外来診療の迷宮に踏み込んだら「型」!待望の続編
よくある主訴に対する問診・身体診察・検査等に際して、著者オリジナルの「型」を活用し診断に導く「外来診療の型」の続編。診断の流れと文献の活用・解釈法を中心に診断推論の基本を扱った総論と、外来での遭遇頻度が高く原因特定が難しい6種の愁訴(めまい・一過性意識障害・倦怠感・関節痛・しびれ・発熱)を取り上げた各論の2部構成。各論は対話形式で“熱心な指導医”と共に問題点の明確化、疾患の想起と検証を疑似体験でき、「診療の型」が身につく。
総論
1 臨床と文献
2 診断と文献の活用
3 文献の解釈
各論
1 めまい
外来診療の型:めまい 編
例題1 58歳女性【主訴】めまい
例題2 52歳男性【主訴】めまいがして気持ち悪い。嘔吐
例題3 31歳女性【主訴】めまい
例題4 61歳男性【主訴】めまい感,ふらつき
2 一過性意識障害
外来診療の型:一過性意識障害 編
例題1 29歳女性【主訴】気を失った。けいれん
例題2 75歳女性【主訴】失神
例題3 80歳女性【主訴】トイレで倒れ,救急車で運ばれた
例題4 54歳女性【主訴】突然意識が飛ぶ
3 倦怠感
外来診療の型:倦怠感 編
例題1 62歳男性【主訴】疲れる,だるい
例題2 67歳女性【主訴】倦怠感
例題3 42歳女性【主訴】だるさがとれない
4 関節痛
外来診療の型:関節痛 編
例題1 34歳男性【主訴】左膝の痛み
例題2 77歳女性【主訴】肩から背中の痛み
例題3 50歳男性【主訴】両膝の痛み
5 しびれ
外来診療の型:しびれ 編
例題1 30歳男性【主訴】両手のしびれ
例題2 73歳女性【主訴】両足のしびれ
例題3 56歳男性【主訴】両足のしびれ
6 発 熱
外来診療の型:発熱 編
例題1 81歳女性【主訴】認知症
例題2 60歳男性【主訴】熱が続く
例題3 38歳女性【主訴】発熱,咳
最終診断名一覧
カラー図版
索 引
本書は『外来診療の型』の続編である。前書で診断学の概要に触れた総論は,今回,内容を一歩進めて「疾患のrule in/rule out」の実践法とそのもとになる文献の活用法について考察した。
各論では,原因の特定が難しい6つの愁訴で“型”を作成した。「めまい」は耳鼻科疾患だけでなく,神経疾患,心血管疾患,内分泌疾患,自己免疫・自己炎症性疾患,精神疾患などさまざまな可能性がある。「一過性意識障害」は内科外来よりも救急外来で遭遇するが,めまいの理解にも重要なため2つ目の症候とした。「倦怠感」は無数の疾患が原因となりうる曖昧な訴えであり,アプローチ法がないと途方に暮れやすい。「関節痛」も多領域にまたがる難症候で,鑑別表を見ただけでは診療方針を立てづらい。「しびれ」は複雑な神経学的評価を要し,神経内科だけでなく整形外科,膠原病科,感染症科,内分泌科,循環器科,精神科などが関係する。そして「発熱」は内科外来で避けて通れない症候であり,遷延した場合には幅広い考察を要するため大トリに位置づけた。
本シリーズは「内科新患外来で困窮した研修医時代の自分に推薦できる本」を目標に作成しており,前書は第一線で活躍される先生方にご講評いただいた(下記QR コードのリンク先からメディカル・サイエンス・インターナショナルのウェブサイト参照)*1。一方で,現在の研修医にとって有用かが気がかりであったため,外来研修必修化の初代研修医を代表して,岡崎太郎君に同期(岡田樹君,小見山雅道君,山内麻央君)の意見を含め「本書の発刊に寄せて」にまとめてもらった*2。前書の特徴,使った感想,オススメの利用法,そして欠点を含めてもらうよう依頼したので,総論の「3 文献の解釈」に基づいてlimitation(限界)を考慮しながら読んでいただきたい。なお,本書完成まで筆者自身はその文面を読まないこととしている。
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前書に引き続き,診断学を体現しつつ教育にも尽力されている生坂政臣教授をはじめ千葉大学医学部附属病院 総合診療科教室員の先生方,そして日々応援してくれる妻・娘・息子たちに,心より感謝したい。千葉中央メディカルセンターおよび近隣の医療機関の先生方には,本書の例題を含む日々の診療で大変お世話になっている。研修医の熱意と素朴な疑問は,初心を思い出させるだけでなく,ときに物事の本質を考えるきっかけを与えてくれる。自由奔放な息子を辛抱強く育ててくれた父母へとともに,ここに深く感謝の意を表したい。
2022 年8 月
千葉中央メディカルセンター 内科 医長
鈴木 慎吾
* 1 会員登録が必要なサイト等のリンクは割愛した。また,多くの方々から私信で貴重なご意見をいただいた。
* 2 岡崎太郎君は2020 年度の基本的臨床能力評価試験(全国の研修医7,669 名が受験)で1 位を獲得した。2021 年度の同試験では,同期4 人の平均点が418 病院中1 位であった。ペーパーテストの結果は研修の一側面に過ぎないが,現場へ頻回に足を運び,疑問点を調べ,関係者と協力・切磋琢磨して熱心に研修した結果と確信している。おめでとう!