外来診療の型 - 同じ主訴には同じ診断アプローチ! -

今すぐ実践!“What to”(収集すべき情報)を示した “How to”本

著者考案による代表的な主訴に対する問診・身体診察・検査の「型」を活用した、新しい診断マニュアル。具体的な“What to”(収集すべき情報)を明示した「型」で鑑別疾患を抽出し、厳選した例題で診断に至るまでの “How to”(方法)を理解していく。外来患者の愁訴を解決したいのに「アプローチ法がわからない」、「臨床情報の解釈が難しい」、「診断学を実臨床でうまく使えない」と悩むすべての医師へ、診断に着実に近づくための技術を伝授する。



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週刊医学界新聞 第3386号(2020年9月7日) Medical Library 書評・新刊案内



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medicina 57巻12号 (2020年11月)

¥4,950 税込
鈴木慎吾
ISBN
978-4-8157-0193-2
判型/ページ数/図・写真
A5 頁280 図50 表42 写真16
刊行年月
2020年6月
数量
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総 論
1 外来診療の大前提
2 診断推論の基本
3 情報の構成要素とその解釈
4 診断推論のトレーニング法


各 論
1 むくみ・腫れ
外来診療の型:むくみ・腫れ 編
例題1 76歳男性【主訴】両足のむくみ
例題2 35歳女性【主訴】足のむくみ
例題3 60歳男性【主訴】両足のむくみ
例題4 72歳女性【主訴】両足がむくむ
例題5 68歳女性【主訴】右足のむくみ
例題6 52歳男性【主訴】左ほほの腫れ

2 咽頭痛
外来診療の型:咽頭痛 編
例題1 35歳女性【主訴】喉が痛い
例題2 22歳男性【主訴】喉が痛くて熱が出る
例題3 18歳男性【主訴】喉から胸にかけて痛い

3 咳 嗽
外来診療の型:咳嗽 編
例題1 72歳女性【主訴】発熱,咳嗽
例題2 30歳男性【主訴】咳

4 頭 痛
外来診療の型:頭痛 編
例題1 63歳男性【主訴】頭が痛い
例題2 34歳女性【主訴】頭痛
例題3 28歳男性【主訴】発熱,頭痛

5 腰背部痛
外来診療の型:腰背部痛 編
例題1  25歳男性【主訴】腰痛
例題2  60歳男性【主訴】腰痛、足のしびれ
例題3  34歳女性【主訴】左肩甲骨の横の痛み

6 胸 痛
外来診療の型:胸痛 編
例題1 60歳男性【主訴】胸痛
例題2 76歳男性【主訴】胸が重苦しい

7 悪心・嘔吐・下痢
外来診療の型:悪心・嘔吐・下痢 編
例題1 35歳男性【主訴】発熱,下痢
例題2 74歳男性【主訴】吐き気,だるい
例題3 38歳女性【主訴】吐き気がして食事がとれない

