そうだったのか! 臨床に役立つ心臓の発生・再生

思わず「そうだったのか!」と膝を叩く
循環器臨床・再生医療の“カギ” は発生の理解にあり
先天性疾患に限らず発生が関係する心血管疾患,そして臨床応用目前の心臓再生医療を理解するうえでのカギとなる「心臓発生」を,循環器臨床に近い視点から解説。心臓の発生-解剖-機能を関連づけて理解することで,様々な心疾患の背景が見えてくる。また,期待が高まっている再生医療についても,発生と関連づけてわかりやすく整理。循環器臨床医の理解を助けるよう配慮した図表・コラムも多数。
¥4,950 税込
著:古川哲史 東京医科歯科大学難治疾患研究所 生体情報薬理分野教授
ISBN
978-4-89592-826-7
判型/ページ数/図・写真
A5変 頁192 図・写真106
刊行年月
2015/9/10
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Part 0 本書を読み始める前に

1. 発生が難しい3つの理由
2. 本書の構成

Part Ⅰ 発 生

A. 比較発生:陸上生活に伴う心臓の進化
1. 生物の陸上化に伴う進化発生
2. 生物が水中から陸に上がるときに起きた心血管系の変化
B. 心臓発生:総論
1. 第1段階:心臓領域の形成心臓は中胚葉からできる
2. 第2段階:原始心筒の形成
3. 第3段階:ルーピング
4. 第4段階:心筒内部の発生
5. 心臓の特殊構造の発生
C. 心臓発生:各論
1. 心臓の左右の起源
2. 第1心臓予定領域と第2心臓予定領域
3. 第2心臓予定領域遅れて加わる心筋細胞が曲者
4. 心腔の形成
5. 中隔の形成
6. 弁の形成
7. 刺激伝導系の発生
8. 冠動脈の発生
9. 心臓の神経系の発生
10. 大血管系の発生

Part Ⅱ 発生と心疾患

A. 主な先天性心疾患
1. 心室中隔欠損症―3構成要素 (漏斗部・膜様部・筋性部) の癒合
の失敗?
2. 心房中隔欠損症一次中隔と二次中隔の異常
3. Fallot四徴症第2心臓予定領域病?
4. 完全大血管転位―回転不足が原因?
5. 動脈管開存動脈管は収縮する運命にある血管?
B. 発生異常で起こる心筋疾患
1. 不整脈原性右室心筋症なぜ右室優位,脂肪変性,不整脈原性?
2. 左室心筋緻密化障害第3の心筋症
C. 発生に関係する不整脈疾患
1. WPW症候群房室管の絶縁の失敗が原因?
2. 心房細動高齢者に多い疾患にも発生が関係
3. Brugada症候群第2心臓予定領域病?
D. 発生に関係するその他の心血管疾患
1. Kartagener症候群に伴う右胸心
2. 大動脈2尖弁実は最も多い先天性心疾患
3. 解離性大動脈瘤好発部位が発生と関係
4. 肺高血圧症-第2心臓予定領域から発生
5. 褐色細胞腫神経堤疾患

Part Ⅲ 再 生

A. 心筋細胞は生後も分裂できる
1. ヒト心筋細胞が出生後新たに誕生する証拠
2. 3つの異なる心筋再生の戦略
B. 既存心筋細胞の細胞周期への再導入
1. 細胞周期への再導入
2. パラクリン因子を用いた戦略
C. 細胞移植治療
1. 骨格筋芽細胞の移植
2. 多能性幹細胞 (ES・iPS細胞) を用いた試み
3. 心臓非局在の幹細胞を用いたアプローチ
4. 心心臓局在の幹細胞を用いたアプローチ
5. 幹細胞が心機能を改善するメカニズム
D. ダイレクトリプログラミング
1. GMT因子・GHMT因子によるダイレクトリプログラミング
2. マイクロRNAを用いたダイレクトリプログラミング
3. in vivoにおけるダイレクトリプログラミング
4. 心筋細胞から刺激伝導系細胞へのリプログラミング
E. 心臓再生医療および本書全体のまとめ

 筆者は学生時代,発生の授業が苦手だった。なぜ発生が苦手だったのか当時は自覚がなかったが,今振り返ってみるとどうも立体的に物事を考えることが生来不得意のようだ。中学生のとき,学校で知能検査が行われた。クラスの中で勉強はそんなにできるわけではなかったが,見直しを2回もしたという猛者がいた。どうせはったりだろうとたかをくくっていたら,学年で圧倒的トップの知能指数だった。一方,筆者はどうだったかというと,特にブロックを組み合わせるような立体図形の問題にやたら時間がかかってしまい,最後まで行き着かなかった。このころからすでに,どうも立体的な考え方が苦手だったようだ。そういえば,その後も代数は得意だったが幾何は苦手だった。専門を選ぶときにも,立体感覚の必要な外科は選ばず,内科を選んでいる。無意識のうちに立体的な思考が必要なものを避けてきた気がする。心臓発生も何となく以前から興味をもってはいたのだが,やっぱり手を出す決心がつかないままでいた。
 そんな自分が教授になったことを契機に,なんと心臓の発生の授業を担当するはめになった。これは困ったことになったぞと思い,2007年の夏に一大決心をして英語の心臓発生の教科書を1冊買い,1ページから読み進めた。すると実に面白く,ひと夏の間に250ページ以上ある英語のテキストを3回も読み直してしまった (1回では理解できなかったということでもあるのだが……) 。その教科書はちょうどその年 (2007年) に発売されたもので,実にいいタイミングで良い本にめぐり合うことができたものだ。これによって,多くの疾患が発生と関係することがわかり,発生の授業も何とかこなしている。
 そんなわけで本書は,非発生学者が書いた心臓の発生・再生のテキストである。発生学者と同じレベルのテキストは到底書けないが,機能や疾患との関わりを重視した元循環器内科医,現循環器生理・薬理研究者ならではの発生のテキストが書ける可能性もあるだろう。発生学者からみると物足りないところだらけに違いないが,臨床家にとってはむしろとっつきやすいテキストになるのではないかとひそかに期待している。本書が循環器の日常臨床に直接的に役立つことは少ないかもしれないが,発生の観点からの視野を加えて日常臨床にあたっていただけると,治療戦略にも幅が出てくるのではないだろうか?
 また,2014年に滲出型加齢黄斑変性症の患者にiPS細胞由来の網膜細胞の移植が世界初の臨床研究として行われ,心臓の再生医療が臨床応用される日も遠くないだろう。心臓の再生過程と発生は切っても切れない関係にある。臨床医にとって,来たるべき心臓再生医療に備える意味でも発生の基本概念を知っておくことは重要だろう。本書がその一助になれば望外の喜びである。
*       *       *
 最後に,本書を完成させるにあたって多くの貴重なご助言をいただいたメディカル・サイエンス・インターナショナルの染谷繁實氏に深く感謝いたします。

2015年8月
古川 哲史

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