2026年7月下旬発売予定!
教えやすくわかりやすい教科書
基礎医学が好きになり,臨床医学へのモチベーションが高まる
医学概論や医学入門の教科書として医学部1年生などの初学者が医学の全体像を俯瞰し、学びの方向性を見極める助けとなる書。それぞれの診療科を代表する20疾患を、病態、症例、治療などの臨床的側面からわかりやすく紹介。さらにその疾患の原因解明や治療法開発に関連する基礎医学的内容を平易に紐解く。増補改訂にともない、タイトルを一部変更し全章にわたりアップデート。新型コロナに関する章、「器官と器官系」など2つのコラムを追加。章ごとに「学習目標」「まとめ」を掲げ、授業・自習両面での使用をサポート。試験問題と解答は教官対象に提供可能。
はじめに
第1 章 「イライラ,ドキドキ」となるバセドウ病はホルモンの病気
甲状腺ホルモンは甲状腺で作られる
甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても病気になる
分子レベルの情報のやりとりをシグナル伝達という
シグナルは受容体がキャッチする
甲状腺ホルモンを分泌せよ,というシグナル
甲状腺ホルモンの量を一定に保つためのシグナルのやりとり
どうしてバセドウ病や橋本病が起こるのだろうか?
アドバンス: 局所ホルモンと呼ばれるホルモンもある
アドバンス: シグナルが受容体に受け取られると,その後どうなる?
第2 章 上腹部の痛みや不快感を感じたら,胃潰瘍を疑ってみよう
胃はどんな形をしていて, どんな部分からなるのだろうか?
胃を作っている細胞を4 種類の組織に分類してみよう
消化に重要な機能を果たす粘膜層の細胞を詳しくみてみよう
胃壁の粘液が胃酸の攻撃を防げる訳は?
胃酸の分泌を抑える薬の仕組み
もう1 つ別な作用機序の薬もある
アドバンス: ピロリ菌感染は胃潰瘍の原因になる
第3 章 どうして見えにくくなるのか,緑内障
緑内障で物が見えにくくなるとは,どういうことか
緑内障の発症には眼房水が関係している
緑内障の治療では眼圧を下げる薬が用いられる
眼房水は常に分泌され,眼球内部を循環し,隅角から排出される
緑内障の薬にはどんなものがある?
自律神経はどのような働きをしている?
交感神経が眼房水の量を主に調節している
第4 章 うつ病は脳内の物質とどのように関係しているのだろうか
うつやうつ病とはどんな状態なのだろうか
双極性障害(躁うつ病)とうつ病は異なる病気
うつ病では脳内のセロトニンが少なくなっている
セロトニンの再取り込みを阻害する薬が,うつ病の治療薬であるSSRI
うつ病に関与する脳部位を特定する試み
脳と神経系の理解はやっかいです,だから簡単に整理しよう
いろいろな神経伝達物質にそれぞれ対応する受容体がある
第5 章 血液中の糖がうまく利用できない糖尿病
糖尿病には1 型と2 型がある
2 型糖尿病の診断にはどのような検査が必要か
食事からATP 産生までの代謝の概略を確認しておこう
インスリンの作用により,代謝の合成反応が導かれる
インスリンの作用不足はどうして起こるのか
血糖値のシグナルがβ細胞に伝わりインスリンの分泌へ
インスリン分泌に作用する糖尿病治療薬はどんなもの?
インスリン分泌と関連しない治療薬にはどんなものがあるのか
アドバンス: グルコースおよび脂肪酸からATP 産生に至るまでの過程
第6 章 喘息ではヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音が聞かれる
そもそも呼吸をするとはどんなことか
喘息では気管支で炎症がみられる
1 回の呼吸でどの程度の空気量を交換しているのだろうか
喘息の診断では肺の換気機能をスパイロメトリーで測定する
喘息患者の治療薬にはどんなものがあるか
酸素供給と呼吸器系の機能を知っておこう
第7 章 貧血になると,どうして立ちくらみが起こりやすくなるのか
貧血は立ちくらみとどこが違う?
貧血になるとどのような症状がみられるか
貧血の原因の多くは鉄欠乏による
鉄欠乏性貧血と診断するには?
