小児集中治療ケーススタディ - ゼロから学ぶ病態生理 -

小児集中治療は、まずこの本から!

初学者がまず知っておくべき小児集中治療医学のエッセンスを凝縮したテキスト。臨床の場でよく遭遇する64の症例から問題が提示され、解答を考えることで病態生理や治療法の理解を深め、実臨床に直結する力を身につけることができる。集中治療医や小児科医、救急医をはじめPICUに関連する医療従事者に有用。

¥4,400 税込
稲田 雄(Assistant Professor, Department of Pediatrics, Division of Critical Care, Baylor College of Medicine, Texas Children’s Hospital North Austin Campus)
ISBN
978-4-8157-3130-4
判型/ページ数/図・写真
B5 頁144 図107
刊行年月
2025年7月
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はじめに
症例 1 術後に低酸素血症となった15歳の女児
症例 2 食後に呼吸困難となった10歳の女児
症例 3 細気管支炎で入院した2か月の男児
症例 4 蒼白で活気がない14か月の男児
症例 5 抜管後に吸気時喘鳴と陥没呼吸を認める6か月の女児
症例 6 人工呼吸管理中の16歳の女児
症例 7 意識障害と低血圧を認める7歳の女児
症例 8 低カリウム血症・低カルシウム血症の14歳の男児
症例 9 2階の窓から転落した3歳の男児
症例 10 敗血症性ショックののちに乏尿となった12歳の女児
症例 11 在胎26週で出生した生後8か月の男児
症例 12 火災現場から救出された4歳の男児
症例 13 院内心停止となった1か月の女児
症例 14 哺乳低下し傾眠となっている生後7日の男児
症例 15 意識障害と無呼吸で来院した4か月の女児
症例 16 人工呼吸管理中で抜管前の9歳の女児
症例 17 心不全で人工呼吸管理中の12か月の女児
症例 18 呼吸苦を主訴に来院した喘息の既往がある10歳の男児
症例 19 救急外来で挿管された8か月の女児
症例 20 大量に吐血した2歳の男児
症例 21 事故後に意識障害のある8歳の男児
症例 22 入院後も呼吸障害が悪化する4か月の女児
症例 23 嘔吐・活気不良・多尿で来院した3歳の女児
症例 24 焼き肉を食べたあとに血性下痢と嘔吐で来院した4歳の女児
症例 25 慢性腎臓病の悪化で代謝性アシドーシスを認める2か月の男児
症例 26 低酸素血症をきたした肺高血圧症の既往のある5か月の男児
症例 27 慢性肺疾患と骨折の既往がある7か月の女児
症例 28 体重減少で入院した15歳の女児
症例 29 てんかん発作後に気管挿管された12歳の女児
症例 30 気管切開術後の8歳の男児
症例 31 急性白血病が疑われる11歳の女児
症例 32 多発外傷を負った10歳の男児
症例 33 意識障害で来院した肥満のある17歳の男児
症例 34 VA-ECMO中に低酸素血症となった3か月の男児
症例 35 痙攣重積後に高血圧を認める11歳の女児
症例 36 嘔吐と下痢を主訴に来院した2歳の男児
症例 37 肺炎後に急性呼吸窮迫症候群と診断された10歳の男児
症例 38 顔色不良・活気不良の生後5日の女児
症例 39 動悸を主訴に受診した12歳の男児
症例 40 多発外傷で入院中に容態が悪化した14歳の男児
症例 41 哺乳低下と傾眠のため来院した生後4日の男児
症例 42 心室中隔欠損修復術後に突然血圧が低下した5か月の男児
症例 43 人工呼吸中に血圧が低下した6歳の男児
症例 44 人工呼吸中に大きな脈圧変動が見られる11歳の女児
症例 45 気管支喘息重積発作で人工呼吸中の14歳の女児
症例 46 心房中隔欠損修復術後の6歳の女児
症例 47 手術室で抜管後に急性呼吸不全をきたした10歳の男児
症例 48 Glenn手術後の8か月の女児
症例 49 吐血後に尿量の低下した慢性肝不全の4歳の男児
症例 50 Norwood手術後の日齢6の男児
症例 51 Glenn手術後の5か月の女児
症例 52 処置鎮静中に換気困難となった新生児
症例 53 大動脈スイッチ手術後の生後7日の女児
症例 54 下垂体腫瘍摘出術後の10歳の女児
症例 55 大動脈スイッチ手術後に再挿管となった新生児
症例 56 呼吸困難とふらつきで来院した7歳の男児
症例 57 大動脈スイッチ手術後の日齢7の女児
症例 58 Norwood手術後に吸気性喘鳴がみられる新生児
症例 59 頭部外傷後に神経学的評価が必要な10歳の女児
症例 60 fenestrated Fontan手術の既往がある4歳の女児
症例 61 気管支喘息重積発作を起こした心疾患のある17歳の男児
症例 62 心室中隔欠損症の根治術後に徐脈となった6か月の男児
症例 63 VV-ECMO中に低酸素血症となった15歳の女児
症例 64 VV-ECMO中に低酸素血症がみられる6歳の男児
索引

