医療者のためのバーンアウト防止戦略:Mayo Clinicに学ぶ12アクション

組織が変わればバーンアウトは防止できる

医療機関の組織のシステムを変えることでバーンアウトを防止し、その結果として医療の質を高める方法を提示。この問題に早くから取り組んできたMayo Clinicでの実践をもとに、効果の根拠となる研究結果も交えて紹介。バーンアウトの根本要因を分析し、医療チームを構成するメンバーが共通の目標のもとで高め合い、互いに強い関心を寄せる「エスプリ・ド・コール」(Esprit de Corps:団結の精神、チームスピリット)の考え方に立脚したうえでとるべきアクションを特定、実践につなげることを目指したバイブルとなる1冊。

¥6,600 税込
原著タイトル
Mayo Clinic Strategies To Reduce Burnout: 12 Actions to Create the Ideal Workplace
監訳・訳 松尾貴公(Department of Infectious Diseases, Infection Control and Employee Health, The University of Texas MD Anderson Cancer Center)/訳:長崎 一哉(藤田医科大学 総合診療科)・西村 義人(Division of Hematology/Oncology, Mayo Clinic)
ISBN
978-4-8157-3142-7
判型/ページ数/図・写真
A5 頁464 図49 2色
刊行年月
2025年12月
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SECTION Ⅰ 基礎
1はじめに
2 バーンアウトの影響
3 バーンアウトとエンゲージメントの要因
4 ビジネス戦略
5 医療現場の無駄が生む質の低下:バーンアウトに共通する根本原因

SECTION Ⅱ 戦略
6 エスプリ・ド・コールを醸成するための設計図
7 理想的な職場の要素
8 上層部リーダーシップの巻き込み
9 評価

SECTION Ⅲ 実践
10 介入の三本柱の3 つのアクションセット:バーンアウト軽減とエスプリ・ド・
コール醸成のためのエビデンスに基づく戦略
11 エージェンシー(主体性)アクションセット:はじめに
12 エージェンシー(主体性)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
パートナーシップ
13 エージェンシー(主体性)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
信頼と尊敬
14 エージェンシー(主体性)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
裁量権と柔軟性
15 エージェンシー(主体性)アクション:リーダーの行動の評価
16 エージェンシー(主体性)アクション:障害の除去
17 エージェンシー(主体性)アクション:裁量権と柔軟性の導入
18 エージェンシー(主体性)アクション:組織と個人の価値観の整合性を図る
協定
19 コヒーレンス(一貫性)アクションセット:はじめに
20 コヒーレンス(一貫性)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
職業的成長とメンターシップ
21 コヒーレンス(一貫性)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
公平性と公正性
22 コヒーレンス(一貫性)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
安全性
23 コヒーレンス(一貫性)アクション:リーダーの選定と育成
24 コヒーレンス(一貫性)アクション:業務効率の改善
25 コヒーレンス(一貫性)アクション:公平・公正な説明責任の確立
26 コヒーレンス(一貫性)アクション:心理的安全性が確保できる空間の形成
27 カマラデリー(仲間意識)アクションセット:はじめに
28 カマラデリー(仲間意識)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
職場のコミュニティと仲間意識
29 カマラデリー(仲間意識)アクションによって育まれる理想的な職場の要素:
内発的動機付けと報酬
30 カマラデリー(仲間意識)アクション:コミュニティの育成と共食
31 カマラデリー(仲間意識)アクション:報酬,賞賛,感謝の最適化
32 カマラデリー(仲間意識)アクション:境界を超えた協力の推進
33 医学部生,研修医,フェローの独自のニーズに対応するためのアクションセッ
トの適用
34 ウェルビーイングを根付かせる

