心の診療100ケース - プライマリ・ケアで押さえたい精神医学的キーポイント -

「心の問題」を見逃さない!
プライマリ・ケアの現場で役立ち
医学生・研修医からベテランまで使える
“即戦力”の症例集

プライマリ・ケアの現場でよく遭遇し、見逃しがちな「心の問題」をテーマとしてまとめた、“即戦力”の症例集。臨場感あふれる症例提示、的を射たQuestion、丁寧な解説、要点まとめのキーポイントで構成。1症例ごとの読み切りで、気になる症例から手軽に読み進められ、短時間で効率的に学習できる。研修医はもちろん、開業医や外来中心の診療に携わる勤務医に最適。シリーズ既刊『内科診断100ケース』、『GP100ケース』と合わせて使える1冊。

¥5,060 税込
原著タイトル
100 Cases in Psychiatry
原著者
編集:Barry Wright・Subodh Dave・Nisha Dogra・P John Rees
監訳/訳:飯島克巳(いいじまクリニック院長) 訳: 岡島美朗(自治医科大学緩和医療講座准教授) 川本龍一(愛媛大学大学院医学系研究科地域医療学講座教授) 大中俊宏(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター精神腫瘍科医長) 阿部隆明(自治医科大学とちぎ子ども医療センター教授)
ISBN
978-4-89592-696-6
判型/ページ数/図・写真
B5変 頁256 図5
刊行年月
2012/1/18
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1.精神状態,その評価法
2.未治療の歯性膿瘍
3.全般性不安障害
4.「診断書が欲しいんです」
5.薬物療法を望まない強迫行為患者
6.「心臓発作が起きました」
7.プライマリ・ケアでのうつ病の段階的ケア
8.洗い過ぎで擦りむけた手
9.意識を失い救急診療部に運ばれた患者
10.「ハイだったこともあるけど,今は引きこもっています」
11.家を出て行った父親に対する葛藤
12.「こんなに良い気分は初めて」
13.鈍い痛み,鋭い痛み,そして興味の喪失
14.「わけもなく,涙が出るんです」
15.「やることなすことに誰かが口出しする」
16.「大麻とエクスタシーをほんの少しだけ」
17.尋常ではない,被害の信念
18.診療所を受診した腹痛患者
19.一杯やって,気を紛らわす
20.アセトアミノフェンの過剰摂取
21.クモ恐怖
22.既視感と健忘
23.自傷,物質乱用と不安定な関係
24.「夫が私を外出させてくれない」
25.とても恐ろしい幻覚
26.フラッシュバックと悪夢
27.運動失調
28.「痛みがとれない」:説明できない身体症状
29.「娘の死後,物事に集中できない」
30.「どこかがおかしい」
31.三環系抗うつ薬の過剰摂取
32.自殺のリスク評価
33.運動障害を伴った妄想
34.「私の鼻は大きすぎて醜い」
35.治療を受けさせるために入院させてよいか?
36.脱抑制と奇妙な行動
37.特別な親密さと配慮を求める女性患者
38.うつ病に続発したミオクローヌスと認知症
39.神経性大食症と便秘
40.発熱,筋固縮,精神錯乱
41.「エイリアンからの電波」と他害の恐れ
42.「部屋の形がどんどん変わっていく気がするんです」
43.「こぶしが開かないんです」
44.激しい疲労感
45.てんかんと精神病様症状
46.性的不能
47.「愛してる,でもさわらないで」
48.ヘロイン中毒の治療
49.「どうしても,人前で裸になってしまう」
50.急速鎮静を要する場面は?
51.外出時のみ起こる動悸
52.「この子が死んでくれたら,って考えてしまうんです」
53.「妻が,浮気をしています」
54.酔って警察に搬送されてきた男性
55.ストーキング
56.怒れる男
57.抗うつ薬に反応しない患者
58.薬物に反応しない統合失調症
59.気分の落ち込みと慢性疲労
60.重度聴覚障害者に「声が聞こえた」
61.「私は病気に違いない」
62.何度も何度も同じ話を繰り返す
63.階段状に進行する認知力低下
64.「天井のハエが気になって仕方ない」
65.幻視を伴う認知障害
66.「妻に毒を盛られているんです」
67.入院患者の急性の焦燥状態
68.飲食を一切しようとしない高齢女性
69.術後にベッドから離れようとする不穏な患者
70.Parkinson 病
71.「受けるべき治療を拒否するなんて,きっと心が病んでいるんだ」
72.介護者のうつ病
73.「今,家にいる妻は偽者です」
74.増悪するひどい振戦
75.「うちの子,じっとしてられないんです」
76.学級で孤立する子ども
77.動物を殺すなど,問題ばかり起こす子ども
78.拒食症
79.袖に隠れていた無数の傷
80.自責の念
81.強い無価値感
82.ないはずのものが見える
83.「娘が私につきっきりで,登校も嫌がります」
84.ソファー裏に排便する子ども
85.学校で一言もしゃべらない女児
86.チックと確認行為
87.食べず,動かず,話さず
88.愛着障害
89.かんしゃくを起こしがちな子ども
90.性同一性障害
91.娘の血尿を訴える母親
92.児童保護
93.1 人遊び
94.教室でのトラブル
95.「落ち着かない」
96.嗜眠と無気力が見られるDown 症候群の男性
97.Down 症候群と奇妙な行動
98.学習困難,問題行動,反復行動
99.倦怠感と高血圧
100.Down 症候群患者の強迫的・攻撃的行動

