶのに悩むくらいの羨ましい時代となった。
自分も感染症医となり,そのような本も参考にしながら勉強し,徐々に指導医側にまわっていくこととなった。いざ感染症専門医・指導医となった際に,自分のプラクティスを確認したり,もう一段階力をつけたりするための感染症の本はあまり多くないことに気づいた。あるとき,免疫不全者の感染症でよい本はないかと思っていると,“Infections in the Immunosuppressed Patient : An Illustrated Case-Based Approach”という本が『チャンドラセカール 移植・免疫不全者の感染症』(MEDSi)として訳出され出版されることとなり,たいへん勉強になった経験をした。この本は症例提示があってから,症例に関連した項目を学ぶというスタイルで,臨床医にはスッと入ってきやすい本だった。
今回翻訳した“Mayo Clinic Infectious Disease Case Review”も同様の症例提示から学ぶスタイルで,より勉強の対象が細菌,真菌,ウイルス,寄生虫と幅広く扱われており,HIV についても複数項目で取り上げられている。さらに,日本では経験しにくい感染症についても扱われており,教科書で項目だけ見ていても今ひとつ実感が湧かないものを,本書では症例提示を通して疑似体験できるようになっている。さらに感染症コンサルテーションでは非感染症も鑑別となることがしばしばあり,悩ましい鑑別診断の1 つとして非感染症症例についても言及されている。これらの内容は,ある程度基礎的な感染症の知識をつけた人が,もう一段階上の知識をつけたいときにうってつけの本だと思う。最後に「With Board-Style Questions and Answers」としてQ&A 集もついているので,知識の確認に活用していただきたい。
1 人での翻訳作業はたいへんだったが,意外にも楽しく感染症の勉強をしながら翻訳できたという満足感が辛さを上回った形となった。移動の合間や休日に読むのもよいだろうし,科の輪読会などで活用してもらうのもよいかもしれない。本書が楽しく感染症を勉強したい臨床医の役に立つことを願っている。

織田 錬太郎
多摩総合医療センター感染症内科医長・診療科長


原著序文

現在流行しているCOVID–19(新型コロナウイルス感染症)は,これまで多くの医療従事者や一般市民が認識していなかった感染症の多くの側面を浮き彫りにしている。疾患の詳細な臨床的特徴が強調されただけでなく,予後が悪化するリスクの高いさまざまな集団も特定された。さらに,COVID–19 の治療と予防の安全性および有効性が多くのメディアの場で広く議論され,パンデミックをコントロールするための社会的措置がよく知られるようになり,その判断が政治的な影響さえももたらすようになっている。
 感染症における喫緊の課題は2020 年以前にも存在しており,パンデミックの間にもそのような取り組みがなされてきたことは称賛に値する。抗菌薬および診断のスチュワードシップ活動などのいくつかの重要な問題がパンデミック中にも課題となってきた。抗菌薬のスチュワードシップ活動の問題については抗菌薬耐性,薬剤関連有害事象,コストを減らすという目標が,医療機関や国際的プログラムの焦点となっている診断のスチュワードシップ活動の問題については医療費が劇的に増加し,さまざまな診断ツールが不適切に乱用されている。例として,COVID–19 に関連した呼吸器疾患患者に二次性細菌感染のカバーを行うかどうか,またはSARS–CoV–2(severe acute respiratory syndromecoronavirus 2:新型コロナウイルス)感染の微生物学的証拠のためのスクリーニングの最適な頻度,種類,時期について,難しい問題を抱えている。
 本書は,プライマリ・ケアの臨床医や感染症専門医が直面する,現代の疾患の多くを取り上げた教科書である。そのタイトルが示すように,全部で54 の症例が提示されており,この枠組みは多くの点で「ケースカンファレンス」形式の目的を反映した素晴らしい教育的ツールとして役立っている。我々の施設の専門分野のさまざまな領域から数十名の著者が参加しているため,特定の感染症症候群についてしっかりとした臨床的検討がなされている。さらに,Q&A のセクションは,疾患の診断や管理,予防についての知識を固めたいと考えている,あらゆるレベル,あらゆるタイプの臨床医に,教育的で役立つ内容となっている。
 感染症専門医の特徴としてよく知られているのは,疫学に重点をおいていることであり,この特徴は臨床キャリアを成功に導くうえで大いに役立っている。おそらく,感染症医である我々が執念深く患者を調べていることが,他の診療科から「感染症医に関与してほしい」と望む鍵となっている。このような視点は読者が疾患の疫学と,病原体に基づく早期診断のインパクトについてより深く理解できるように,各章で明らかにされている。
 微生物検査室における進歩は,明らかに感染症の診断と管理に影響を及ぼしてきた。自動化システムは検査室活動に革命をもたらし,検査室内の作業領域さえも進化させた。この教科書では,これらの検査ツールの多くと,検査結果の解釈方法を取り上げており,これらの検査結果は現在ではほとんどがワープするようなスピードで入手できることが多い。その結果,経験的治療(そしておそらくは誤った治療)の期間が短縮され,その後に特異的な治療が開始されることとなり,個々の患者に恩恵をもたらしている。
 我々は本書が,日常診療のなかでさまざまな感染症症候群の鍵となる側面について,より理解を深めたいと考えている多忙な臨床医にとって役立つものとなることを願っている。また,本書は,感染症に関する基礎知識を評価する専門医試験の準備をしている研修医にも役立つものとなるであろう。

Larry M. Baddour, MD, FIDSA, FAHA
Supplemental Consultant for Research Division of Infectious Diseases, Mayo Clinic
Professor Emeritus of Medicine
Mayo Clinic College of Medicine and Science_

2024-03-15

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

12ページ表4.1の「6週間後」の1行目
(誤)6
(正)6,000

15ページ左段の下から10〜11行目
(誤)腹膜がん腫症
(正)腹膜播種

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