大きな変更点はありますか?
「はい」
プラマニュはいつも現場の変化とともに
感染症診療に必要かつ不可欠な内容をハンディサイズに収載。必要な情報のみに絞ってまとめ、臨床における迷いを払拭する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の記述を大幅に刷新。新規ガイドライン(敗血症など)と、臨床に直結する新旧の主要論文約150本の情報を更新するなど、Dr.岡+新たな執筆協力者27名の布陣による大改訂。全体で約40ページ増。既刊『ASM臨床微生物学プラチナレファランス』と『微生物プラチナアトラス』とリンク継続。拡大版(Grande)も同時発売。若手・ベテラン問わず、医師・ナース・コメディカルのみなさまに。
主な改訂ポイント
★新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の記述を大幅に刷新(ワクチン,予防,著者勤務先の診療方針の項目もアップデート)。「第5章 感染対策」では標準予防策のみならず,感染経路別予防策,患者隔離,環境整備と洗浄・消毒・滅菌を加え,COVID-19予防の項目も刷新した。
★前版(Ver.7)から40ページの増加。新規ガイドライン(敗血症など)と,臨床に直結する新旧の主要論文約150本ぶんの情報を更新。
■新規項目
・感染症治療薬に,イミペネム・シラスタチン/レレバクタム,モルヌピラビル,ニルマトレルビル/リトナビルを新規追加。
■大幅アップデート
・抗酸菌,HIV,クロストリジオイディス・ディフィシル感染症の項目を大幅改訂。
・付録では「手術部位感染(SSI)予防抗菌薬」の項目を新設するとともに,「在宅での抗菌薬投与」の記載を強化。
感染症診療の8大原則
第1章 感染症治療薬
●抗菌薬
■ペニシリン系
◎ペニシリン系注射薬
ベンジルペニシリン(PCG)/アンピシリン(ABPC)/ピペラシリン(PIPC)/アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)/ピペラシリン・タゾバクタム(PIPC/TAZ)
◎ペニシリン系経口薬
アモキシシリン(AMPC)/アモキシシリン・クラブラン酸(AMPC/CVA)
■セフェム系(セファロスポリン系,セファマイシン系)
◎第1世代セフェム系注射薬
セファゾリン(CEZ)
◎第2世代セフェム系注射薬
セフメタゾール(CMZ)
◎第3世代セフェム系注射薬
セフトリアキソン(CTRX)/セフタジジム(CAZ)
◎第4世代セフェム系注射薬
セフェピム(CFPM)
◎セフェム系とβラクタマーゼ阻害薬合剤
セフトロザン・タゾバクタム(CTLZ/TAZ)
◎第1世代セフェム系経口薬
セファレキシン(CEX)
◎第3世代セフェム系経口薬
■その他のβラクタム薬:モノバクタム系
アズトレオナム(AZT)
■その他のβラクタム薬:カルバペネム系
◎カルバペネム系の使用を考慮する疾患
◎カルバペネム系を使用してはいけないケース
メロペネム(MEPM)/イミペネム・シラスタチン・レレバクタム(IPM/CS/REL)
■アミノグリコシド系
◎腎毒性について
◎耳毒性について
◎アミノグリコシド系の使用を考慮する場合
◎1日1回投与 vs. 複数回投与
ゲンタマイシン(GM)/アミカシン(AMK)
■ニューキノロン系
シプロフロキサシン(CPFX)/レボフロキサシン(LVFX)/モキシフロキサシン(MFLX)
■抗MRSA薬
バンコマイシン(VCM)/リネゾリド(LZD)/テジゾリド/ダプトマイシン(DAP)
■マクロライド系
エリスロマイシン(EM)/クラリスロマイシン(CAM)/アジスロマイシン(AZM)
■その他の抗菌薬
◎リンコマイシン系
クリンダマイシン(CLDM)
◎テトラサイクリン(TC)系
ミノサイクリン(MINO)/ドキシサイクリン(DOXY)
◎グリシルサイクリン系
チゲサイクリン(TGC)
◎ニトロイミダゾール系
メトロニダゾール(MNZ)
◎スルホンアミド系
スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤
◎その他
リファンピシン(RFP)/コリスチン(CL)/リファキシミン/フィダキソマイシン(FDX)
●抗結核薬