鉄はヘモグロビンの鍵となる成分
ヘモグロビンが酸素を運搬し組織に受け渡す個性的な方法
アドバンス: 酸素の濃度(分圧)を実際に測定してみよう
第8 章 発熱と咳が長く続くときは肺炎を疑おう
市中肺炎とはどのような病気だろうか
病原体と人間との関わりを知ろう
細菌とヒトとの違いが,創薬のヒントになる
細菌に効く薬,抗菌薬とはどんなものか
抗菌薬が効かなくなる耐性はどのようにして起こるのか
第9 章 肺結核という感染症には免疫系が関与する
結核菌に感染すると免疫機構が働きはじめる
結核菌は感染症法で規定されている病気である
病原体から自身を守る生体防御の全体像を知っておこう
細菌の種類によって,対応する免疫の種類が異なる
アドバンス: 細胞性免疫の仕組みをさらに詳しく
第10 章 メタボリックシンドロームはどうして体に悪いのか
悪玉や善玉と呼ばれるコレステロールはどんな物質?
中性脂肪はどんな物質?
脂質の血中濃度が高くなるとどんなことが起こるか?
コレステロール濃度を下げる薬の働き
血管の構造を詳しくみてみよう
動脈硬化はどのようにして起こるのか
第11 章 血圧が高いとどうして動脈硬化を引き起こすのか
高血圧とはどのようなことをいうのか
血管の容積,血液量,拍出量で血圧が決まる
血圧は体の状態に合わせて調節されている
ホルモン系による血圧調節は複雑に関係し合う
血圧を下げる薬,降圧薬はどのようにして働くのか
第12 章 心臓に酸素を運ぶ血管が詰まってしまうと心筋梗塞になる
心筋梗塞と狭心症をあわせて虚血性心疾患と呼ぶ
心筋梗塞の症状と診断の過程を知っておこう
心電図検査とはどんなもの?
心筋梗塞で重要な血液検査とは?
心筋梗塞が起きた患者への積極的な治療法の概略
心筋梗塞や狭心症に対する治療薬はあるの?
心電図の実際の撮り方を知っておこう
電気的興奮は心臓のどこから発生し,どのように伝わっていく?
心筋細胞の収縮をミクロに見るとどうなる?
膜電位の変化が心筋の収縮を引き起こす仕組み
第13 章 関節が痛んで動かせなくなる病気,関節リウマチ
関節リウマチとはどんな病気か
まずは関節の説明をしましょう
関節に感じる痛みの種類を知っておこう
自分を攻撃して,滑膜に炎症が生じ,骨の破壊が進む
関節リウマチの治療薬の定番と新顔を紹介しましょう
関節リウマチの生物学的製剤の作り方
抗体はY の字の形をしたタンパク質
生物学的製剤が炎症性サイトカインを中和する
第14 章 ウイルスの感染が原因で起こる慢性肝炎とはどんな病気か
ウイルス肝炎の患者さんはどのような経過をたどるのか
ウイルス感染を調べる一般的な方法は?
そもそもウイルスとはどんな微生物?
ウイルスが感染してからウイルスが産生されるまでのライフサイクル
感染したウイルスに対する防御機構が生体には備わっている
肝炎ウイルスはこのように検出する
ウイルスの治療薬の実用化が進んでいる
第15 章 体内にたまった老廃物が排出できなくなる慢性腎臓病
慢性腎臓病とはどんな病態か
巧妙な仕組みで体内のゴミ(窒素化合物)を排泄する腎臓
腎臓の働きは排泄以外にもいろいろある
腎臓の機能を測定して,病状の進行度を評価する
治療には病期の進行を遅らせるか,腎機能を代償させる
腎移植で問題となる移植抗原のMHC
臓器移植をするときの移植抗原の扱い方
アドバンス: MHC は免疫反応で重要な役割を担っている
第16 章 難聴:音が聞き取りにくくなるのはどうして?