8 腹 痛
外来診療の型: 腹痛 編
例題1 68歳男性【主訴】右脇腹の痛み
例題2 30歳男性【主訴】腹痛
例題3 32歳女性【主訴】胃が重苦しい

最終診断名一覧
索引

私が好きな日本酒に『澤屋まつもと』という京都の銘柄がある。ラベルには「守破離」の文字が刻まれており,これは進化のプロセスを
守:教わった型を守る
破:より良い型を創造し既存の型を破る
離:型から離れて自由自在に扱える
の3段階で表したものである。松尾芭蕉も「型を守るだけでは不十分,型を学ばないのは邪道,型を身につけ発展させることで初めて会得できる※」と述べており,こ れは技能習得における一つの真理と言える。
 守破離の視点から外来診療を眺めてみると,型を学べる環境が乏しいように思う。入院診療では複数の医師で回診して所見や考え方を共有できるが,外来では不安を抱えながら一人で対応し,疑問点を相談する程度である。この場合,外来特有の演繹法的推論(仮説に基づく臨床情報の積極的収集)の習得は難しく,身体診察や検査で異 常所見を認めなければ医師・患者ともに不満の残る邪道な外来になりやすい。
 こういった状況の中,千葉大学医学部附属病院総合診療科(千葉大総診)では,初診医が診断とその根拠を添えて指導医にプレゼンテーションし,フィードバックを受 けてから指導医の診察を見学するという画期的な外来研修システムが確立されていた。さらに千葉大総診には日本全国(ときに海外)から診断困難症例が集積するため,生坂政臣教授が「離」の問診で次々と診断していく姿を目の当たりにし,あるいは毎週の教育的症例カンファレンスを通じて,問題解決に必要な型を一つ一つ学習することができた。ロールモデルと教育システムの重要性は明らかである。
 2020年度から臨床研修医の外来研修が必修化され,教育体制を整えようとする動きが見える。しかし,千葉大総診方式の教育システムは,人材不足,指導医の過剰労働,診療報酬制度を考えれば現実的ではない。特に市中病院では教育に割ける時間が限られるため,ポイントを絞ったフィードバックが当面の目標であろう。
 これまで外来診療教育に携わった結果,初学者の悩みは「何を聞いたらよいかわからない」が最多であった。加えて,指導医からすれば研修者が最低限の初期評価を済ませていれば一歩進んだ内容を教示できるため,遭遇頻度の高い主訴ごとに問診・身体診察・検査の基本型を用意したのが本書である。
 個別性の高い外来診療において無謀な挑戦であるが,本書では時間的制約も考慮して最低限の問診と身体診察に絞り,検査を終えたときには大方の鑑別が網羅できている内容を目指した。また,想起した疾患のなかから一つの診断に絞り込むには所見の適切な解釈を要するため,総論でその概要を述べ,各論では汎用性のある例題を用いて具体的な思考過程を示す形式にした。外来診療に携わる先生方の「型」形成に少しでも貢献できたら幸甚の至りである。
 本書の制作にあたっては,生坂政臣教授が実践する診断推論技術を千葉大総診で学び,研鑽した日々が基盤となっている。お世話になった教室員の先生方に心より御礼申し上げたい。また,本書の完成にはメディカル・サイエンス・インターナショナル の長沢雅氏による多大なる尽力が不可欠であった。執筆に集中できたのは妻の協力の おかげであり,娘と2人の息子たちの成長は新たな挑戦への原動力となった。ここ に深く感謝の意を表したい。
2020年5月
千葉中央メディカルセンター内科 医長
鈴木慎吾

本書の発行に寄せて
 この本の著者であり,私ども教室同門の鈴木慎吾君が序文で紹介している「守破離」はまったくの偶然であるが,私の座右の銘でもある。ただし私の場合は日本酒のラベル経由ではなく,学生時代に修業した少林寺拳法教範の基本を重視せよという教えからである。
 私が所属した大学拳法部では,毎日繰り返す突き蹴りに部員ごとの“個性”があった。当時主将を務めていた私は,個性のある“基本”を好ましいものととらえていた。ところがある日,全国から総本山に集まった拳士との合同練習で,まったく異なる風景を目の当たりにした。強豪校の部員の突き蹴りが寸分違わず皆そろっていたのである。乱取り(実践形式の組み手)も強かった。
 そこで学んだのは,レベルの高い集団は漫然と基本を繰り返しているのではなく,その動きから一切の無駄を削ぎ落としているということであった。エッセンシャルミニマムだからこそ,体型や運動能力によらず,全員の動きがそろうのである。その突き蹴りに個性は見られないが,見る者を圧倒するシンプルな美しさが確かに存在した。
 以来,私は次のことを心がけるようになった。すなわち個のレベルを上げるには集団のレベルを等しく上げる必要があり,集団が同じ型を身につけるためには,それが可能なかぎりシンプルでなくてはならないということを。
 突き蹴りのような単純な動作にも暗黙知が多い。ましてや複雑な認知を要する診断プロセスは暗黙知の塊であるため,現場では可能なかぎりその言語化と単純化を心がけてきた。
 このたび教室同門随一の理論派である著者は,これら言語化・単純化されてはいるものの,なお複雑に感じる診断プロセスを,総論でひとつの流れとして可視化してくれた。これだけでも十分に素晴らしい仕事であるが,本書の真骨頂は各論で症候別に抽出された“診断の型”にある。
 指導医と学習者の対話に当教室の診断学の極意が凝縮されており,読み進めるうちに一般外来で想起すべきcommon disease の非典型例と,プライマリ・ケア医のピットフォールになる一連の疾患群が身につくような構成になっている。彼独特のウィットに富んだ表現も随所にちりばめられ,クスッと肩の力が抜けるのもよい。ユーモアや笑いは成人学習に必須というのも私ども教室のモットーである。
 “千葉大総診”診断学の守るべき型を伝える一冊がここに完成した。
千葉大学大学院医学研究院診断推論学 教授
千葉大学医学部附属病院総合診療科 科長
生坂政臣

2020-07-01

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

p.55 脚注欄

(誤)*9 保険適用は妊婦のみ。
(正)*9 紅斑を認める15歳以上の成人でパルボウィルス感染症を強く疑う場合,保険適用である(以前は保険適用が妊婦に限定されていた)。

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