イソニアジド(INH)/リファンピシン(RFP)/ピラジナミド(PZA)/エタンブトール(EB)
◎第2選択薬
◎妊婦
◎肝障害患者
◎主な副作用
●抗真菌薬
◎アゾール系
フルコナゾール(FLCZ)/ホスフルコナゾール(F-FLCZ)/イトラコナゾール(ITCZ)/ボリコナゾール(VRCZ)/ポサコナゾール(PSCZ)
◎キャンディン系
ミカファンギン(MCFG)
◎ポリエンマクロライド系
アムホテリシンB(AMPH)/アムホテリシンB〔リポソーム製剤(L-AMPH)〕
◎その他の抗真菌薬
フルシトシン(5-FC)
●抗ウイルス薬
アシクロビル(ACV)/バラシクロビル(VACV)/ガンシクロビル(GCV)/バルガンシクロビル(VGCV)/ホスカルネット/レムデシビル/レテルモビル/オセルタミビル/ザナミビル/ペラミビル/ラニナミビル/バロキサビル/モルヌピラビル/ニルマトレルビル・リトナビル
●原虫・寄生虫薬
アトバコン/アトバコン・プログアニル/メフロキン/イベルメクチン/ペンタミジン/プラジカンテル/パロモマイシン
●薬剤耐性菌治療
◎ESBLsやAmpC産生腸内細菌の治療
◎CREの治療
第2章 微生物からのアプローチ
●細菌
◎グラム染色のススメ
◎グラム陽性球菌:ブドウ状
黄色ブドウ球菌/コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)
◎グラム陽性球菌:連鎖状
A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)/B群β溶血性レンサ球菌/肺炎球菌/緑色レンサ球菌/ストレプトコッカス・アンギノーサスグループ/腸球菌
◎グラム陽性桿菌
リステリア・モノサイトゲネス/バチルス・セレウス/ジフテリア/ジフテリア以外のコリネバクテリウム属/アクチノマイセス属(放緑菌)/ノカルジア属
◎嫌気性菌
◆嫌気性グラム陽性桿菌
クロストリジウム・パーフリンジェンス/ペプトストレプトコッカス属
◆嫌気性グラム陰性桿菌
バクテロイデス・フラジリス/フゾバクテリウム属/プレボテラ属
◎グラム陰性球菌
淋菌/髄膜炎菌/モラキセラ・カタラリス
◎グラム陰性桿菌
◆主に気道感染を起こすグラム陰性桿菌
インフルエンザ菌/レジオネラ・ニューモフィラ/百日咳菌
◆腸内細菌
◇カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)
プロテウス属/大腸菌/クレブシエラ・ニューモニエ
◆主に消化管感染を起こすグラム陰性桿菌
ビブリオ属/カンピロバクター・ジェジュニ,カンピロバクター・コリ/非チフス性サルモネラ菌/チフス菌,パラチフス菌/赤痢菌属/病原性大腸菌
◆主に医療関連感染を起こすグラム陰性桿菌
セラチア・マルセッセンス/緑膿菌/アシネトバクター・バウマニー/シトロバクター・フロインディ/エンテロバクター属/ステノトロフォモナス・マルトフィリア
◆その他のまれなグラム陰性桿菌
プロビデンシア属,モルガネラ属/エロモナス属/その他のシュードモナス属/バークホルデリア・セパシア/アクロモバクター・キシロソキシダンス/エリザベトキンギア・メニンゴセプティカ
●その他の細菌
◎リケッチア属
◎マイコプラズマ属,クラミジア属
肺炎マイコプラズマ/クラミジア属
◎抗酸菌
結核菌/潜伏結核/肺外結核
◎非結核性抗酸菌(NTM)
肺MAC/マイコバクテリウム・カンザシ/迅速発育性抗酸菌/その他の抗酸菌
◎梅毒
●原虫
◎マラリア
◎赤痢アメーバ
◎トキソプラズマ・ゴンディ
◎ジアルジア
●寄生虫
◎疥癬
◎条虫
日本海裂頭条虫,無鉤条虫,有鉤条虫
◎線虫
糞線虫
●真菌
◎カンジダ属
表在性カンジダ症/播種性カンジダ症/臓器別カンジダ症に関して
◎アスペルギルス属
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)/慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA)/アスペルギローマ/アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)/副鼻腔アスペルギルス症
◎クリプトコッカス属