 本書の題名は,“100 Cases in Psychiatry” である。しかし,専門科としての精神科における患者例,また専門医である精神科医にとっての患者例ではない。ここに登場する患者の多くは,かかりつけ医general practioner,ときに救急診療部emergencydepartment を受診している。つまり,かかりつけ医や救急診療部医師が,さまざまな精神的疾患をもつ患者の診療を行っているのである。
 本書では,100 人の患者が実際に起こりうる状況下で紹介される。そして現場で,こうした患者に対し,どのように診察し,鑑別診断を行い,対処するかがわかりやすく述べられる。読者は,症例を読み進めていくうちに,自ら試行錯誤のうちにその病態に迫っていくことになる。したがって,一症例を検討するだけでも,「病いをかかえる人間」への実際的な診断法,対処法を学ぶことができる。
 本書が優れている点は,心の問題をもつ患者に対して,心と体の両面から,また生活背景,社会的背景を踏まえて,しっかりとした人間理解,すなわち身体心理社会的モデルに基づく患者理解を行いつつ,診療,マネジメントを行っている点である。本書の利点はもう1 つ,患者例から学びつつ,英国における精神疾患患者に対する保健医療制度の実際についても理解を深めることができることにある。日本における精神疾患患者の支援体制を改革していく際に,大いに参考となるだろう。
 本書の,現実味あふれる症例,的を射たQuestion,丁寧な解説,要点をまとめたキーポイント。この流れを頭に入れることは,すなわち,心の問題をもつ患者を支援するためのプロセスを身につけることである。学ぶべき知識が山積の研修医には,即戦力に直結する教材として,大いに活用してほしい。
 日本の医療においては今,プライマリ・ケア(総合診療,家庭医療,地域医療)の確立へ向けた大きな動きがある。2010 年には,総合的な立場から,人々の健康支援を行う医療をますます発展させるべく,日本プライマリ・ケア連合学会が発足した。今後は,医療活動のあらゆる場面で,心も体も一体として患者を診ていく,すなわち身体科,精神科が統合された医療が行われていくことだろう。それだけに,本書に示されるようなケースに対して,我々プライマリ・ケア医は今まで以上の適切な対応が求められることになるのである。
 本書に登場する患者は,精神科の患者だけではなく,内科,小児科,救急診療部の患者など多種多様である。「総合医」にはもちろん,専門科を問わずあらゆる医師の教科書として本書が活用されることを願う。精神科を志す医師,特に若手医師には,身体科を踏まえた全人的な精神医療を行うために,本書の活用をお勧めする。
 本書の翻訳については,メディカル・サイエンス・インターナショナル社の水野資子さんに,翻訳上必要な情報を頂戴したり,また訳文の丁寧な校正をして頂いたりと,大変お世話になった。心より感謝申しあげる。

2011 年11 月
飯島克巳

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