難聴には伝音難聴と感音難聴がある
子どもの遺伝性感音難聴は臨床医学的には2 種類ある
耳が音を聴きとる仕組みのカギは「毛」にある
有毛細胞の形態を異常にする遺伝子が見つかっている
コネキシン26 遺伝子の異常でイオンが循環できなくなる
コネキシン26 遺伝子の変異が「ホモ」で病気になる場合
コネキシン26 遺伝子の変異が「ヘテロ」でも病気になる場合
脳波で聴力をみる検査があります:聴性脳幹反応の測定
第17 章 遺伝する病気の診察ではどんな注意が必要か
メンデルの遺伝法則に従うのがメンデル遺伝病
先天性難聴の遺伝性をどのように判断し対応すればよいか
優性(顕性)遺伝する後天性難聴をどのように診断するか
遺伝の知識の概略を整理する
遺伝カウンセリングはどのように行うのか
アドバンス: 家族性高コレステロール血症の検査と遺伝カウンセリング
第18 章 がん細胞と正常細胞はどこが違うのか
がんの一例として乳がんをみてみよう
がんは異常に増殖した細胞塊である
がんの原因となるがん遺伝子とがん抑制遺伝子
がん細胞の特徴を研究して治療薬を開発する
標準的な治療法は,がんの異常な細胞増殖を標的とする
ドライバー変異を標的にする分子標的薬
分子標的薬の例:トラスツズマブとエルロニチブを説明しよう
第19 章 高齢者:病気と生活の自立への配慮や介護を考える
高齢者の症例検討会から高齢者医療の現実をみてみよう
介護保険制度と要介護認定を知っておこう
終末期医療では互いの意思を疎通させることが大切
第20 章 新型コロナウイルス感染の蔓延にどのように対応するか
コロナウイルスとヒトへの感染
COVID-19 感染症はどんな症状を引き起こすか
ウイルス感染を防ぐための対策には何があるか
公衆衛生とは公衆の健康を守るための活動をさす
感染流行時の行政介入の必要性と倫理的課題
検査陰性の証明と偽陽性者による医療崩壊の可能性
PCR 検査の偽陽性者数を計算してみよう
学習目標 解答のヒント
索引
コラム:詳しく知りたい
短期と長期にわたる応答系
神経細胞と神経系についての簡単な解説
鎮痛薬とプロスタグランジン
クエン酸回路と酸化的リン酸化はエネルギー産生の要
ヒトの体を構成する器官と器官系
タンパク質の産生量が「翻訳」の段階で調節される
ヒトの遺伝子とその発現についておさらいしましょう
エイズとゲノム編集
PD-1 をめぐるがん免疫療法
検査結果の「陽性」って,どれだけ正しいの?
はじめに
新入生のための医学入門書という立ち位置で,基礎医学から臨床医学へという流れを解説する医学概論の教科書として本書を執筆しました。臨床医学ではエビデンスや客観性の重視思考が広がり,基礎医学を理解することの重要性がますます高まっています。ですから,臨床医学を視野に入れた基礎医学を,わかりやすく伝えられるよう意識して書きました。初版は2020 年に出版しましたが,今回,全体を見直し情報をアップデートするとともに,第20 章「新型コロナウイルス感染の蔓延にどのように対応するか」を追加し,「詳しく知りたい」のコラム2つも書き加えました。本書の記述は医学全般に及びますから,教師用の教材として,試験問題とその解答と,本書でふれたテーマを用いたディスカッションでの使用例なども新たに準備しました(これらの教材が必要な方は,出版社にメールをしてください)。
医学科に入学した学生は,一般教養科目とともに,解剖学,生理学,生化学といった基礎医学から学び始めることになります。保健学科の学生も同様です。基礎医学に含まれる内容は難解で複雑なため,全体像を俯瞰することに大変な努力と作業が要求されます。ですから,学びの進行方向や幅を知るには大きなストレスが伴いがちです。生物学を高等学校で十分に学んでこなかった学生にとっては,なおさら困難が感じられるでしょう。本書はそうした新入生に向けて,学ぶ不安やストレスを和らげる目的で書かれた医学入門書なのです。平易で簡潔な記述に努めましたので,医学生ばかりでなく,保健学科や他学部の学生の諸君にも勧めたい一冊になりました。
本書の構成は,よくある病気(ありふれた病気と呼ばれます)の概略と症例,治療薬,これらに引き続き病態や薬効の説明という流れになっています。そして,これらの理解に必要と考えられる,基礎医学の内容を簡潔にまとめて付加しました。「メモ」や「アドバンス」,あるいはコラム「詳しく知りたい」は,さらに追加したい課題です。少し高度ですが,挑戦して欲しい内容となっています。
「学習目標」では,病気に関して理解したことや,その基礎となる医学にについて,30 秒程度の口頭による説明,つまり文章(言語)を主体としたプレゼンテーションを期待しています。これは言語による理解と知識の整理であり,将来必要とされる「患者さんへの説明」の練習をしておくためです。ですから,図表は必要最小限にとどめました。
簡単な査読をお願いした新潟大学医学部の元同僚(佐藤昇,福地健郎,竹林浩秀(現在,京都大学),長谷川功,日比野浩(現在,大阪大学),高田俊範,片貝智哉,矢尾板永信,森田由香(現在,富山大学),齋藤玲子,の各先生),および光山正雄(京都大学名誉教授),増田道明(獨協医科大学名誉教授),岡崎史子(新潟大学医学教育センター教授),黒沢陽一(新潟県福祉保健部)の各先生に,心からの感謝の意を表したいと思います。
2026 年7 月
木南 凌




