◎ニューモシスチス・イェロベッチ
◎接合真菌
●ウイルス
◎単純ヘルペスウイルス(HSV1,2)
◎水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)
◎EB(Epstein-Barr)ウイルス
伝染性単核球症
◎サイトメガロウイルス(CMV)
◎HIV
◎インフルエンザウイルス
◎ノロウイルス
◎ヒトパルボウイルスB19
◎ムンプスウイルス
◎麻疹ウイルス
◎風疹ウイルス
●人畜共通感染症
◎レプトスピラ属
◎バルトネラ属
◎パスツレラ属
◎ブルセラ属
◎野兎病
◎Q熱
◎オウム病
◎エルシニア属
◎ペスト
◎カプノサイトファーガ属
◎ストレプトバチラス・モニリホルミス
◎豚丹毒菌
◎コリネバクテリウム・アルサランス,コリネバクテリウム・シュードツベルクローシス
●輸入感染症
■1類および2類指定感染症
◎ウイルス性出血熱
◎中東呼吸器症候群(MERS)
◎鳥インフルエンザ
■4類指定感染症
◎デング熱
◎バークホルデリア・シュードマレイ
■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
第3章 病態・臓器別のアプローチ
●発熱症候群
◎不明熱
◎ICUでの発熱
◎手術後の発熱
◎旅行後の発熱
◎発熱と発疹
◎発熱とリンパ節腫脹
●免疫不全と感染症
●上気道感染(風邪とその周辺)
◎鼻炎症状が主な場合(鼻炎型)
◎真菌性副鼻腔炎
◎咽頭痛が主な場合(咽頭炎型)
◎咳が主な場合(急性気管支炎か肺炎かを鑑別)
◎感染巣がはっきりしない急性の発熱(気道症状のない発熱)
●耳鼻咽喉科領域感染症
◎外耳道炎
◎悪性外耳道炎
◎急性中耳炎(成人)
●歯科感染症
◎深頸部感染
●眼科感染症
◎麦粒腫
◎結膜炎
◎眼窩蜂窩織炎
◎眼内炎
●呼吸器感染
◎市中肺炎
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪,慢性気道感染増悪
◎院内肺炎(HAP),医療ケア関連肺炎(HCAP),人工呼吸器関連肺炎(VAP)
◎誤嚥性肺炎
◎肺膿瘍,膿胸
◎閉塞性肺炎
●尿路感染
◎単純性尿路感染
◎複雑性尿路感染
●中枢神経系感染
◎成人急性細菌性髄膜炎
◎脳室シャント,ドレーン関連髄膜炎
◎慢性髄膜炎
◎脳膿瘍
◎急性ウイルス性脳炎
●消化管感染
◎急性腸炎(下痢)
◎クロストリジオイディス・ディフィシル感染症(CDI)
◎特発性細菌性腹膜炎(SBP)
◎2次性腹膜炎(消化管穿孔,虫垂炎,憩室炎)
◎CAPD関連感染症
●肝胆膵感染
◎急性胆囊炎
◎急性胆管炎
◎肝膿瘍
◎急性膵炎(感染性膵壊死)
●循環器・血流感染
◎感染性心内膜炎
◎感染性動脈瘤
◎化膿性血栓性静脈炎
◎カテーテル血流感染
◎ペースメーカー心臓デバイスの感染症
◎人工血管感染症
◎急性心膜炎
◎縦隔炎
●骨・関節感染
◎化膿性関節炎
◎化膿性滑液包炎
◎骨髄炎
◎人工関節感染
◎開放骨折
●皮膚軟部組織感染
◎丹毒,蜂窩織炎
◎壊死性軟部組織感染症(ガス壊疸,壊死性筋膜炎)
◎糖尿病性足壊疽
◎動物咬傷
●性感染症(STI)
◎男性の尿道炎
◎急性精巣上体炎
◎腟炎
◎女性の尿道炎,経管炎
◎骨盤内炎症性疾患(PID)
◎陰部潰瘍性病変
◎尖形コンジローマ
◎ケジラミ
●発熱性好中球減少症
◎好中球減少性腸炎
●敗血症性ショック
◎トキシックショック症候群(TSS)
◎脾摘後敗血症
第4章 成人のワクチン
●予防接種
◎成人の予防接種
麻疹/風疹/ムンプス/水痘帯状疱疹/インフルエンザ/肺炎球菌/新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
第5章 感染対策
●標準予防策
●感染経路別予防策
●ウイルス感染症患者,薬剤耐性菌定着者の隔離
●環境整備と洗浄・消毒・滅菌
●COVID-19対策とエアロゾル対策
付録
●血液体液曝露(針刺し事故)対応
◎HBVへの対応
◎HCVへの対応
◎HIVへの対応
●手術部位感染(SSI)予防抗菌薬
●プラチナ流! 在宅での抗菌薬投与
●脱感作
●妊婦,授乳婦への抗菌薬投与
●妊婦への薬剤危険度分類:FDA基準
●薬剤相互作用
◎特に併用薬に注意を要する抗微生物薬
◎抗凝固薬
●血液培養
◎いつ取るか?
