INTENSIVIST(インテンシヴィスト) 2022年1号

特集:長期予後



これといった基礎疾患がなく,昨日まで忙しく仕事をしていた人が急な重症病態へ陥りICU入室した際,治療目標が社会復帰であることに議論の余地はないと思います。しかし,1週間後,治療反応性が悪く,この治療目標が達成できない可能性が高いとしたらどうしたらよいでしょうか。ひたすら救命を目指して治療のescalationを行うことが最善なのでしょうか。ほかの例では,進行した内科疾患のある高齢者が重症病態となり救命救急センターのICUに入室した場合はどうでしょうか。救命救急センターに来たのだから気管挿管して全力で救命を目指すことは最善なのでしょうか。別の議論としては,患者またはその家族に,「救命のために全力を尽くします」と「救命の努力をしましたが厳しい状態です」以外のコミュニケーション方法はないのでしょうか。 本特集は,若手集中治療医が,患者の価値観にもとづいたshared decision makingを行い,最善の医療を提案し,患者双方とお互いに納得できる診療方針をたてられることの支援を主な目的に企画されました。よって,意思決定の際に根拠となり得る予後情報に関する章と,コミュニケーション技法に関する章から構成されています。また,本領域の臨床研究が日本でも活発になることを期待して,多くの章では今後の課題に関して執筆をお願いするとともに,長期予後に関連し日本で利用可能なデータベースについて概説していただく章も設けています。



INTENSIVIST0号(創刊当時の座談会の模様)はこちら




  • 「世界標準の集中治療を誰にでもわかりやすく」をコンセプトに、若手医師の育成や情報交換を目的として発足した「日本集中治療教育研究会」(Japanese Society of Education for Physicians and Trainees in Intensive Care=JSEPTIC)の活動をベースに、年4回発行。

  • 毎号1つのテーマを決め、最新のエビデンスに基づいて、現在わかっていること/わかっていないことを検証、徹底的に解説。施設ごとに異なる診療を見直し、これからの集中治療のスタンダードを提示する。

  • 重症患者の治療にあたる医師として最低限必要な知識を手中に収めるべく、テーマは集中治療にとどまらず、内科、呼吸器、救急、麻酔、循環器にまで及び、ジェネラリストとしてのインテンシヴィストを追求する。

  • 集中治療専門医、それを目指す若手医師をはじめ、専門ナース、臨床工学技士、さらには各科臨床医に対し、集中治療を体系的に語り、議論し、意見交換ができる共通の場(=アゴラ)を提供する。



 











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特定非営利法人 日本集中治療教育研究会




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¥5,060 税込
責任編集:増山 智之(みさと健和病院 救急総合診療科/自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科)・則末 泰博(東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門)
ISBN
978-4-8157-2029-2
刊行年月
2022年1月
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はじめに:重症患者にとって最善の医療へ近づくために〜長期予後とコミュニケーション技術を知る〜
 増山 智之 みさと健和病院 救急総合診療科/自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部

Part 1 総論 ICU患者の短期予後と長期予後
1.死亡というアウトカムについて:患者自身の意思を尊重し,その実現に向けて
 増山 智之
2.死亡以外のアウトカム・集中治療後症候群(PICS):ICU survivorsを知り,どう支えていくか
 金城 紀与史 沖縄県立中部病院 総合内科
【コラム】患者価値観の引き出し方:「どのように生きるか」を念頭に
 中川 俊一 Columbia University Irving Medical Center
3.ICU患者の長期予後の予測:予測モデルは長期予後を予測できるか? 臨床で使用できるか?
 山本 良平 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医療疫学分野
4.ICUにおける予後情報を用いた意思決定の方法:shared decision makingとは?
 牧野 淳 東京都立墨東病院 集中治療科
【コラム】Time-limited trial(お試し期間):不確実な予後に対する選択肢
 則末 泰博 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 呼吸器内科

Part 2 慢性疾患の自然歴および予後予測と終末期像
5.重度認知症患者:「死に至る病」と認識し,推定意思に基づいた治療プランを家族と共に作成する
 植村 健司 メリーランド大学医学部 老年・緩和医療部門
6.慢性心不全患者:ICUにおける末期心不全患者の予後予測,治療,エンドオブライフケア
 大森 崇史 飯塚病院 連携医療・緩和ケア科
7.COPD患者:予後予測,疾患経過,ACPの進め方
 西山 聖也 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
 増山 智之
【コラム】集中治療における緩和ケア:意思決定の場としての家族会議
 石上 雄一郎 飯塚病院 連携医療・緩和ケア科
8.肝硬変患者:回復が見込めるか終末期かをどう判断するか?
 山田 航希 沖縄県立中部病院 消化器内科
 篠浦 丞 国際医療福祉大学 医療マネジメント学科
9.維持透析患者:自然歴や予後を理解し学際的なアプローチで向き合う
 岡田 和也 東京都立墨東病院 集中治療科
【コラム】集中治療における悪い知らせの伝え方:患者の価値観を尊重するための手法としてのVitalTalk
 伊藤 香 帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター

Part 3 主に長期予後を見据えたICU管理と意思決定
10.ARDS survivorsの長期予後:長期予後に向けた急性期管理を
 稲田 崇志,片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
11.sepsis survivorsの長期予後:隠れた公衆衛生上の災害と,それに対する取り組み
 小野 将平 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
 増山 智之
12.CPA survivorsの長期予後:不確実性のある予後予測と意思決定支援
 鈴木 健人,武居 哲洋 横浜市立みなと赤十字病院 救命救急センター
13.くも膜下出血(SAH)の長期予後:重症度と転帰の評価方法から予後予測,リハビリテーションまで
 中川 俊 TMGあさか医療センター 神経集中治療部,脳卒中・てんかんセンター
 江川 悟史 TMGあさか医療センター 神経集中治療部,脳卒中・てんかんセンター/コロンビア大学附属病院 Neurological ICU
14.心臓手術後の合併症とその予後:そして,自施設のICUにおいて,重大な術後合併症とそれによる死亡の頻度が増えていると感じたときの対処法
 増山 智之
【コラム】レセプトデータの可能性:リアルワールドデータを臨床研究に用いる
 笹渕 裕介 自治医科大学 データサイエンスセンター

モデルケース
意思決定が困難な症例へのアプローチ①:正確な予後予測とそれに基づく治療のbest available options
 小野 雄一郎 兵庫県立加古川医療センター 救急科
意思決定が困難な症例へのアプローチ②:当院ICU多職種連携チームによる取り組み
 三井 恵 横須賀市立うわまち病院 集中治療部
 牧野 淳

連載
■最新エビデンスを読む
第2回:Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021(SSCG 2021)
 木庭 茂,片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
■Lefor’s Corner
第43回:Vascular Access and Hemodynamic Monitoring
Part XXIV:Pediatric Vascular Access─Management of Pain and Anxiety
 Mari Saito Department of Pediatrics, Haga Red Cross Hospital
 Alan Kawarai Lefor Department of Surgery, Jichi Medical University
■え?知らないの?遠心ポンプの原理
 〈シリーズ構成:森實 雅司 済生会横浜市東部病院 臨床工学部〉
 後藤 武 弘前大学医学部附属病院 臨床工学部
■集中治療に関する最新厳選20論文
 田邊 翔太 松江赤十字病院 救急総合診療科
 吉田 英樹 聖マリアンナ医科大学 救急医学

■倫理規定
■次号予告

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