はじめに

 私が初めて小児集中治療に触れたのは,今から15年以上前のことです。大阪母子医療センターで小児科専門医として研修していた際,小児集中治療室(PICU)での研修の機会を得たのが始まりでした。集中治療の専門性と,そこで働く先生方の人柄に惹かれ,次第にこの分野を専門にしたいと思うようになりました。ちょうど米国での臨床研修を目指していたこともあり,「米国で小児集中治療を本格的に学ぼう」と決意しました。
 米国での研修生活は,英語の壁もあり想像以上に困難なものでした。プレゼンテーションやコミュニケーション能力に自信がなかった私は,「知識だけは誰にも負けないように」と必死に勉強しました。その時に大いに役立ったのが,米国小児科学会が発行するPREPという問題集です。症例ベースの設問に取り組みながら,関連知識を体系的に学べるこの教材によって,実臨床に直結する力が身につき,次第に指導医からも信頼されるようになりました。
 本書は,まさにその学習スタイルを踏襲したものです。PICUで遭遇するような症例に関連する問題を通じて,病態生理や治療法の理解を深められるよう工夫しています。小児集中治療医学のエッセンスを凝縮し,「小児集中治療に興味をもったら,まずはこの本から始めよう」と言っていただけるような一冊を目指しました。病態生理に基づく理解の深化を主眼に置いており,ガイドラインの単なる暗記に終始するような問題はできる限り避けています(ただし,重要なガイドラインについては必要に応じて言及しています)。病態生理の理解は,時間が経っても色あせることがありません。だからこそ,どんなときも基礎に立ち返る学びを大切にしていただきたいと願っています。
 本書は,小児集中治療のすべての分野を網羅することを目的としていません。むしろ,学びの入り口として位置づけています。小児集中治療には『Rogers' Textbook of Pediatric Intensive Care』のような大著もありますが,その膨大な内容に圧倒され,「どこから手をつけてよいのかわからない」という声も少なくありません。本書で疑問や興味が湧いた際には,ぜひ成書や参考文献に立ち返って,さらに知識を広げていただければと思います。
 本書の読者として想定しているのは,小児集中治療医に限りません。小児重症患者の診療にかかわるすべての方に手に取っていただきたいと考えています。たとえば,小児科医,集中治療医,麻酔科医,救急医,看護師,臨床工学技士などです。問題形式にしていますので,クイズ感覚で気軽に取り組んでいただけます。一人での学習はもちろん,職場の勉強会などでも活用していただければ幸いです。「答えはこう書いてあるけれど,実際にはよりよい管理法がある」「ここはわかりにくいが,こういうことを意味している」など,議論や教育のきっかけとして使っていただければ望外の喜びです。
 本書で扱った内容は,小児集中治療のごく一部にすぎません。また,内容に偏りがあると感じられる点があれば,それもすべて私の責任であることを申し添えます。それでも本書の趣旨にご賛同いただき,「自分も後輩のために役立つ症例問題を作って本書の第二弾をつくりたい」と思ってくださる方がいれば,ぜひご連絡ください。
 私はもともと,人に教えることが得意なタイプではありません。それでも,アメリカや日本で学んだことを後輩たちに少しでも還元したいという思いから,本書の執筆を決意しました。何年も前に完成させるはずだったのに,途中,何度も筆が止まってしまった私に,根気よく付き合い,励まし続けてくださったメディカル・サイエンス・インターナショナルの金子史絵さんに,心から感謝申し上げます。

2025年初夏 テキサス州オースティンにて
稲田 雄

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