◎正しい取り方
◎これってコンタミ?
◎培養期間は?
◎血液培養のフォローをなぜするのか?
●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療指針
●抗菌薬スペクトラム早わかり表
●薬剤感受性表
●主な感染症の抗菌薬投与期間
●潜伏期間と感染予防策
●届出感染症一覧
●日本の定期/任意予防接種スケジュール
●感染症迅速検査,血清抗原抗体検査:感度・特異度一覧
参考文献
索引
●序文
2015年に『感染症プラチナマニュアル』は誕生した。
これまで毎年のように改訂を重ね,大きいサイズのGrandeとともに多くの医療従事者にご活用いただけるようになった。
感謝や喜びとともに,影響力とそれに伴う責任の重さも痛感している。
特にコロナ禍に入り,私は体調を崩してしまった。幸か不幸か診断がつき,難病申請も通過した。
しかし,以前のように一人で,ボリュームの増した本書の改訂を続けていくことに,体力・能力ともに限界を感じるようになってしまった。
そこで今回からは,同僚,愛弟子,そして信頼できる仲間や同志に,改訂についてお力をお借りすることとなった。
単著の長所を生かすために,新規の項目は私が書き下ろしたうえで,全体を監修しているが,それ以外の改訂作業については新進気鋭の感染症専門家やその未来の逸材に,そして専門性の高いHIV,抗酸菌,輸入感染症などについては各領域のエキスパートにお願いした。
薬剤や微生物の項目については,私の信頼する専門薬剤師や微生物検査技師のご助言もいただいた。
COVID-19 に関する記述はニーズに応えるため,前版ではハンディマニュアルの意図を超えて解説し,大幅にページを割いたが,今版では再び実践的な診断治療を簡潔に示すことを心がけた。
その結果として,今まで以上に質の高い,現場ですぐ役に立つハンディなマニュアルに仕上がったのではないかと感じている。
今版の表紙カラーは新緑のグリーンをイメージした。
そこに新しい風が吹き込むデザインだ。
新しいプラチナマニュアルが,大きく変わろうとしている。
変わらなければならない。
日本の感染症診療の現場で,引き続き広くお役立ていただけることを願っている。
そして,今版に協力してくれた新緑のような清々しい力と才能により,新しい風が吹き込まれることを期待している。
2023年3月
桜の開花とマルタウグイの遡上する多摩川でのフライフィッシングを楽しみに
岡 秀昭
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●推薦のことば
『プラマニュ』も本書でVer.8,なのだそうだ。
本書の構成は学術畑の感染症屋には奇異に感じる人もいるだろう。例えば,今学術界で話題になっているサル痘(mpox)の記載がほとんどない。第4章はワクチンに,第5章は感染対策にまるまる使われているが,かといって網羅的な解説がなされているわけではない。最新のNEJMに載った髄膜炎菌ワクチンの話題もないし,感染対策といってもサーベイランスについて解説しているわけでもない。
しかし,本書の読者はこの構成を少しも不思議には思わないだろう。ぼくの周りで本書を最も熱心に読んでいるのは薬剤師さんだ。ついで抗菌薬適正使用チームの看護師,検査技師であり,さらに研修医や医学生へと続く。彼らのニーズは「日常業務で感染症界隈で困っていること」である。そして,『プラマニュ』は日々の業務でちょっと知りたいんだけどすぐには見つけられなそうことをほぼ的確に教えてくれる。根拠を示した論文とともに。
本書は現場のニーズベースで作られた本であり,改訂を重ねるごとに増し増しされているコンテンツは「このことも知りたいんだけど,書いてない」という現場の声への返答である。学術目線で,学会のトピックを集めたアンソロジーではないのである。本書にCOVID-19の記載が多いのはそのためで,この疾患が全国的(全世界的)に現場のニーズが高い疾患になった(なってしまった)せいである。しかし,ここでも記載はあくまで臨床目線,現場目線である。抗ウイルス薬の記載順序が臨床的重要性に準じているところに本書の良心が感じられる。まあ,不幸にしてサル痘が輸入され,日本でもコモンディジーズ化してしまえば,本書でも多くのページが割かれるようになるだろうが(そんなことが起きないことを切に希望しているが)。
抗菌薬適正使用プログラム(ASP)において,薬剤師の医師へのフィードバック,抗菌薬適正使用への提言は極めて重要な業務になっている。昨今は国がその後押しをしていることもあり,病院上層部も抗菌薬適正使用には熱心だ(経営上,有益だからだ)。しかし,現場の医師は必ずしもこのような趨勢を知悉しているとは限らない。そして,残念ながら薬剤師を下に見る古いタイプの医師は少なくない。そんなときに一番の味方になっているのが『プラマニュ』である。版を重ねるごとに本書のコンテンツのオーセンティシティは高まる一方で,「プラマニュに書いてある」は現場で強い説得力を持つ。ぼく自身,「イワタ先生はそうおっしゃいますけど,プラマニュにはこう書いてありますよ」と薬剤師さんにやり込められたことは一度や二度ではない。
