“NYSORAⒸ教科書”をより使いやすく、コンパクトに
2024年4月に出版され、日本区域麻酔検定試験(J-RACE)の参考テキストに指定されているNYSORAⒸの教科書『NYSORA©Hadzic’s 超音波ガイド下末梢神経ブロックと解剖』の要点をまとめて直感的な理解をさらに容易にしたマニュアル。有効性と臨床応用性が確証されている26のブロックに関して、統一感のある秀逸なカラー解剖図、解剖学的構造物がわかりやすく描出された超音波画像とその画像をカラー化したイラスト(Reverse Ultrasound Anatomy)を用いて解説し、最後にポイントとフローチャートで簡潔にまとめる。ハンディサイズで手術室にも携行可能。麻酔科医・整形外科医など、神経ブロックにかかわる医師に役立つ1冊。
頭頸部
1章 頸神経叢ブロック
上 肢
2章 斜角筋間腕神経叢ブロック
3章 鎖骨上腕神経叢ブロック
4章 鎖骨下腕神経叢ブロック
5章 肋鎖腕神経叢ブロック
6章 腋窩腕神経叢ブロック
7章 肩の鎮痛のためのブロック
8章 肘関節近位のブロック
9章 手関節ブロック
下 肢
10章 腸骨筋膜下ブロック
11章 股関節包周囲神経群(PENG)ブロック
12章 大腿神経ブロック
13章 伏在神経ブロック
14章 外側大腿皮神経ブロック
15章 閉鎖神経ブロック
16章 近位坐骨神経ブロック
17章 膝窩部坐骨神経ブロック
18章 膝窩動脈関節包間(iPACK)ブロック
19章 足関節ブロック
体 幹
20章 肋間神経ブロック
21章 胸壁ブロック
22章 傍脊椎ブロック(PVB)
23章 脊柱起立筋面ブロック(ESPB)
24章 腹横筋膜面(TAP)ブロック
25章 腹直筋鞘ブロック
26章 腰方形筋(QL)ブロック
“Hadzic's Peripheral Nerve Blocks and Anatomy for Ultrasound-Guided Regional Anesthesia, Third Edition”(以下,Hadzic本)に引き続き,“NYSORA Nerve Block Manual, First Edition”(以下,Manual本)の監訳を担当する機会をいただき,心から感謝している。原著で明確には言及されていないが,今回のManual本はHadzic本から実践的な要点をピックアップし,より直感的な理解を容易にしたものである,と私は理解している。それを踏まえ,今回の仕事に取り組んだ。
Hadzic本の日本語版である『NYSORA Hadzic’s 超音波ガイド下末梢神経ブロックと解剖』(以下,前作)は,メディカル・サイエンス・インターナショナル社(MEDSi)の尽力により,原著と比較して価格を抑えつつも立派な装丁に仕上げていただき,日本区域麻酔検定試験(J-RACE)の参考テキストにも指定された。今回のManual本の翻訳は,前作との「役割分担」を明確化することが重要と考え,携帯性の向上を主眼の1つに置いた。原著はその序文にある通り,本全体が黒色で統一され,紙質も重厚でサイズ的に存在感もあり,まさに「芸術作品」である。そこで日本語版は,その基本理念は踏襲しつつも,紙質や背景色およびサイズを工夫し「携帯性」と「前作との差別化」を追求した。
もう1つ,今回の翻訳で意識したのは「前作との整合性」である。両者を併用する読者にとって記述の整合性を保つことは重要と考え,基本的には前作の記述に合わせるように原著の内容を一部調整して訳出した。以上のような配慮を尽くして日本語版ならではの「芸術作品」を作り上げられたと自負している。
今回も森本康裕先生とご一緒でき,大船に乗った気持ちで作業を進められた。MEDSi出版部の江田幸子さんには広い心で辛抱強く導いていただき,久保苑加さんには細部まで行き届いた編集作業で本書の質の向上に多大な貢献をいただいた。この場をお借りして心より感謝申し上げる。
2025年4月
新たな出発の季節に
村田寛明
昨年翻訳出版した『NYSORA Hadzic’s超音波ガイド下末梢神経ブロックと解剖』は幸いにもこの分野の最新の教科書として高い評価を得ることができた。しかし,ハードカバーで約400ページの書物は手術室に持ち込んで使用するには少し大きかった。また,若手の先生からは高価なので教室で買ったものを読んでいるという声を聞くことが多く少し残念に思っていた。
一方でNYSORAのアクティビティは高く,ここ1年で数冊の本が出版された。そのなかで, “NYSORA Nerve Block Manual, First Edition”は神経ブロックの要点をコンパクトにまとめてあり,これを単独でも,あるいは前作の教科書と併用するのでも,多くの読者に活用してもらえるのではないかと考えた。NYSORAの教科書の特徴である美しい解剖のイラストや超音波画像は踏襲しつつも,新しい図も追加されているのでぜひ自分の手元に置き,日々の臨床の友としていただきたい。
翻訳に当たっては,前作との併用を考慮し,文章や局所麻酔薬の使用量などをできるだけ統一するように心がけた。また原著はテカテカの黒い紙に白い文字というデザインで格好はいいのだが,自分で書き込むのは難しいという欠点があったので白い紙に変更した。
今回の翻訳も,前回と同様に,村田先生との共同作業で行った。前回に続く結束力でよいものができたと自負している。
最後に,本書の発行にあたり前作同様に多大なご協力を賜ったメディカル・サイエンス・インターナショナル出版部の江田幸子,久保苑加の各氏に心から感謝します。
2025年4月
満開の桜の季節に
森本康裕