終末期ディスカッション - 外来から急性期医療まで 現場でともに考える -

  • 未刊

2021年10月中旬発売予定!



 



・本書のゴールは,患者と家族が「これでよかった」と思える意思決定支援に向けて必要な考え方を身につけること。

・「患者中心の意思決定」に取り組むにあたり,まずPart 1では「臨床倫理での基本的な考え方」を学ぶ。Part 2では患者,家族,医療従事者がそれぞれ「どのようにコミュニケーションをとっていくか」を豊富な事例と重要なエビデンスに基づき解説する。Part 3では「ACPの実際の方法」を扱う。

¥4,070 税込
平岡栄治 東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科・則末泰博 東京ベイ・浦安市川医療センター呼吸器内科/救急集中治療科集中治療部門
ISBN
978-4-8157-3015-4
判型/ページ数/図・写真
A5 頁284 図16
刊行年月
2021年10月
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本書で正しい悩み方を
一緒に考えていきましょう

誰もが,自分,そして大切な人の病気や死と無縁なままでは生きていくことはできません。人にはさまざまな人生,背景があり,それぞれが異なった価値観をもっています。残りの人生をどのように生きたいか,死が間近に迫ったときは最後の時間をどのように過ごしたいか,などの考え方が異なることは言うまでもありません。しかし医療現場では,いままでの慣習,生命に対するそれぞれの医療従事者の価値観,法的に訴追されることへの恐れ,マスコミなどから非難されることへの恐れなど,さまざまな要因から患者の意思や利益を尊重した医療が行えていない現状があります。患者と家族だけでなく,医療従事者も日々迷いながら診療を続けています。
 本書は,意思決定のジレンマについて,経験と知識が豊富な医師Aと,自分なりに解決方法を日々模索しながら診療を続けている医師Bという2人に登場してもらい,その対話を通して,患者とその家族が「これでよかった」と思うことができる意思決定支援をどのように行っていくかについて解説します。なお,各パートの最後には,患者とその家族の立場から医療チームにどのように働きかけるべきかについて,「患者さんとご家族へのメッセージ」としてまとめて載せています。特に非医療従事者の方はこの「患者さんとご家族へのメッセージ」から読み始めると,本文の理解がしやすいかもしれません。また,事例の紹介のなかに医学的な専門用語が出てくることもありますが,用語を理解できなくても内容は理解できるような構成になっています。気にせず読み進めてください。そして,大切な内容については章をまたいで何度も何度も繰り返し説明します。「患者中心の医療」のために,正しい悩み方を一緒に考えていきましょう。

則末泰博
(東京ベイ・浦安市川医療センター呼吸器内科部長/
救急集中治療科集中治療部門部長)


目の前の患者さん中心の
意思決定のために

1992年に神戸大学医学部を卒業後,日本で医師を9年間したのち,2001年から3年間,ハワイ大学内科で研修をする機会がありました。さまざまなことを1から学び,特に緩和ケア,医療倫理,老年医学はそれまでまったく学ぶ機会がなく,その後の医師人生に大きな影響を受けました。日本でも毎日のように倫理的ジレンマを感じる事例に出会います。
・高齢の重症脳梗塞患者さんで,救命はできたが意識が回復せず,人工栄養依存状態で数か月たち,「本人が元気だったころ,こういった状態では生きていきたくないと言っていた。このまま継続してもよいのか? やめたいといったらやめてもいいのか?」と悩んでおられるご家族
・高度認知症で「以前は,本人や主治医と話し合って,自分で食べることができなくなれば,人工栄養をせず,胃ろうも作らず自然死を迎えることを話し合っていたが,いざそうなるとやはり父には生きていてほしいです,息子としては胃ろうを作ってほしいですが,これは間違いでしょうか?」と悩んでおられる息子さん
・「元気になり,やりたいことができるようになるのを期待して受けた手術の合併症で,長期間,集中治療室から出ることができず,負担の大きな治療を受けながら1〜2か月以内には亡くなることが予測されたら,その方にはいったいどう対処したらいいのだろうか?」と悩んでいる病院スタッフ
 みな,「目の前の患者さんにとっての最善の意思決定は何か」と悩んでいます。

 米国での研修中,定期的に医療倫理のレクチャーがあり,「倫理的に正しい」とはどういうことか,ジレンマをどうやって解決するかを学習しました。そのうえで,人工栄養,人工呼吸器,透析などの継続/中止について,現場で多職種で議論する機会があり,ある事例では生命維持治療が中止され,緩和ケアのみ(ホスピスケア)が施行されていました。入院時から,事前指示書の有無を質問したり,導入したりすることや,プライマリ・ケア医が自分の患者が入院する際は,その書類を持ってきて内容を再度確認していました。根底にあるのは,「目の前の患者さんの価値観に沿った医療を行う」こと(「自己決定の尊重」),そして「これでよかった」と思ってもらえる意思決定支援でした。
「死の質」を意識した医療も大切です。私の勤務している病院は急性期病院,心臓の手術を含む高度な医療を行う機関で,多くの急性期疾患の患者さんや手術が必要な患者さんがいらっしゃいます。集中治療室も完備しています。医療の目的の1つは病気の治癒であり,救命であります。一方,人間であるかぎり,すべての人に死が訪れます。我々の病院でも,年間300人の入院患者さんが死亡されます。日本の統計では,人口12530万人に対し,年間137万人が亡くなっています。厚生労働省の発表では,どの年代の方も,多くは病院で亡くなり(60〜70%),自宅で死亡される方は少ないようです(10〜15%)。最も救命が求められる最重症患者さんが入院される集中治療室の死亡率も15%という報告があります。これらからわかるように,我々のような急性期病院も,救命,病気の治癒,寿命を延ばす医療を行う場だけでなく,治癒できない人,死にゆく人,その家族のケアをする場でなくてはならないはずです。死の質を高める医療(Good quality of dying and death)も重要です。
 これらを日本でも取り入れる必要性を感じ,帰国後は医療と教育に取り組みました。2012年に現病院に異動しましたが,ここはまったく新しい病院で文化をゼロから構築するというチャンスでもあり,院内システムの構築と教育活動を行ってきました。幸い病院長をはじめ,多くの職種の方の理解もあり,外科系(一般外科,心臓血管外科など),内科系(総合内科,循環器内科,腎臓内科などすべての専門科),救急科,集中治療科も,患者中心の意思決定支援の重要性を認識のうえ,システムの構築,実践に協力が得られています。そういった経験をもとに本書を作りました。
 医療者の読者の方,ひょっとしたら非医療者の読者もいらっしゃるかもしれません。意思決定,意思決定支援,終末期医療などについて,少しでもお役にたてれば幸いです。

平岡栄治
(東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科部長)

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