2023年,良くも悪くも人々は新型コロナを口にしなくなってきている。これまで,(やむをえず)後回しにされがちだった抗菌薬適正使用にも関係諸氏が熱意を持ってコミットできるようになってきた。今こそ,『プラマニュ』を精読するときである。Ver.8はそういう意味でも,新たにリフレッシュした気分になって読み直したい「成書」である。
『プラマニュ』は日本で過去になかった先鋭的なテキストだ。それは,比較的時代遅れであった日本の感染症診療に鋭く切り込む刃となるパイオニア的存在の一つである。
先鋭的,新規的なパイオニアも定着すれば「コモンズ」に転じる。「ドラえもん」が初めて世に出たとき,それは実に画期的な漫画であった。往時の子供はその新規性に歓喜し,誰もが四次元ポケットに憧れ,新作映画が出るたびにドラえもんやのび太や,このときばかりは善人になるジャイアンの活躍に期待した。それが定着すると「コモンズ」になり,いつしかドラえもんは原作者の枠を超えて多くの人に再生産されるようになる。原作者を超えて,新作映画は作られ続ける。
『プラマニュ』は岡 秀昭先生が切り開いた新たなる地平だが,本書は医療現場で広く使われる「コモンズ」となり,今回,多くの共同執筆者によってさらに肉付けがなされるようになった。定着とはそういうものなのだと思う。新時代の人たちがどんどん参入し,『プラマニュ』はさらにバージョンアップを重ね,もっと現場に愛される本に進化していくことだろう。
2023年早春
岩田 健太郎
神戸大学大学院医学研究科・医学部
微生物感染症学講座感染治療学分野 教授
2024-02-29
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
40ページの最下行
(誤)1 gを7.5〜10 mg/kg 12時間ごと
(正)7.5〜10 mg/kgを12時間ごと
156ページの上から15行目
(誤)18,000〜24,000単位/日を7〜10日間
(正)1,800万〜2,400万単位/日を7〜10日間
2023-06-16
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
185ページの上から16行目
(誤)実際に,セファロスポリン系(CFPMは除く)などによって耐性の誘導が20%程度起こるという報告もある(Clin Infect Dis 2019; 69:1394─1402. PMID:30561569)。
(正)エンテロバクターほどの頻度ではないが,広域セファロスポリン系投与中の耐性化の報告もあり,注意が必要である(Antimicrob Agents Chemother 2008;52:995─1000. PMID:18086837)。このような背景もあり,エンテロバクター同様,IDSAのガイドラインでは膀胱炎以外ではCTRXの使用は推奨されていない。
186ページの上から18行目
(誤)実際に,セファロスポリン系(CFPMは除く)などによって耐性の誘導が20%程度起こるという報告もある(Clin Infect Dis 2019; 69:1394─1402. PMID:30561569)。
(正)実際に,セファロスポリン系(CFPMは除く)などによって耐性の誘導が20%程度起こるという報告もある(Clin Infect Dis 2019;69:1446─55. PMID:30838380)。
2023-05-26
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
131ページの上から14〜15行目
「□ PISP(髄膜炎):MIC 0.12~1 μg/mL
CTRX ± VCM」
→削除
131ページの上から20行目
(誤)PRSP(髄膜炎):MIC≧2 μg/mL(まれ)
(正)PRSP(髄膜炎):MIC≧0.12 μg/mL
2023-05-15
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
256ページの上から7行目
(誤)非ヌクレオチド型逆転写酵素阻害薬
(正)非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬
256ページの上から8行目
(誤)ヌクレオチド型逆転写酵素阻害薬
(正)ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬
259ページの「図2-4 HIV検査の流れ」の下
「☆トピック:第4世代の抗原抗体検査を使用している場合にWB法による確認検査は必要ないかもしれない。」
→削除