SECTION Ⅳ 旅路
35 まとめ
36 結語

索引

監訳者序文

医療従事者のバーンアウト(燃え尽き症候群)は,世界中の医療現場に共通する深刻な課題です。人員不足,過重労働,患者や家族への対応,複雑化する医療制度など,医療現場は常に高いストレスに曝されています。その結果,医療従事者の精神的疲弊が進み,離職や医療の質の低下につながるケースも少なくありません。バーンアウトは単なる個人の健康問題にとどまらず,医療の質,安全性,教育,チームの連携,さらには医療制度全体の持続可能性をも脅かす社会的課題と言えます。医療者のウェルビーイングは,患者ケアの質を守るうえでの前提条件であり,組織リーダーが最優先に取り組むべきテーマです。

本書『医療者のためのバーンアウト防止戦略:Mayo Clinicに学ぶ12 アクション』は,この問題に長年にわたり向き合ってきたDr. Tait D. Shanafelt とDr. Stephen J. Swensen による集大成です。著者らは,バーンアウトを個人の努力やレジリエンスの不足としてではなく,組織文化や構造が抱える課題として捉えています。そして,エビデンスに基づく12 のアクションを通じて,医療従事者が「職業的満足感(professional fulfillment)」を獲得するための具体的なステップを示しています。本書の目的は,医療従事者が自らの仕事に誇りと喜びを感じられる環境を,組織としてどのように構築し維持していくかを明らかにすることです。

私がMayo Clinic で研修を受けていた際,この考え方は理念にとどまらず,日常の文化として深く根づいていることを実感しました。現場でのチームメンバー同士の尊重や励まし,お互いの成功を称え合う文化,職員に対する組織やリーダーからの感謝のメッセージ,そして職員の満足度を高めるための取り組みに対する定期的な振り返りなど,医療従事者のモチベーションを高め,チームとしての一体感を育むための工夫が多くみられました。Mayo Clinic では,「医療者のウェルビーイングが最良の患者ケアにつながる」という価値観が広く共有されています。本書に繰り返し登場する「エスプリ・ド・コール(団結の精神,チームスピリット)」は,その文化を象徴する言葉といえます。

本書のもう1 つの魅力は,理想を語るだけでなく,組織リーダーが明日から実践できる行動指針として整理されている点にあります。著者らは,組織がウェルビーイングを高めるための3 つの柱「医療者の主体性(エージェンシー)」,「組織の一貫性(コヒーレンス)」,「仲間意識(カマラデリー)」を提示しています。これらは単なる理論ではなく,現場での対話,評価体制,教育プログラム,マネジメントの仕組みなど,具体的な実践につながるものです。医療現場でのリーダーは,これらの環境を整え,現場の人々が力を発揮できる組織文化を育てることが求められます。

日本の医療現場においてもバーンアウトは決して他人事ではありません。翻訳者3 名は日本国内でも複数のバーンアウト研究に従事してきましたが,人的資源の不足,業務負担の偏り,サポート体制の不足など課題は多岐にわたり,まだ未解決の問題が数多く残されています。そのような状況のなかで,組織的にウェルビーイングへ取り組む姿勢がますます求められています。本書で紹介される12 のアクションには,小さな職場単位でも始められる実践が多く含まれており,管理者やチームリーダーなど立場を問わず,どの現場でも応用できる内容となっています。翻訳にあたっては,原著のもつ科学的な根拠を可能なかぎり維持しつつ,著者が伝えようとした「組織リーダーとしての責任と希望の両立」を日本語で自然に再現することを心がけました。バーンアウトを防ぐという目的には,医療従事者が自らの仕事に誇りと満足感をもち,そしてその過程をチーム全体で支え合う文化を育むことだと感じています。本書が,多くの医療リーダーや教育者,そして現場を支えるすべての方々にとって,より良い組織を築くための確かな道標となることを心から願っています。

最後になりますが,本書の翻訳にあたり,メディカル・サイエンス・インターナショナルの室井様,山下様,佐藤様,髙橋様をはじめとするスタッフの皆様には,丁寧な校正と多くのご提案をいただき,心より感謝申し上げます。

2026 年1 月 松尾 貴公

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